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ブレストの発展形【その2】カード・ブレインストーミング

ブレストの発展形【その2】カード・ブレインストーミング

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


さて、ブレストの発展形、第2夜。

今夜は、「カード・ブレインストーミング」です。

これは、中学校の先生とかが、好んで使う方法なのですが
発言が苦手な人がいても、徐々にブレストが回りだす、そんな方法です。

これ、昨日の「ブレイン・ライティング」と同様に
アイデアが、紙に書かれた状態で残る、という良い点があります。

また、「ブレイン・ライティング」は最低でも20分程度の時間を
確実に必要とする、というデメリットをもつのに対し、
この「カード・ブレインストーミング」は、ブレストと同じぐらいの時間融通性があります
つまりちょっとだけ、ブレストしよ、というときでも使える点が、良いところです。

さて、やり方ですが、こうやります。

■準備するもの
・フリップボード(クイズの回答者がもっているようなボード)とペン × 人数分
・椅子

■人数
特に強い制限はありませんが、
3人~7人ぐらいが最適です。
(2人でも、やったことがありますが、それはそれでなかなか、快適)

■方法

ステップ1
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発想のテーマを、決めます。これは、普通のアイデア出しと同じ。

ステップ2
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3分間、時間をとり、各自でアイデアを1つ考えもらい、ボードに書いてもらう。
(コツ:3分で足りないとき、もう2,3分、延長する)

ステップ3
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せーので、いっせいに、フリップボードを、胸の前に掲げて
そのボードを見せながら、各人がアイデアを説明する。


自然とブレストっぽく、便乗アイデアが出てきたりしますので、
それはしばらく自然な流れをみて、便乗が収束してきたら、
また、時間をとって、アイデアを書いてもらいます。
で、3分たったら、いっせいにだしてもらいます(ステップ2,3のリピート)

大体、リピートするのは、2,3回ぐらいにしておきます。
あまりに繰り返すと、アイデアが出せない苦しさでストレスとなりますので。

ただ、みな、まだまだ出るようであれば、5~6回繰り返しても結構です。
(人数によりますがこれぐらい繰り返すと、30分~1時間たちます)


この方法のいいところは、普段だったら、水を向けないと発言しないような人にも
必ずアイデアを出してもらえるところです。

また、アイデアが多様なまま、場に提示される、というのも大きいです。
たとえば中小企業、わんまんっぽい社長さんが同席するブレストは、
社長さんの発言以降、流れが収れんしてしまう傾向があります。
先に発言した権力者の意見を「踏まえて」発案を提示する、そういうところが
多かれ少なかれ、ありますので。

このフリップボードを使ったブレストの場合、
ボードに書いてしまったことは、読み上げることになりますので
先に権力者が発言していたことと、相容れないとしても
とにかく、多様な意見は多様なまま、だす。ということになります。


これ、発想の状態からしても、おもしろいミックス構造になっています。

まず最初の3分は一人シンキング、
その後の発言タイム(大体5分前後)は他者としゃべりながらシンキング、
こういう「静寂・動的」を繰り返すスタイルの発想方法です。

体験してみるとわかるのですが、こういう、場の効果的な切り替えは、
意外と思考が進みます。

ぜひ、たまには気分を変えて、フリップボードをもちいたアイデア会議をしてみてください。




補足:

なお、この方法をするときに、
"フリップボードなんて手に入らないよ"
という声もあるでしょう。値段も高いので、おいそれと使うわけには、と。

そんななかで、使えるのがスケッチブック。
100円ショップに行けば100円で結構立派なものが買えます。

7冊ぐらい買って、会議室の棚にぽんっとおいておいて、
どんどん使ってもらうようにしてください。
つかったらやぶりとっていいですよ、として。

なお、ペンは、太く書ける「プロッキー」とか「ポスカ」の
ようなペンがいいでしょう。スケッチブックとあわせて、常備。
会議室のなたとかに、7本ぐらい、輪ゴムで無造作に
束ねておいて転がしておきます。

これがあれば、いつものブレストを、カードブレストに
切り替えよう、というときに、さっと、くばって、
「じゃあ3分で、まず、1つ書いてみて・・・」と
展開することができます。

1400円ぐらいで、いつもの会議が、
アイデアを引き出しやすくなるならば、安い。
また、ボードがあると、「絵的」「図的」なアイデア、意見も
出しやすくなります。ビジュアル的なものがでると、幅は広がります。
ちょっとした道具ですが、意外と投資対効果があります。




補足2:

このカードブレストは、2~3周すると、次第にメンバーが
アイデアを発言することに慣れていきます。

「あ、これぐらいでいいんだ」という感覚とムードが醸成できてきたら、
その後は、口頭での普通のブレストに切り替えてもいいでしょう。


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カード・ブレインストーミングとして、ポストイットを使うスタイルもあります。
この場合は、お互いの書いたもの、会議テーブル越しには見えませんので、
ワークショップ時の小さな集団で発想する場合で、有効です。
大きいテーブルの向こうで、ポストイットを掲げても、みえませんが、
みなで壁に貼りながら、出すならば、ポストイットは、いい方法です。