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餓死猫の恨み2

餓死猫の恨み2

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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海外怪奇体験 餓死猫の恨み2

 これもサウジアラビアに駐在していた時のことだ。
我が家の納屋で、猫が餓死していた嫌な体験のあと、半年後のことだった。

 私が担当していた電力関係土木工事の日本人宿舎から電話が掛ってきた。
「樋口さん、工事の総務担当者が原因不明の病気です。ちょっと来ていただけませんでしょうか」
「分かりました。すぐに行きます」と、私は飛んでいった。

 宿舎に到着すると、総務担当者のWさんが、寝込んでいる。相当の熱がある。
「どうしたんですか。病院に行ったのですか」困った様子の工事の日本人技術者が説明してくれた。「原因が分からないと言われたのです。だんだんひどくなってきているので、日本に帰国させようかと思っています。独りで飛行機に乗れないかもしれないし、乗せてくれるかどうかも分かりません」
「いつから、こんな状態なんですか」
「もう3週間になります。工事の再開で、日本から到着した次の日からです」
「何か有ったのですか」
「有ったと言えば、有ったんです」と、声を落として話し始めた。「ちょっと、見て欲しいのですが」と、私を玄関に連れていった。「玄関の左側に、ほら三角形の木の枠が有りますね。何のために、こんな木枠があるのか知りません。深さは1.5メートルほどです。日本から帰ってきて、この家に入ったら、強烈な腐った臭いがしたのです。まだ、ほら微かに臭うでしょう」
「そう言えば、カビ臭いを超えた嫌な臭いですね」

「工事の全員で、家の中を探したんです。なかなか見つからなくて、とうとうWさんが、この玄関の左の隅のところの狭い三角形の木枠の底に猫の死体を見つけました」
「ひゃー。本当ですか」(私の体験と同じだ!)「嫌だなあ。気持ち悪いなあ」

「私たちが留守をしている間に、猫が家に入ってきて、この木枠の中に落ち込んだのでしょう。猫はそこから出られずに、餓死して死んでしまったのです」
「Wさんが、猫を取り出して、外のゴミ箱に捨ててきました。そしたら、次の日からWさんは体の具合が悪くなって、熱を出して寝こんでしまったのです」
「猫んでしまったのですか。まいった」

「だ、だから、ひょっとすると、樋口さん、笑うかもしれませんが、アラビアの猫の祟りではないかと、私たち思っているのですが...」
「笑うなんて、とんでもない。半年ほど前に、私も同じ体験をしています。じゃ、Wさんをどうしますか」
「どうしたら良いでしょうか、樋口さん」

「とにかくお祓いをしてはどうでしょう。やりましたか?猫の成仏を祈りましょう」私のように、夜の迷信を打破することが生きがいのような者が、お祓いを提案するとは!
「やっぱり、そうですか。やりましょう」

 工事の関係者全員と私たちは、猫の遭難現場の前にテーブルを置き、その上に、酒が無い禁酒国のサウジアラビアだから、缶コーラを置いた。
 私たち日本人が整列して、立ち並び、まず目礼をして、全員手を合わせて、

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と、私が言うと、
「樋口さん、ここアラビアですから、コーランを置いて、アラビア語が必要ではないですか」
「まあ、いいじゃないですか。日本式で、日本語でやりましょう」と私は「ここで、遭難した猫さん、どうか、成仏してください」と真面目に、全員で拝んだ後、手を2回叩いて祈った。

 
 それだけだった。その日の夜から、Wさんの熱が下がり始めた。次の日は、3週間ぶりに自力で立ちあがることができた。そして、3日後には、正常に仕事を始めたのだった。
 この体験で、猫が恨みに思うと、祟ることは間違いないと体感した。猫の恨みを買ったら怖いぞ。

 証言 これは事実だ。この工事の日本人関係者一同と、何と言ってもWさんご本人が証言してくれる。

教訓 猫は自分が悪くても、人間を恨むのかな。猫恨みされると、やばい。