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『2015年展望 「2015年の景気は良くなるか?」はもうやめましょう』  ~強い意志を持って「良くする!」でいきましょう~

『2015年展望 「2015年の景気は良くなるか?」はもうやめましょう』  ~強い意志を持って「良くする!」でいきましょう~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

新年あけましておめでとうございます。

本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

さて、毎年年頭には「今年の展望」を書いて参りましたが...、さて今年は?

 

■2015年の日本経済は?

 

2015年が始まりました。今年の経済はどうなるでしょうか?

...と毎年年頭には経済展望を書いてきましたが、今年はわかりやすいですね。

そこかしこで言われているように、今年の景気は「良くなる」と思います。

 

引き続き、安倍政権が国政を担うこととなり、政府方針に大きな変更はありません。

金融緩和は続きますので金利はまだ当分上がりません。3.5兆円規模の経済対策も打たれます。法人向けに減税方針も打ち出されています。収益力の高い企業ほど有利な税制になっていきそうです。

 

企業収益が良くなっていくので株価も安定するでしょう。上半期中にも2万円台にいくのではないでしょうか。米国経済は順調だし、原油価格は低位で安定しそうです。いずれも日本経済にはフォローの風になります。円安はインフレ期待が落ち着くので今の120円あたりで一服するのではないでしょうか。

 

...と何の面白みもありませんが、大方の見立て通りこんな感じになるのではないかと私でも思います。

しかしこれってとても大事なことだと思うんです。

なにが大事かというと、「おおよそ経済がこうなっていくということが誰にでもある程度予測できること」です。経済はみんなこう動くと思う方へ動きますからね。

「予測不能な混迷状態」というのが私たちにとっては一番困るわけです。今は予測しやすい分、経営者の方々も経営計画も立てやすいのではないかと思います。

 

■景気回復の実感は?

 

しかし、世間では逆の報道が多いんですよね。

例えばこういう報道。

<働く環境「良くなると思わない」75% 賃上げも悲観>

(2015年1月5日 日本経済新聞)

『アベノミクスを掲げて2012年末に発足した安倍晋三政権が3年目に入った。輸出産業を中心に企業収益は拡大し、株価は好調な一方、消費増税後の個人消費はもたつきが続く。安倍政権は経済界に賃上げや働き方の改革を要請しているが、働いている人に15年の自分の雇用環境をどう予想しているか聞いてみた。「14年より良くなると思うか」との質問に75%の人が「良くなると思わない」と答えた。理由は「日本の景気が良くなりそうにない」が最も多く、次いで「給料・ボーナスの増加が期待できない」「業績が悪くなっている」の順だった。 「勤務先が賃上げすると思うか」との問いにも、「しないと思う」と悲観的な回答が82%を占めた。』

確かにそうなんです。

企業収益や株価、さまざまな景気指標、著名経営者の声などを見ていますと、日本経済は回復が続いているように見えます。一方で「そうは言っても給料は増えていない」という人も、特に中小企業や派遣社員の方々を中心にして依然として多くいます。だから「景気回復の実感がない」といわれます。

 

■景気回復=雇用・賃金増加?

 

この「実感なき景気回復」というフレーズ、最近も聞きましたよね。

そう、「いざなみ景気」です。90年のバブル景気崩壊後、90年代中頃からデフレが続き、「失われた20年」などと言われていますが、実は2002年からリーマンショックが起きる2008年までの6年間、日本経済は成長していました。

この期間は「いざなみ景気」と名付けられましたが、期間だけを見ると高度経済成長期の「いざなぎ景気」よりも長い戦後最長の景気拡大期でした。

しかし、この6年間、給与所得者の給与は下がり続けました。雇用も約100万人も減りました。

なぜこの「いざなみ景気」が「実感なき景気回復」と呼ばれていたかというと、つまるところ世間的には「景気」とは、「雇用」と「賃金」と捉えられているからです。

 

「景気」は企業収益とかGDPの成長とか様々な指標から捉えられますが、「景気が悪い」と言い続けている人たちは景気の一側面である「雇用」と「賃金」だけを捉えているのだろうと思います。

 

確かに私たち一般庶民が景気回復を実感するのは「職がなかった人が職に就けること」であり、「賃金が上がること」でしょう。

先の記事は「どうせ今回も俺たちの給料までは良くならないよ」と思っている人たちがまだまだ多いということですね。

 

実際は、有効求人倍率はほぼすべての業種で1倍を超えており、失業率は完全雇用に近い3.5%程度で安定しています。賃金も消費税が上がり物価がそれ以上に上がったため「実質賃金」は下がりましたが、「名目賃金」は2014年7月~9月に2.6%増加していました。

 

■「景気は良くなるか?」ではなくて...

 

昔は、日本のすべての地域のすべての業種が横並びで成長できていましたが、もはやそんな時代ではありません。日本経済は成熟し、内需は劇的には増えません。経済はグローバル化し世界が競争相手になりました。

「稼ぐことのできる企業」と「稼ぐことのできない企業」、「稼ぐことのできる人」と「稼ぐことのできない人」が存在するようになりました。もはや経済や富に横並びも平等もあり得ないのです。

 

「今年の景気は良くなるのでしょうか?」と展望することは今年でもう止めようと思います。

誰でもわかる経済予測をしても面白くないですし、「景気=賃金上昇」だというのなら、賃金なんて予測するものではないからです。

賃金は政府や他の誰かに上げてもらうものではありません。賃金アップは、本来政治の力の及ぶところではありません。昨年、安倍総理が経済界に賃金アップを要請したら「政治が民間企業の資金使途にまで口を突っ込むべきではない」という批判がありましたよね。

 

「給料は上がるのか」ではなく、「上げよう!」という強い意志が大事なんだと思います。

経営者は「稼ぐ企業にする」、社員は「稼ぐ社員になる」という意思と具体的な行動が必要なんだと思います。

 

企業は政府の景気対策ばかりをあてにするのではなく、今の世の中で売れるものを開発して売らなければいけません。社員は仕事の生産性を上げて会社に利益をもたらさないといけません。

 

本当は景気が良いとしたら、いつまでも「景気が悪い」とか「実感がない」とか言い続けることには弊害も少なくないと思うのです。増税よりも減税政策が先行することで税収を増やすことが出来ない上に、いつまでも財政出動を続けることで財政赤字を膨れ上がらせてしまいます。

 

「景気」は消費者や経営者の心理の産物と言われます。

2015年は「良くなるか?」ではなく、「良くするぞ!」という強い意志を持って稼ぎに行きたいものですね。

 

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

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