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『景気がよくなれば労働条件は良くなる、という当たり前の話』  ~賃金アップに正社員化、労働力の奪い合いが始まった!?~

『景気がよくなれば労働条件は良くなる、という当たり前の話』  ~賃金アップに正社員化、労働力の奪い合いが始まった!?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回は「賃金アップ」についてです。

いよいよ給与が上がってくるかもしれませんね♪

 

■「ベアの春」。賃上げムードが高まる

 

自動車メーカーや電機メーカーをはじめとして大手企業で今春、過去最高水準の給与のベースアップが行われるようです。

ようやく景気回復も本番になってきたなと感じますね。

<トヨタ、ベア過去最高水準4000円 15年春季労使交渉 >

(2015年3月15日付 日本経済新聞)

<日産、ベア5000円回答へ 製造業大手で最高水準>

(2015年3月17日付 日本経済新聞)

「ベア」とは「基本給のベースアップ」のことですね。企業がその期に儲かった分を社員に一時的に還元するボーナスとは違って毎月の給与のベースが上がるわけですから、消費者心理としてはベアの方が嬉しいし、家計への安心感につながりますよね。

トヨタも日産もベアは過去最高水準。トヨタでは非正規社員の日給も300円引き上げるようです。

自動車や大手電機メーカーなどの製造業だけでなく、地方銀行や損保などでもベースアップが発表されています。

 

株式市場も連日発表される日本企業のベアを好感しているのでしょう。日経平均は1万9000円を超えました。

<株式市場が「ベアの春」に沸く>

(2015年3月17日付 日本経済新聞)

『16日の東京株式市場で、日経平均株価は4日ぶりに小幅反落し、前週末比8円19銭(0.04%)安い1万9246円06銭で取引を終えた。(中略)個別では「賃上げ」関連銘柄に投資家の買いが集まった。』

 

日経平均株価の1万9000円台超えは約15年ぶりの高値水準です。

賃上げ→消費増→企業業績増→GDP増、という景気本格回復への好循環がイメージされたのだと思います。

 

■それでもアベノミクスは失敗している?

 

それでも、「アベノミクスは失敗している!」というような斜に構えたような否定的意見は常にあります。

「潤っているのは大企業だけだ。」

「所詮、政府が誘導した『官制春闘』だ。企業が自発的に賃上げしたわけではない。」

「給与が増えても将来不安が強く、消費にはつながらない。」

...といったような感じですね。

 

昨日の国会でもこんなやり取りがありました。

『安倍首相は「賃上げは過去15年で最高水準となり、その動きは強く広がっている。動き始めた経済の好循環を拡大するためには、企業収益を拡大させ賃金上昇や雇用拡大につなげていくことが重要だ」と語った。一方、野党側は消費増税に伴う物価上昇で実質賃金が下がっているとして、経済政策「アベノミクス」に疑問を呈した。民主党の小川敏夫氏は「国民生活が豊かになったかどうかだ。国内の雇用者の所得の合計値である総雇用者所得が、14年12月が物価上昇の影響を除いた実質で0.4%減だったことから「実質では下がっている」と反論し「大企業の景況感はプラスだが、中小企業はマイナスだ。これで良くなっているといえるのか」と指摘した。首相は「全く間違っている。消費税率引き上げを除いてマイナスかプラスかを見るのは極めて重要だ」と強調した。小川氏は「5月になったら(数値を)聞きましょう」と矛を収めた。』(2015年3月17日付 日本経済新聞より)

 

自民と民主のどちらかに与するわけではありませんが、「5月の数値でどっちが正しいか判断しましょう」とするならば、おそらく「安倍首相が正しかった」ということになると思います。5月に発表される1月~3月のGDP成長率、実質賃金、中小企業の景況感などの数字は、間違いなく今よりさらに良くなっていると私は思います。

 

■すべての業界で労働力の奪い合いが始まる

 

