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ブレストの発展形【その1】ブレイン・ライティング
»2010年4月22日
力重の「ブレインストーミング考」
ブレストの発展形【その1】ブレイン・ライティング
アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。
当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
会社に入って、ブレインストーミングを初めて体験する方もいるでしょう。
ブレストにも、各社ごとの発展系が、実は結構存在します。
私は、企業ごとに、そういうさまざまなスタイルがあっていいのだと思います。
組織文化や業種に合うように、ブレインストーミングの
スタイルも分化・発展していく。それで、いいのだ、と。
一方で、よく知られた代表的な「ブレストのいくつかのスタイル」もあります。
これらからヒントを得ることで、各社独自のブレストの形をよりよいものへ
進化させることもできます。
それをねがって、ブレストの各種スタイルを、シリーズで紹介していきます。
・・・
さて、今夜は「ブレイン・ライティング」
これは、「エンジニアが多い組織」とか
「口頭でアイデアを出し合うのが、あまりなじまない組織」には、
よい方法。
もちろん、口の立つ企画マンの多い部署でも、有効です。
なにせ、アイデアを言い合う作業をまったくなしに、
アイデアをチームで大量にだしていく、という方法ですから。
方法は、いたって簡単です。
正式な方法は、一度おいておいて、
現場で実践するリーダのために
かいつまんでご説明します。こんな感じです。
■6人(多少、増減があってもOK)に、
30分、時間をとってもらいます。
■必要なものは、
・白紙(できれば、A3、なければなんでもOK)とペン × 人数分
・テーブル、椅子
これだけです。
島にしたテーブルを囲むように全員が座ります。
■方法はこうです。
ステップ1
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発想のお題を、説明する。
この後、しゃべらないで進めることになりますので、
何についてアイデアを出してもらうかが、明確に伝わっている必要があります。
そして、それぞれ、手元にある白紙の上部に、
その発想のお題を、書き込みます。紙は縦長にします。
ステップ2
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升目を書きます。横3、縦6。
この作業を回避したいならば、あらかじめエクセルでさっとつくって
出力してもいいでしょう。
でも、そんなのなくても、いいんです。
多少ふにゃっとしても、とにかく、升目になっていれば結構です。
ステップ3
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3分間で、アイデアを、3つ、書きます。
最上段の3つの升目に。
後で評価ワークをしやすいよう、1枡、1アイデア。
テーマによっては、5分間や、1.5分と設定してもいいでしょう(本式は5分です)。
ステップ4
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時間がきたら、シートを時計回りに回します。(左隣へ渡す)
そして、3分間で、2段目の3つのマスにまた、アイデアを書いていきます。
先に書いたアイデアとまったく同じものはNGですが、
だんだん出せなくなってきたら、
「ちょっとでも、違えば、それは別のアイデアだ」、といい切って、
似たような(しかしまったく同一ではない)アイデアを出してもかまいません。
実際のところ、本のちょっと違うだけでも、その周囲に派生するアイデアは
驚くほど違うものなんです。
なお、一段目に他の人が書いたアイデアが見えますが、
これをヒントにして、便乗するアイデアを書いても結構ですし、
まったく無視して別のアイデアを書いてしまっても結構です。
これを、3分、3分、3分・・・、とつづけていって、
6段目までやれば、完了です。
(補足)
人数が4人の場合、はじめに書いたシートがもどってきますが、
気にせずに、6段目までつづけます。
逆に。8人とかの場合は、シートは完全には一順しませんが
それで結構です。
所要時間は、発想のテーマ説明、及び、進め方の簡単な説明、をふくめても
25分~30分ぐらいです。
6人で実施した場合、この時間で生み出せる
