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居酒屋の壁がポストイットで埋まっていく飲み会(XBの専門家に会いました:後編)

居酒屋の壁がポストイットで埋まっていく飲み会(XBの専門家に会いました:後編)

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


XB(クロスビー)の専門家に会いました(前編)  に、続き、今度は、XBeer(クロスビアー:XB飲み会)の模様を、紹介します。


お話の中心は、XB法の三澤さん

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中盤に差し掛かったときの様子。


そして、ここは、恵比寿駅のすぐ目にある居酒屋の3階で、この窓の下には恵比寿駅があります。ポストイットの張れる空間として、大きな窓のある店を選ばれた模様。ところで、これ、地上階で外から見える席だったら、そうとう通行人に興味持たれたでしょうね。なんかそれだけでも、いろいろ、イベントとか、企画を思いつきそうです。


頭から、順に。

11月7日の夕方、三澤さんとビジネスパーソン6名、そして私石井の合計8名があつまりました。

この6名の方々は、産業技術大学院大学の『人間中心デザイン』プログラム( http://aiit.ac.jp/view.rbz?cd=441 )を履修しているメンバーです。XB法も含め、『人間中心デザイン』ということを学ばれているので、同席してみて思ったのですが、視座や考え方がとても洞察深い方々でした。



さて、じゃあ・・・、といって「お、飲み会、始まるのかな?」と思いきや、「どんっ」とテーブル上におかれたのは、

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ポストイットのブロック。

そして、ペンがざららっと。

メンバーからも、A3の白紙がさっと出されました。

「お?お?なんだ」という間に

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みんなXBのカードを取り出しました。そして、三澤さんから、XB法についての基本的なコメント。

じゃあ、お題を決めよう。なんにする?というところで、私が「はい!消せる紙で、やりたいんですかどうでしょう?」と提案。

何をするのかもよくわかっていないけれど、面白そうなので、とにかく提案してみました。

その時にちょうど持っていた「消せる紙(パステル・ブルー)」と消せる紙コラボ作品である発想ツール「はちのすボード」を場に出して、「紙でできたホワイトボード」というこの素材で、他に何か商品できないか考えてみたい」と。

じゃあ、それで行こう、ということになりました。

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参加者のみなさん。新型Mac Book Airも。

へー、消せる紙か、おもしろいね。といいながら、いろいろペンで書いて試したり、壁に張ったりして、どんどん試します。

さて、どう始まるのかなと思っていると、三澤さんが何やら、あれこれ手元でポストイットを書きはじめました。

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・消せる紙の新しい使い方
・イメージ共有の新しい形
・書いて消せるうれしい体験
・描く、書く、体験

そして何やら、何か検討している模様

「?」とおもって、見ていると、ポストイット群をじっと見つめて

「じゃあ・・・、これにしよう」といって、さっと書き、張りました。

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・考えの新しい描き方

私は「お?考えの新しい描き方とな?なんか、面白そうなテーマ!」と内心おもっていました。

持ち込まれたテーマをそのまま扱うのではなく、適切なテーマに再設定する、というのは良いアイデアワークのために非常に効果的なことなんですが、三澤さんは非常に短時間で、テーマの中心的概念を適切に拡げてエッジのたったテーマにされました。

この辺、いろいろと興味深い思考プロセスがあったかと思うのですが、それは聞きそびれました。ただ分かるのは、「お、これは面白いアイデアが出せそうな、良い発想テーマだなあ」ということ。

さて、この後の数分の作業はについては、メンバーといろいろ話し合いながら、XBの7枚のカードから、一枚を選びました。

これはいわば、発想技法における、広義のチェックリスト法に近いことをしているのでが、内容は、「オズボーンのチェックリスト」とは全く違います。ちょっと、説明をぼかしますが、シンプルで具体的なカード表現から、適するものを選定する作業でした。

私には、どれも良さそうなカードに見えましたが、三澤さんたちは話し合って「このテーマの場合には、これはやや違っているかな。これとこれは良さそう」という感じに候補を絞っていき、一枚を選びました。

そしてそのカードの裏に書いている3項目「価値観」「対象」「体験」の欄にあるフレーズを、ポストイットに描き写し、窓ガラスの3面に1つずつはりました。

これはうまい。3列の表をホワイトボードに書くかわりに、細長い窓を3つ使うことで、それを代用しました。

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写真のなかで、水平一列に並んだポストイットがそうです。

さて、早速、項目ごとに、発想開始。

まずは「価値観」項目に書かれた具体的なフレーズから、思いつくことを、みんなでどんどん考えて書き出していきます。消せる紙とかは、いったん外して、どんどん思いつく限り。5分ぐらいで左側の窓枠の中が一杯になりました。(この時点で、三澤さんの緩急をつけた、発案のフェーズでは主張しすぎないファシリテーションのうまさ、参加メンバーの発想の速さに気が付いて、おお、恐ろしく優秀なメンバーのあつまりだな、ここは。と思いました。)

もうお酒が来ているかどうか、思い出せないぐらい、楽しく出し始めていました。

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次は、「体験」の所に書かれたフレーズから、思いつくものを発想していきます。

