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IDEOのブレスト その2 「Stay Focused on Topic」

IDEOのブレスト その2 「Stay Focused on Topic」

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

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ブレストの基本的ルールにはない、IDEOの独自ルールの一つ
「Stay Focused on Topic」
(テーマにフォーカスを当て続けよ)

これについて、コツも含めて、紹介します。


ブレストをしていると、どうしても脱線的な話が多くなり
いつのまにか、何の話してたっけ?となること、ありませんか?
"Stay Focused on Topic"は、それに対する処方になります。

しかし、一つの疑問がわきます。
ブレストは自由なアイデアや未成熟なアイデアを出すことを
奨励しています。("Encourage Wild Ideas")
この方向から考えると、ちょっとでも、テーマからはずれるような
アイデアやコメントをさせないような環境は、"Encourage Wild Ideas"に
反するのでは?

そう疑問がわきます。
それについて、IDEOの方に聞いてみました。

答えは「バランスだよ」とのこと。

雑談のようなものにせず、一方で、幅も持たせる。
そのバランスをとるんだ、と。


この辺、とても興味深く、柔軟ですね。
ルール同士が、無矛盾になるように構成するべきだ、
と考えがちですが、衝突する(しかし重要な)概念を、同居させていくあたりは、
「理路整然、よりも、使えること」が人間の営みには重要なのだ、と感じさせれました。



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ここからは、筆者の補足です。

"IDEOの示唆。それをブレストに活かすには"
という話ですが、ご興味あれば、ぜひお読みください。

・・・

IDEOで教えてもらったことを踏まえて、
日本人だけのブレストの際に実施していくなかで
すこしコツが分かりました。

ブレストの際に、ファシリテータ(あるいは進行役)が
"Stay Focused on Topic"をあまりに厳密に適用すると
日本人の教育的背景から「正解探しの場である」と
感じるようです。
その結果、新しいコンセプトを創出しにくくなります。

逆に"Stay Focused on Topic"をまったく意識しないで
ブレストをした場合はどうか、というと、
脱線に次ぐ脱線で、
"おもしろかったなぁ、けど、あれ、最初のテーマって
 なんだっけ。あ、そうか、途中から違うこと話していたなあ"
となったりします。
たくさん発言してそれが楽しい人はまだ、精神的にリフレッシュ効果を
得ていいでしょうが
"あいつがなんだか、わけの分からないことを言い続けて、
 結局一つも、すすんでない"とイラついて終わる人もでます。

進行役が踏まえるべきコツとしては
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主題をはずれて脱線的なアイデア・発言が2~3個つづいたら
「Stay Focused on Topic」
(テーマにフォーカスを当て続けよ)
をみなにフィードバックする。
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ぐらいがいいようです。

「それも興味深い開発ネタですね。
 次のネタとして、広げてみたいところですが、
 今は、主題に戻りましょう。
 今の発想のテーマはこれです。」

といったトーンで、戻すといいでしょう。
ブレスト中に闊達に出る意見は、奨励したいもの。
さりとて、有限時間内で、アウトプットも出したい。

脱線が終わるまで、議論を尽くして、
さあもどろう、というときには「時間が尽きている」か
「メンバーの集中力が尽きている」かしてしまう、のは
寂しいもの。

ぜひ「Stay Focused on Topic」を意識してみてください。



ちなみにファシリテーションの古典的な本に
この辺のことに役立つヒントがあります。

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議論のテーマをみんなの見えるところに書く。
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ホワイトボードの一番いいところに
発想のお題を書きます。
それがテーマのサブ構造にあたる
ミニテーマのブレストの場合でも、
テーマをボードに書きます。
そうすると、空中戦のような不安定さが減ります。

「ホワイトボードがそんなにあいてないよ」
ということもあるでしょう。そういう時は、
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赤か黄色の紙の裏に、大書きして、
マグネットで仮止めしておく。
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ぐらいでも、十分に効果的です。
それが発想のテーマである、ということをしめすアイコンが
場にあるだけで「Stay Focused on Topic」は自然と
なされます。
紙の色は、普段ビジネスで使わない赤とか黄色がいいでしょう。
白い紙は、視覚的に埋没します。


この話題、あと2回、続きます。