アイデアの数は108個です。
(ワンシート18個かかれて、これが6枚ありますので)。
なお、この方式だと、最初のほうは、みんながかなり
似たアイデアを同時に出しています。
このダブりを削ると、かなり減ってしまい、
「半分」ぐらい、になります。(目安の数字です。)
つまり108/2~54個ぐらいが、独立したアイデアとして得られます。
これがとても多い数字です。
考えてみてほしいのですが、
6人を会議室に30分会議室に閉じ込めて、
あさ、口頭でアイデアを出そう、とはじめて、
うまくいったとして、30分後に、
ホワイトボードが真っ黒になったとき
そこに書かれているアイデアの数は、
20~30でしょう。
優秀なチームでホットなブレストができたとしても、
ホワイトボード2面がうまって、それで50~60。
(30分で60個、というのは、物理的上限に近い
数字です。詳しくはまた別の夜に。)
このブレインライティングだと、
さほど、ブレインストーミングを促進する技術が
なくてもアイデア産量が、最高水準にちかい
(あるいはそれ以上)パフォーマンスになります。
さて、ここまで、くると、ちょっと気になります。
「え?そんな、簡単に、出せるなら、
みんなやってるだろ。
なにか、マイナス面は無いの?」
と。
そう、そのとおりでして、
口頭で、ホットにやるブレストにくらべて、
劣る点もあります。
これも申し上げておきます。
まず一つは
「口頭で、出したほうが、出しやすいという人」にとっては、
ストレスとなります。
"声の大きい、あの人か・・・"と思い浮かんだと思いますが、そうです。
ブレストを大声でひっぱれる人にとっては、
3分で3つというのは、遅すぎたり、
言葉で説明しないと、どうもアイデアの本質を、
うまく発露させられないんだよなー、と
ストレスに感じます。
もう一つは「一定の時間がかかる」ということ。
3分×6回=18分は、最低でも時間を確保できないと、
中途半端になります。
3行目あたりで終えてしまうと、
あまり質の高いのがえられません。
(少ない、だけで、ゼロではないのですが)。
筆者のチームの研究データでいえば、
ブレインライティングのアイデアの質を評価した場合、
平均的にみて、4段目に質の高いアイデアのピークが出現し
6段目に一層大きいピークが出現する、という傾向があります。
ただ、そうではないケースもありますので、
あくまで平均のモデルで、なのですが。
この18分間という最低所要時間は、
ちょっと手軽に6人を拘束するには、長いです。
アイデア会議、としてみればむしろ短くくらいですが、
さっと、手軽に、自然発生的にブレストへ、という流れの時には
しにくいものがあります。
そして、もう一つが、
「最期まで自分が目にすることの無かった優れたアイデア」が
存在することも、マイナスの面です。
自分が回したシート、その後に伸びていくアイデアは、
最後まで、自分が目にすることはありません。
それを目にするのは、ワークの終わった後なわけです。
原理的に、全アイデアの半分までしかワーク中に目を通せません。
「ああ、アレをワーク中に見ていれば、こんなアイデアもだせなたなー」と
感じるところでもあります。
これについては、処方があります。
ワーク後に、アイデアの質の高いもの
上位5~10ぐらい選抜して
それを材料に、さらにミニブレストをします。
質の高いアイデアを材料にして、ブレストをすると、
かなり盛り上がります。
このブレインライティング、
ブレストに不慣れなメンバーが多い場や、
プロジェクトの初期段階などには特にお勧めです。
ぜひ、試してみてください。
なお、このワークを快適に行うために
アイデアプラントでは、「ブレインライティングシート2」という道具も
つくっています。
企業の研修所さんとか、研究開発部門のご要望にこたえて
かちっとした、ものを、最短時間でできるように、工夫してあります。
近くで持っている人がいれば、ぜひ試してみてください。
私が全国のワークショップのたびに、余りを差し上げたりしていますので
お持ちの方が、意外と周囲にいるかもしれません。
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補足:
はじめてのブレインライティングをするチームために、
動画を作り、アップしてあります。
※ なお、上記の説明よりも、前の時代につくったものなので、
すこし、正式ルールにのっとってやろうとしていて、
くどく、遅い感じになっていますが、さっぴいて見てもらえたら幸いです。