(予想に反して、2つ目の「対象」ではなく3つ目の「体験」に進んだのは、ワークの効果を考えた進行なのだと思います。この順番は、毎回こうなのかどうかは定かではないのですが、もしかしたら、タンジブルなモノと、触ることのできないイベントやコンセプトを企画するケースで違うのかもしれません。対象、という項目は物体を伴いがちな概念なので、消せる紙というアイテムに引きずられすぎる。それが第二段階で起きてしまうか、第三段階で起こるのかで、大分影響度がかわります。それを考慮してのことかもしれません。)

「体験」も、短時間で次々発案。

三つ目は「対象」です。どんどん出していきます。

ここもだいたい、出そろいました。

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にこやかな三澤さんが、ポストイットをみる時の表情は、プロの顔、・・・そうですね、職人のような眼光があります。

すると、各セグメントから、三澤さんが、

「これと、これと、これ」

という感じに、1枚ずつピックアップしてきてテーブルの上に並べて貼りました。

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「ずっと持ち続けている」「読んだページ」「一生懸命に書いた」

この3つが意味を持つとしたらそれはどんなものだろうか。

ここで消せる紙が念頭に置かれながら、アイデアを出していきます。

「ずっと持ち続けている、読んだページか、、、そうだなぁ、、、あっそうだ、たとえば・・・」

「ずっと持ち続けていて、一生懸命書いたもの、、、、じゃあね、こういうのはどうだろう・・・」

という感じで、商品アイデアが出されていきます。

この部分、非常に面白くかつよくできたつくりになっています。

3つの条件を与えられてそれらを含むような案を思考を行うことは、ある意味、アブダクションの力を使っているといえるかもしれません。"3要素から発想する"という発想のアプローチは、「3カード法」などにも見られます(たとえば孫正義氏が若いころによくやっていたことことで知られています)。本質は似ているかもしれませんが、XBがそれらよりも、かなり高度です。従来の3カード法との最大の違いは、3要素がそれぞれエッジのたったよく調整されたキーワードから出現させた言葉であることです。

この3つのセットから非常にたくさんのアイデアが出されました。

私が出したものをひとつ紹介します。

「1月1日ノート」
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10年間以上使えるノートで、毎年1月1日にそれを書きます。お正月に去年の決意を書きつづった紙そのものに、また今年も向う。そして、10年間、毎年、お正月にはその紙の前に来る。それが同じようなノート、ではなく、まったく同一の紙、であるというコンセプト。10年前の自分もその紙に左手を添え、何かを・・・、何かの決意を、書いたんだ。そんなノートです。
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これがいいアイデアといえるかわかりませんが、とにかく出しました。

この組み合わせでしばらく出したら、次のセットへ。

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「ずっと大切にしてきた」「前回書いた文章の筆跡が写っていた」「10年間書き続けた」

これを用いて、またアイデアを出していきます。

詳しい流れは、省きますが、中には「前のものが写る」というコンセプトから、下に書いてあるものが透けて見える「ホワイトボードペーパー」というアイデアも出ました。

通常、ホワイトボードは、他のことを書こうとすると、消すか、送るしかない。でも今書いたものを保存しながら、その上に一枚レイヤーを置いてそこに重ねるように描き加えたい、という時があります。デジタルになれた世代には、そういう「レイヤーを重ねる」ような作業を求めるも、できない。これが「トレーシングペーパーのような透けて見えるホワイトボードペーパー」がかなえてくれたら、かなりニーズがあるかもしれません。鉄板でできたホワイトボードにはない、紙だけの有効機能が提供できるかもしれません。

あるいは、大きなポスターや地図のようなものの上に、重ねて、矢印やルートなどを、書き込めるホワイトボードができるかもしれません。ホワイトボード加工された地図は、地域向けの仕事をしている営業部隊には結構ニーズがありあそうです。透過性のホワイトボードペーパはその辺に訴求するかもしれません。

また、そこから「ツダる作業を良い体験にする道具」というのアイデアも出ました。ここについては、脱線しすぎるので割愛します。(ご興味あれば聞いてください)

この辺で残念ながらタイムアップになってしまい、私は恵比寿から仙台に向かいました。


実行ができるのかどうかは技術的要件の問題や採算性などの問題も超えていく必要がありますが、商品開発のネタとしては、十分なほどの量、魅力的なアイデアが創出されました。

他の発想技法(たとえばブレインライティング法)などでもアイデアを大量に出すことは可能です。しかし、これだけエッジのたった濃度の濃いものを出すのは、正直、かなりすごいと思います。

おそるべし、XBのコミュニティー、というのが、私の正直な感想でした。

みなさん、ありがとうございました!


追記

参加者の方の書いたブログあります。
とても興味深いので是非ご覧になってみてください。


「第一回XB法飲み会(クロスビア)」に参加した。
http://d.hatena.ne.jp/cha-cha-ki/searchdiary?word=%2A%5B%BF%CD%B4%D6%C3%E6%BF%B4%5D
追記


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