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『住宅購入を検討するタイミングこそライフプランを考える時です!』  ~楽なライフプランと厳しいライフプランの違いとは?~

『住宅購入を検討するタイミングこそライフプランを考える時です!』  ~楽なライフプランと厳しいライフプランの違いとは?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

私、ファイナンシャルプランナーとして住宅購入時にはマネーのライフプランをお客様と一緒に作ります。これ、とても大切なことなんです。

 

■住宅購入の検討タイミングでライフプランを

低成長時代になって、家計収入がそれほど大きく増えることが難しくなってきた現在、どのタイミングでどれくらいの支出が必要かということをよく考えて貯蓄の計画を立てる必要性が高まっています。「何の対策もしなかったけど無事に老後を暮せています。」という人は「単にラッキーだっただけ」という時代になるでしょう。

中でも特に大きな支出である「住居資金」「教育資金」「老後資金」は「人生の三大支出」と言われています。老後の公的年金が将来的に減っていくことが明らかになっている今、「住居資金と教育資金をまかないながら、どれくらいの貯蓄を持って老後を迎えるか」ということは住宅購入を検討する30~40代のタイミングでしっかりと考えておくべきことです。

 

■人生の5つの時期区分とは?

私がライフプラン相談を受けるお客様はこれから住宅を買おうという方々ですので、大体20代後半~40代くらいで小さなお子様がいらっしゃる方がほとんどです。そういう方のこれからの人生を「5つの時期」に区分してそれぞれの「時期」での貯蓄目標や気を付けなければいけないことなどを確認しています。

5つの時期区分は以下のようになります。

 

1)第1財産形成期

現在から子供の教育費がかかるまで(高校や大学に進学するまで)の時期です。ここは貯蓄を増やすべき時です。子供が小さいうちの教育費はまだそれほどでもありません。この時期に次にやってくる「教育負担期」に向けて貯蓄をしておかないといけません。このタイミングで住宅購入を検討することが多いのですが、大事なことは家を買っても貯蓄を続けられるかどうかです。共働きをしたりしながらでも頑張って貯蓄を積み立てておくことが大事です。

 

2)教育負担期

子供が大学進学をして卒業するまでの時期です。ここは支出が増えてしまう時です。私立や進学塾に通わせるのなら高校入学くらいのタイミングから始まります。大学は文系か理系もしくは医歯薬系か、また自宅からか下宿して仕送りが必要のか、などによって、年間数百万円単位で変わってきます。子供が2人以上いる場合、教育負担期は一番下の子が大学を卒業するまで続きます。この時期は家計が赤字になることが予想されます。貯蓄や住宅ローンの繰り上げ返済、車の購入や家族みんなでの旅行などは難しくなるかもしれません。

 

3)第2財産形成期

教育負担期が終わってから定年するまで、もしくは出向や転職などで勤務先が変わって収入が大きく下がるまでの時期です。ここは再び貯蓄を増やすべき時です。教育負担期に学費や仕送りに消えていた分を貯蓄に回すことが出来るようになります。子供の結婚もこの時期になる可能性があり、備えておかないといけません。

また退職金がいくらくらいになりそうかはかなり大事な要素です。50代後半~60代くらいになるこの時期には身体を壊す方も多くなります。健康に気を配るとともに、生命保険や医療保険の見直しなどもしておいた方がいいかもしれません。

 

4)老後前期

定年、もしくは職場が変わって収入が減る時期です。公的年金がもらえる65歳まで、そして住宅ローンが完済するまでの間、貯蓄を取り崩すことになるかもしれません。貯蓄が十分にないと家計にとっては厳しい時期になります。

 

5)老後後期

住宅ローンも終わり、公的年金を受給しながら暮らす時期です。基本的に、これまでの貯蓄を少しずつ取り崩しながら年金の範囲内で暮らすことになります。貯蓄の状況をみながら余裕があれば旅行をしたり、家のリフォームやメンテナンスをしたりします。大きな病気や介護などで大きな支出が必要にならないようにしたいですね。

 

ライフプランを考えるときには、5)「老後後期」の時点で、介護やリフォームに備えてなおゆとりがあるくらいの貯蓄があることを目標にします。ポイントは、収入より支出が増える 2)「教育負担期」と4)「老後前期」をどう乗り越えるか、というところになります。

そのためにも貯蓄が出来る 1)「第1財産形成期」と 3)「第2財産形成期」の暮らし方が大事になります。

 

■事例:楽なライフプランと厳しいライフプランの違いとは?

