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ブレストの発展形【その3】スピードストーミング

ブレストの発展形【その3】スピードストーミング

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


ブレストの発展形の中でも、新潮流となりえる
「Speedstorming(スピードストーミング)」という
ブレインストーミングの新しいスタイルをご紹介します。

MITで考案されたもので、
二年前の創造学会で、創造技法の研究者らが、
新しいブレストの形として、国内に紹介したものです。

実際にやってみると、とても面白く、
大人数でのアイデア創出に高い効果があります。

その行動の一つ一つは、
特別なものではないのですが、
発想を促進する「構造」がとてもよくできています。

今回は、他のスタイルに比べて特に知られていないので、
良い技法が広く使ってもらえるように
実施例の、ダイジェスト・ビデオ(1分)を
つくってみました。
撮影地は仙台のクリエータのシェアオフィスです。

 音量にご注意ください。6秒ごろから騒々しい音が出ます。



以下、スピードストーミングの進め方を紹介します。

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Speedstormingの方法

【1】二重の輪になります。フォークダンスの構造に。

【2】発想のテーマを確認し、5分間ペアで、アイデア出し。

  ※ 簡単に自己紹介(名前と普段取り組んでいること(仕事や作品)を
    手短に紹介しあう。
    ブレストの仕方は各自の自由。

【3】5分経過の合図で、外側は、時計回りに一つずれ、
   新しいペアで、また5分間、アイデア出し。

【4】5~6回繰り返す。(時間にして30分ぐらい)

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このペア・ブレスト、という形は
「分野を超えた連携の開発アイデアが出やすい」傾向があると
されています。

実際に実施してみたなかでも、
その効果は感じられました。
(まだ、サンプル数が少ないので、
 あくまで、「個人の感想です」になるわけですが)


さて、このスピードストーミング、いくつかコツがあります。
次の点も、ぜひ考慮してみてください。

・ブレストの最中、適宜メモをとり、
 "覚えておかないといけないこと"を極力少なくします。
 ただし、全て記録しようとすると時間がかかり、
 発想があまり展開しないので、書くのはあくまで、さっとメモ程度に。

・参加者の様子を見て、「メモの時間」を設けたほうがよさそう、
 と判断したら、
 5分の交代時に「30秒~1分ぐらいメモタイム」をとります。
 長くすぎると、場が冷えるので、1分ぐらいを上限に。

・5分が終わったときに、すぐに会話をきれないペアが出てきます
 後半になるほど多くなります。
 この場合も、「1分のメモタイム」をいれると、
 緩衝材となってくれます。

・ブレスト的な場であり、出すアイデアの質は
 問わないですよ、という意識付けをしておきます。
 たとえば、せりふとしては
「できそうに無いアイデア、
 実現方法が分からないアイデア、
 すでに実現していそうなアイデア、
 面白いか分からないアイデア、
 そんなものでも結構です。」
 と司会者が提示します。
 こうすることで、
 初対面の異分野の人同士が、
 アイデアを言いやすくなります。


・・・

なお、ブレストの各種手法は、
いいとこばかりじゃなく、一長一短があるわけですが
このスピードストーミングにも、短所があります。
述べておきます。

まず「合わない相手と、たまに組む可能性がある」という点。
時間がきたら交代なんだから、と自分に言い聞かせて
乗り切ってもらうしかないわけです。
アイデアキラーがいると、組んだ相手は実際つらいでしょう。
ただし、発想の促進、という意味では、この時間は
決して無駄なことばかり、でもありません。
自分と思考が違う、観点が違う人との会話がもらたす
刺激は、発想の観点を広げるのに、時に役立ちます。

次に「広い場所がいる」という点。
たって動くのは、とてもよい効果がありますが、
手振り身振りを徐々に始めますので、
ある程度、広さを確保したいところ。

そして「ある程度人数がいる」という点。
3人しかいないと、あまり意味が無いでしょう。
4人だと、ペアで3通りの組ができますので3順ぐらいはできます。
6人ぐらいいると、うまく組み合わせをこなせば5順ぐらいできます。


・・・

以上、スピードストーミング、という手法の紹介でした。


この手法、実施のための日本語の資料が少なく、
あまり知られていないのが現状です。

私のここでの説明は、「実施のしやすさ」を最重視し、
(オリジナルの方法に比べて)簡単化や日本の場に合うような
アレンジをしています。

より正確な方法を知りたい!という方は
MITのサイトの原文もぜひご覧ください。


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参考情報:

Speedstorming
a new approach to interdisciplinary idea generation
(MITのspeedstormingについての情報があるサイト)

http://mit.edu/jcg/www/SpeedStorming.html

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