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『年金削減時代がいよいよ本格到来!?「マクロ経済スライド」とは何か?』  ~年金氷河期を迎える私たちには心構えと備えが必要です~

『年金削減時代がいよいよ本格到来!?「マクロ経済スライド」とは何か?』  ~年金氷河期を迎える私たちには心構えと備えが必要です~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回は、「年金制度」についてです。

細かいところはわかりにくいですが、大きなところは押さえておきましょう。

 

■「マクロ経済スライド」ってわかります?

 

自分の老後の生活を不安に思う人は少なくないと思います。

「年金ってどれくらいもらえるんだろう?」と心配しているかもしれません。

年金制度は日本という国が破たんしない限り存続していると思いますが、もらえる年金額は確実に今よりも少なくなります。

すでにそういう年金減額の動きは着々と進んでいます。

老後になって慌てないためにそういうことは知っておいた方がいいと思うのですが...、なにせ年金って仕組みがわかりにくいんですよね。

 

先日もこういう報道がありましたが、わかりますか?

 

<公的年金給付0.9%増 15年度、抑制策を実施>

(2015年1月30日付 日本経済新聞)

『厚生労働省は30日、2015年度の公的年金の受取額を発表した。厚生年金を受け取る夫婦二人のモデル世帯では、22万1,507円となり、14年度より2,441円増える。年金の伸びを賃金や物価の伸びより抑える「マクロ経済スライド」を初めて実施するため、年金額の伸びを14年度比0.9%増にとどめる。年金制度の持続性を高める狙いがある。』

 

これだけ見ると「あぁ、年金の受取額が増えるんだ。」と思うかも知れません。でもこの記事の本質は「いよいよこれから本当に年金額が減らされる時代になりましたよ!」ということです。

 

「マクロ経済スライド」なんていう難しい言葉が使われるのでわかりにくいんですよね。

「マクロ経済スライド」とは、年金額の上昇を物価の上昇率以下に抑える仕組みのことです。物価が2%上昇したら年金額も2%増やしてもらわないと実質的な手取り額は減ることになりますが、「マクロ経済スライド」の下では、例えば物価が2%上昇しても年金額は1%しか増やしません、ということになります。ちなみに2015年度は恐らく物価上昇率は2%近くだと思いますが、年金額は0.9%しか増やしませんよ、というのが上の記事で言っていることです。実質的な減額ですね。

 

■これから年金は「調整」という名のカットが進む

 

この「マクロ経済スライド」は2004年の年金制度改革で導入が決まったのですが、これまでは発動されていませんでした。なぜならこの間は「ずっと物価が上がらない」、いわゆる「デフレ状態」だったからです。「マクロ経済スライド」の考え方に従うなら、本来ならデフレで物価が下がった分以上に年金額も下げないといけなかったのですが、年金受給者の反発などを懸念して実施されませんでした。(消えた年金問題なんかもあって社会保険庁への風当たりも強かった時期でしたしね)

物価がずっと下がっていたのに年金額は下がらなかったわけなので、「この10年くらいの間、年金受給者は年金を貰いすぎていた」状態だったと言われているのです。

これがようやくデフレを脱して、物価が上昇してきたことで、この2015年度、初めてマクロ経済スライドが実施されることになりました。過去10年間の「貰いすぎていた」分も今後調整されていくようです。

この先、少子高齢化が進んで年金額を負担する現役世代がもっと減れば、この調整率もより大きくなるかもしれません。このようにして年金支給額を「実質的に」増やしていかないことで年金制度を持続させていこうという仕組みなのです。

 

■高齢世代も痛いが現役世代だって痛い

 

この「マクロ経済スライド」、高齢者向けに記事を書いている新聞などでは「別名:自動年金カット装置」などと呼ばれて、高齢者から年金を奪うひどい制度だと言われています。

政治の世界でも与党を批判する勢力などは「年金改悪だ!」、「弱者切り捨てだ!」、「格差助長だ!」と主張しています。

 

確かに今の受給者の皆さんにとっては消費税の増税もマクロ経済スライドも痛みを伴う話ですよね。でも社会全体の状況と仕組みを考えたらこれは仕方がないんじゃないかなとも思います。

 

今の年金制度は、ご存じの通り、現役世代が支払った保険料をその時の高齢世代の年金に回す方式(世代間負担の賦課方式)です。この方式の下では、少子高齢化で保険料を払う現役世代が減って、年金をもらう高齢者が増え続ければ年金財政は厳しくなるのは当たり前ですよね。

 

ちなみに「マクロ経済スライド」が導入される以前は「物価スライド」でした。物価が2%上がれば受給額も2%上がる方式です。ざっくり言うと、「だいたいこれくらい物価が上がるから年金額もこれくらいにしよう」と最初に給付水準を決め、それに見合うよう保険料を上げる形です。これなら実質的な受け取り額が下がることはありません。受給世代は喜びます。でも負担する方は大変です。

 

2004年の年金制度改革の時点では厚生年金保険料の負担率は約13.6%でした。これが今後の人口統計や物価推移を計算すると将来的に現役世代が負担する厚生年金保険料の負担率は25%くらいになってしまうという見通しになったので、支給額が減らない「物価スライド」方式から支給額を抑える「マクロ経済スライド」方式になりました。

 

2004年の年金制度改革では「マクロ経済スライド」とともに、現役世代が納める厚生年金保険料の引き上げも決まりました。そのため私たちの厚生年金保険料は2004年以降、毎年上がっています。これが2017年度まで続く予定です。そして、2017年度の18.3%を厚生年金保険料の上限として固定することになっています(今のところ、ですが)。この保険料収入の範囲内で高齢者の年金額を賄います。今後はこの範囲内で年金額が調整されていくことになるでしょう。

 

年金を払っている人も受け取っている人にも負担を求めながら何とか年金制度をみんなで持続させていこうという考えです。報道するなら、高齢世代の痛みだけでなく、現役世代や将来の若者たちの痛みにも配慮した記事を書いてもらいたいものです。(なんか厚生労働省のホームページみたいになってきましたが)

 

■これからは心構えと備えが必要

 

これからも年金削減の動きはいろいろ出てくると思います。今「65歳」になっている年金支給開始年齢ももっと遅くなるかもしれません。年金を払っていない専業主婦(第三号被保険者)にも年金負担が課せられるようになるかもしれません。

私も今は負担する側ですが、もうあと20年もしないうちに受給する側になります。その時には間違いなく受け取り年金額は減っていると思います。でも、そもそも現役世代との人口のバランスが悪いのだし、昔みたいに経済成長率が高い時代でもないのだからもう仕方がないんです。そういう心構えと備えが必要です。税金も社会保険料もぜんぶ今の子供たちの負担にするわけにはいきませんから。

 

私たちはすぐ受給世代になります。

その時になって政府に文句を言ってもどうしようもないんです。老後の生活はどんな暮らしをしたいのか、その生活のためにはどれくらいのお金が必要なのか、年金は大体いくらぐらいもらえて、足りない分はどうやってまかなうか、そのためにはどれくらいの備えが必要で、どう貯蓄していったらいいのか、こういうことを考えて準備しておきたいものです。

 

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

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