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『老後は自分で備える時代です!「確定拠出年金」が誰でも使えるように』 ~確定拠出年金のメリット・デメリットとは?~
世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる
『老後は自分で備える時代です!「確定拠出年金」が誰でも使えるように』 ~確定拠出年金のメリット・デメリットとは?~
ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。
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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
今回は、前回に続き年金のお話しです。
少なくなっていく年金、老後の生活費を補うためにはどうすればよいのでしょうか?
■老後の備えの切り札!「確定拠出年金」がより使いやすく
厚生労働省の試算では今後30年で公的年金の受給額は約2割も減る見通しだそうです。
私たちとしては、公的年金が減るならばその減少分をどう補うか、老後の生活資金をどう準備するかを検討しなければなりません。
私的年金として私がお勧めするのは「確定拠出年金」(別名:401k)です。
確定拠出年金とは、毎月一定額を積み立てして、60歳以降にその積立金を受け取る「積立型の年金制度」です。
特徴は大きく2つ。まず税制上のメリットがとても大きいこと。もうひとつは、その積立金の運用法を自分の指示で出来ることです。運用次第で受給額が変わります。
これまで、この確定拠出年金を利用できるのはこの制度を導入している会社に勤めている会社員が中心でした。会社に企業年金制度がない会社員や自営業などで国民年金の保険料を払っている人は自分で掛け金を拠出する個人型の確定拠出年金に加入できますが、これまで利用はごくわずかでした。また公務員や主婦は利用できませんでした。
しかし、これからは多くの方にとって確定拠出年金が利用しやすくなりそうです。
<確定拠出年金、誰でも加入可能に 主婦は掛け金年27.6万円>
(2014年12月31日付 日本経済新聞)
『自民、公明両党は2015年度税制改正大綱で、運用成績に応じて将来の受取額が変わる確定拠出年金(日本版401k)に誰でも入れるようにすると決めた。専業主婦など2800万人が16年度にも加入できるようになる。公的年金の支給が減るなか401kの活用で老後の資金を確保できるようにする。』
「個人型」の加入制限を実質無くすとともに、主婦や公務員を含めて誰でも入れるようになります。
これまで「401kなんて一部の大企業勤めの人たちだけの特典でしょ」と思われていた皆さんもこれからは利用できることになります。私的年金作りの選択肢が大きく広がることになりますね。
■確定拠出年金は税制メリットが大きい
確定拠出年金が魅力的なのはなんと言っても「税制面でメリットが大きいこと」です。
具体的には、(1)掛金を拠出した時、(2)資産運用で利益が生じた時、(3)年金で受け取る時、このそれぞれのタイミングで税制上の優遇を受けることができます。
(1)掛金を拠出した時
掛け金については、会社が負担分も個人で拠出した分も全額非課税です。
自分の所得の中で積み立て預金をしてもその分を所得から減らすことはできませんね(全額課税対象)。でも、確定拠出年金の掛け金は所得から控除することができます(全額非課税)。
年間の拠出限度額については、
『新たに加入できる主婦は年27.6万円、公務員は同14.4万円の掛け金(保険料)を出せるようにする。会社が掛け金を納める企業型401kのみの加入者は同24万円、確定給付年金の加入者は同14.4万円まで、それぞれ納められるようにする。』(日本経済新聞 同記事より)
特に年収が高くて所得税を多く支払っている人にとっては魅力的ですよね。
(2)資産運用で利益が生じた時
確定拠出年年の掛け金は自分の指示で運用が行われますが、そこで得られた預金の利息、債券の利払い、投資信託の売却益や収益分配金などのすべてが非課税です。通常だと預金利息や譲渡益などに対しては20%が課税されます。通常だと税金がかかる分まで運用に回すことができるわけですから、とても有利な運用になりますね。
また、投資信託の運用上のコストである信託報酬も低く抑えられていますし、購入時の手数料も確定拠出年金ではかかりません。以上より、自分で金融商品を使って運用するより運用効率は高いといえます。
(3)年金で受け取る時
積み立て運用金は年金としてか一時金として受け取ることができますが、いずれの場合も所得控除が活用できます。
■注意すべきはライフプランと運用方法
注意すべき点ももちろんあります。
デメリットとして一番大きいのは、「60歳まで途中解約できない」という点です。一度拠出したお金は預金のように途中で引き出すことが出来ません。60歳になるまで原則解約することはできないことには注意しておかねばなりません。
確定拠出年金は老後期のための貯蓄ですが、お金が必要タイミングは老後期だけではありません。子育て期などへの備えもよく考えておく必要があります。貯蓄のすべてが老後の備えに充ててしまうことのないようにライフプランをよく考えてバランスの良い貯蓄プランが必要です。
あとデメリットではありませんが、「運用なんてどうやっていいのかわからない」という人には少しとっつきにくいかもしれません。
銀行預金のような元本保証の商品は安心ではありますが、今はとても金利が低いので確定拠出年金の事務管理コストなどを考えるとメリットがほとんどなくなってしまいます。
運用益が非課税になるメリットを考えると、ある程度リスクをとって運用していってもいいのかな、と思います。確定拠出年金では、掛け金を運用する金融商品として、複数の投資信託の商品(ファンド)がラインナップされて選びやすくなっています。
安定志向でいくか、積極的にいくか、などご本人の希望に応じて色々選べます。
これまで投資に縁がなかった方もこれを機会に資産運用を考えられてみてもいいのではないでしょうか?
■老後は自分で備える時代に
繰り返しになりますが、少子高齢化が進み、若い人ほど将来受け取れる公的年金の水準が低くなることが確定しています。国としても、公的年金制度で国民の老後の生活を保証できなくなっている以上は、税制優遇などを与えて、自分たちで老後の準備をしてもらうことを推進していこうとしているわけです。
年金だけでは老後を穏やかに暮らすことができない可能性が高いわけですので、現役世代のうちから「私的年金」の資産を作って備えておく必要がありますね。
今回は以上です。
もっと日本がよくなりますように。
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