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地震対策用携帯式防災グッズの考案

地震対策用携帯式防災グッズの考案

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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CIMG0304.jpgCIMG0309.jpg地震・津波シリーズ その3

地震対策用携帯式防災グッズの考案
 60数年に一度のヒマラヤ大震災が起こりえるネパールのカトマンドゥから、タイ航空に乗って、出発し、日本に帰国する時、
「ああ、ヒマラヤ大地震を体験することはなかった」と思った。

 無事に帰国して、まさに必ず大震災が起こる可能性を持つ日本に住むことになった。そして、私は商社を定年退職して、アイデアマラソン研究所を設立した。

 帰国した後、私の関心は新型防災グッズの開発だった。防災グッズは2極化していた。一つは家庭用の防災グッズで、緊急の場合に、食べるもの、飲料水、持ちだすものや、サバイバルグッズ、耐震対策グッズなど、多彩にそろっている。

 もう一つは、事務所用の防災グッズで、仕事中に大地震が発生した時に、使うヘルメットや、リュックに納めたサバイバルグッズなどが、多数発売されている。

 では、通勤途中や帰途、仕事で外出している時に、大地震に見舞われたらどうするかと考え始めた。携帯式、いつでも持っていることができる防災グッズはどうすればよいだろうか。
 
 すでに発売されている防災グッズを調べ、資料を探し、友人や家族と相談した。そして、携帯用の防災グッズのプロトタイプを完成させた。その中には、震災に遭遇してから2時間生き抜くために必要なものを最低限揃えて、ポケットに入るサイズに整えた。

 私はこれに「ポッケの中の防災キット」という名前を付けて、商標登録した。そして、そのプロトタイプの製品を持って、それを発売してくれる会社を探そうと考えた。

 その企業が東芝の子会社の東芝ビジネス&ライフサービスだった。同社社長との面談で、私がぜひとも同社で発売して欲しいとお願いしたところ、
「人の命が掛っていることだから、やってみよう」と、社長の一声で決まった。「一人でも助かれば、素晴らしい」さっそく契約に向かった。そうして出来上がったのが、「ポッケの中の防災キット Ver.2」だった。

 何度も、打合せを繰り返し、最終的には、マスク、FMラジオ、笛、小型ナイフ、三角巾など、多彩な道具を詰め込んだ。そして、東芝の工場群のキオスクで数万個の携帯式の防災キットが発売された。

 ポケットに入れるだけでなく、カバンに入れておいたり、車のポケットに入れておくこともできる。更に一部の内容を調整して、子供用の「キッズ用ポッケの中の防災キット」も発売した。このキットを購入した人と話したところ、今回の大震災で、さっそく家族が使い始めたとのこと。私の見通しは正しかった。

 バージョン2は、のこりサンプルしか残っていない。現在、更に内容を改良して、「ポッケの中の防災キットVer.3」を計画している。今こそ、必要なものだからだ。

要点 ニッチにはたくさんの大事な発想が残っている