このライフプランですが、20代後半~30代前半の人は比較的安定した計画を組むことができます。

 

<30歳でライフプランの場合>

例えば、25歳で結婚して、28歳の時に第1子、30歳の時に第2子が生まれたというご主人の場合。

30歳で住宅を購入(30年ローン)したとすると、

 

・第1財産形成期     :本人30~45歳(16年間)

・教育負担期          :本人46~53歳(8年間) ※第1子18~25歳 第2子16~23歳

・第2財産形成期     :本人54~60歳(7年間) ※60歳で住宅ローン完済

・老後前期             :本人61~65歳(5年間)

 

第1財産形成期が、30歳~45歳までの16年間。その後、8年間の教育負担期を経て、第2財産形成期が54歳~60歳までの7年間あります。貯蓄できる期間が長い上に60歳で住宅ローンも終わります。退職金も老後費に使うことが出来ますから老後期も何とかなりそうですね。

 

ところが、これが30代後半くらいの方になりますと色々と考えないといけないちょっと厳しい計画になることが多くなります。

 

<40歳でライフプランの場合>

例えば、35歳で結婚して、38歳の時に第1子、40歳の時に第2子が生まれたというご主人の場合。

40歳で住宅を購入(30年ローン)したとすると、

 

・第1財産形成期     :本人40~55歳(16年間)

・教育負担期          :本人56~63歳(8年間) ※第1子18~25歳 第2子16~23歳

・第2財産形成期     :(なし)

・老後前期             :本人64~65歳(2年間) ※70歳まで住宅ローンの返済が続く

 

第1財産形成期が、40歳~55歳までの16年間なのは同じですが、その後の8年間の教育負担期の真っ最中に60歳を迎えます。63歳でやっと教育負担期が終わった時にはすでに老後前期。年金がない状態で住宅ローン返済が続きます。老後のための退職金は住宅ローンの残債支払いに充てることになるかもしれません。この大変なタイミングで子供が結婚したりします。さらに、もしこの時に80代後半くらいになっている親の介護負担などが起きたら本当に大変なことになります。

 

このパターンの方がなぜ厳しくなるかというと、第2財産形成期がないからですね。

最近は晩婚化が進み、それとともに住宅購入タイミングが後ろにズレがちなので、出費がかさむライフイベントが50代後半以降に集中します。この事例の方も40歳時点ですでに貯蓄がある程度あればいいのですが、そうでない場合には第1財産形成期にかなりしっかりと貯蓄をしなければなりません。その後も出費を抑えた家計設計にしないといけませんね。

 

■貯蓄ができる範囲内で住宅ローンの計画を

ライフラプンは将来の家計設計の見通しを立てることが目的です。厳しくなりそうなら、なるべく早いタイミングで「それなりの覚悟をしてしっかり準備をしなければならないな。」ということがわかることが大事なのです。

「人生の三大支出」の中で、「教育費」、「老後費」は何年後に始まるかがほぼ決まっています。「住居費」は自分で決めないといけません。しかも一番初めに検討タイミングがやってきます。

賃貸にするか、持家を買うか、新築か中古か、いくらの予算にして住宅ローンはどう組むか、これで教育負担期、老後期は乗り切ることができるか、などなど住宅をどうするかを検討するタイミングでライフプランを考えること、収入と支出を見通して、貯蓄や保険を設計しておくことがとても大事なのです。ライフプランを考えることなしに「えいやっ!」で決めてしまわないようにしていただきたいと思っています。

 

教育負担期を乗り越えて、老後に必要な貯蓄額を算定して、積み立て計画を立てようとすると、相当な積立額と積立期間が必要なことがわかります。特に、第1財産形成期が重要です。家を買ってローンを組んだ後も貯蓄できるかどういかがポイントになります。逆に言えば、貯蓄できる範囲内で住宅ローンの返済計画を立てないといけません。

折角の夢のマイホームです。そのために人生がおかしくなった、などということのないようにじっくりとライフプランを検討してから決めましょう。

 

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

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