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「社会保障、世代間格差を嘆くより僕たちがすべきこととは?」~どうなる?僕たちの老後~

「社会保障、世代間格差を嘆くより僕たちがすべきこととは?」~どうなる?僕たちの老後~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

東日本大震災により被害を受けられた皆さまには心よりお見舞い申し上げます。

■消費税10%!なぜ消費税を上げないといけないのか?

政府は最近、「消費税を10%程度にすることを念頭に2015年まで段階的に引き上げていく」という案を明らかにしました。
これは「税と社会保障の一体改革」の議論の中で出てきている話しです。
年金、医療、介護分野で膨らむ一方の財政支出を賄うために広く負担を分かち合うということが目的のようです。

今回はこの件について整理してみましょう。
まず社会保障制度の確認です。

今の日本の社会保障の仕組みは現役世代が高齢世代に「養う仕組み(賦課方式)」が基本になっています。若者がお年寄りを財政的に支える仕組みですね。
このシステムが上手く機能するためには大前提があります。
それは「受け取る世代(高齢世代)の人口」と「支える世代(現役世代)の人口」のバランスが取れていることです。
今、問題なのはその人口バランスが崩れてきていることです。
例えば、今から40年前の人口構成では、高齢者1人に対して現役世代は10人いました。余裕ですね。
それが現在は、高齢者1人に対して、現役世代は約3人で支えています。
さらに10年後には支える現役世代側は2人を切るだろうと予測されています。

今も日本はすごい勢いで高齢化が進むとともに少子化傾向にも歯止めがかかっていません。
つまり、今後も年金を受け取る人数はどんどん増加し、年金保険料を支払う現役世代の人数はどんどん減少していくということです。

こうなるとどうなるでしょうか?
一人の現役世代が払える保険料には限度がありますから、当然現在受け取っている方々(65歳以上世代)よりもこれから受け取る方々(65歳未満世代)の方が受け取る年金額は徐々に少なくなります。
そこで次によく出てくる議論が「負担と受給の世代間格差の問題」です。

■日本の年金制度にある「世代間格差」とは?

世代間格差の問題とは何でしょうか?
厚生労働省が出している厚生年金のモデルケースで見てみます。
今、年金を受け取っている70歳代では、企業の負担分を含めて保険料で支払った分の約3倍の年金を受け取れます。
一方30歳代以下は支払った分とほぼ同額しか受け取れません。
「今の高齢世代に比べて負担と給付のバランスが悪くなっている。だから若い世代の不公平感が強まっている!」というのがその論旨です。
それで街頭インタビューなどで、「年金制度は信じられない!不公平だ!
だから年金保険料は払いたくない!」などと現役世代が嘆いたりするわけです。

こりゃ大変だ、というわけで
「高齢世代まで含めて幅広く負担を分かち合う改革が必要だ!」となり、
「広くあまねく課税する。それすなわち消費税。」となって、
冒頭の「消費税率を段階的に引き上げます!」とつながっていくわけですね。

さて以上の議論の流れ、皆さんはどう思われますか?


■「世代間格差」は当たり前!?

まず世代間格差です。
これ、嘆いてもしょうがないと思います。
世代間扶養の制度であれば、長い年月の中で世代ごとに格差が出るのはある意味当然の結果ですからね。
この数十年、日本がどれだけ経済成長をしたと思っているのでしょう。
今の高齢者が年金を負担していた現役のころ、日本は今よりずっと貧しかった。
戦後すぐの頃はまだ年金制度はありませんでしたから自分の親は自分で養うのが当然でした。

今、私たち現役世代は豊かです。生活物価も上がりました。
今の豊かな社会の中でご老人が暮らせるだけの年金を支給するならば、今の負担額は社会全体が貧しかった頃の負担額より多くなるに決まっています。
高齢世代が負担に対して受給倍率が大きくなったのは経済が豊かになったからとも言えます。
これは喜ばしいことです。
逆に、今私たち現役世代の受給倍率が小さいのは経済成長が停滞しているからです。

高齢化が問題なのではなく高齢化と少子化が同時に起きていることが問題なのです。
もう少し正確に言うと、高齢化と少子化の進展スピードに経済成長がついていけていない(むしろ経済は縮小している)ことが問題なのです。
社会全体が貧しくなっていくのに老人だけが多くの年金がもらえるわけがありませんよね。


■日本の社会保障は割と良い?

格差があるといっても今でも日本の年金・社会保障はそれほど悪くはないと思います。
少なくとも負担した金額よりも多くはもらえます。
勤め人で厚生年金の方なら半分は会社が負担していますし、給付においても半分は国が払ってくれます(←これ税金だから間接的に負担はしていますが)。
遺族年金など保険的な機能もついていますし、この低金利時代における「金融商品」と思えば悪くない方だと思います。

だから「年金不安」とか「世代間格差」とかで私たち現役世代の不安をあおるような論調にはどうもすっきりしないんですよね。
きっと消費税を上げたいんだろうな~とか思ったりして。
社会保障制度を考える時、もっと大事なことは老後になっても、お母さんが子育てしながらも、ちゃんと働けて収入を得られる経済環境を作ることでしょう。
そして何より経済そのものを成長させることだと思います。


■僕たち現役世代がすべきこと

私たち現役世代は現実を正しく認識しないといけません。
そもそも年金だけで老後の生活をなんとかしようと思う方がおかしい。
年金に過度な期待をしないことです。
まずは年金受給額と老後の生活費をざっくりでいいので予測して、いくらくらい足りなくなりそうかを掴みましょう。
それで不足分をなるべく早くから貯蓄したり、運用したり、保険をかけたりすればいいのです。
資産を作ることと、何より老後でも働けるスキルを身につけることです。
皆が頑張って働いて、そして経済成長を志向して豊かな社会をつくることですね。

今回は以上です。
次回、もっと日本が良くなっていますように。
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