今は多くの業界で、採用すらままならない人手不足の状態なのです。

有効求人倍率はほぼすべての業種で1倍を超えています。「4%を持続的に下回ったらほぼ完全雇用の状態、やがて賃金が上昇する」と言われている失業率はもうずっと3.5%程度です。2011年1月に320万人いた失業者は2014年9月で240万人程度と3年半で80万人くらい減りました。安倍政権は「アベノミクスで100万人の雇用が増えた。」と言っています。それを野党は「雇用が増えたと言っても非正規雇用ではないか」と批判してきました。

 

私は、「非正規でも働かないよりは働いてお給料をもらえた方がいいのでは?それに景気が回復すればいずれ労働条件は良くなっていくだろうに。」と思っていました。

 

事実そうなってきています。

<パートにも定期昇給/スーパーのライフ、人材確保狙い導入>

(2015年3月12日付 朝日新聞)

『食品スーパー大手のライフコーポレーションは、パート社員約2万人を対象に、毎年賃金が上がっていく定期昇給(定昇)を5月から始める。正社員だけでなくパート社員にも定昇を導入するのは珍しい。小売業界は人手不足が続く。非正社員の待遇を改善して優秀な働き手を引き留めようとする動きが広がり始めている。』

 

ライフはパートさんなどの非正規社員にも定期昇給を取り入れるそうです。他に三越伊勢丹ホールディングスも4月から時給制の契約社員について時給の引き上げ幅を広げたり、より収入の多い月給制に切り替える社員数も増やすようです。

 

今、起きているのは労働力の奪い合いです。

その動きは製造業だけでなく、スーパーなどの小売業やサービス業にも波及しています。定期昇給や時給の引き上げでも人材を確保できなくなってくると、次は正社員化です。ユニクロは昨年からパートやアルバイトの正社員化に着手にしていましたよね。人手不足が続いて人材の確保が難しくなってくれば待遇を改善する動きが出てくるのは当然ですね。

 

■景気が良くなれば労働条件はよくなる、という当たり前の話

 

私はこれまで「お金も雇用も、景気は一気には良くなりません。時間がかかります。」と言ってきました。

今、ようやくそのステージに来つつあるような感じがしています。

 

20年近く続いた不景気で慎重になっている企業がいきなり正規社員を大量に採用はしませんよね。

賃金アップは最後なのです。給与は一度上げたらなかなか下げられませんからね

 

景気が良くなってきて忙しくなった時に、今いる社員の給与を上げても生産やサービスが大きく増えることはありません。普通の経営者は、まずは残業でもしてもらって何とかしのごうとします。それでも間に合わなくなると新規に雇用を増やしますが、はじめはパートや派遣、非正規雇用です。それが完全雇用状態になってくると人材の奪い合いと囲い込みが始まります。その時点でようやく正規雇用にしたり、賃上げをしたりします。今この段階にようやく来たのです。

 

一人当たりの賃金が減っている一因は、団塊世代の正規雇用者が減って、若い人の非正規雇用者が増えたからです。総務省統計によると、事業者が雇用者に支払っている給与の支払い総額はすでに2012年から上がり始めています。(総務省:名目雇用者報酬)

雇用形態についても、2014年7月~9月期には5~6%くらいでずっと伸びていた非正規雇用者数の伸び率が2%程度に鈍化しました。逆に-2%程度のマイナスであった正規雇用者数の伸び率はプラスに転じています。つまり、非正規雇用者が減り正規雇用者が増えてきているのです。

 

日本はすごい勢いで良くなってきている感じがしませんか?

このまま完全雇用が続けば給料はこれからも上がっていくと思います。よく言われていた「格差」も小さくなっていくことでしょう。

 

業績が良くないのに労働条件を良くすることはできない。

景気が良くなって会社が忙しくなってくれば雇用は増える。

雇用が増えて、人手不足になれば企業は人材確保のために労働条件をよくする。

 

こういう当たり前の話が今私たちの目の前で展開されているのです。

 

あとは消費ですね。家計は賃金見通しが大事で、「来年も再来年もまた上がる」と予想できないとなかなか消費には結びつかないものです。継続的な賃上げで経済の好循環が実現するかどうかですね。大事なのは「企業の稼ぐ力」が持続的に高まることです。その鍵を握っているのは...皆さん一人一人の頑張りですね。引き続き、明るく頑張りましょう!

 

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

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