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IDEOのブレスト その3 「One Conversation at a Time」
»2010年4月27日
力重の「ブレインストーミング考」
IDEOのブレスト その3 「One Conversation at a Time」
アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。
当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
ブレストの基本的ルールにはない、IDEOの独自ルールの一つ
「One Conversation at a Time」
(一度に一つの会話)
これについて、今夜は、書きます。
一度に一つの会話。
これが意味していることは
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ブレストの流れに加わっていないメンバー同士が
別の会話をはじめてしまうことは、避けよう。
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というものです。
人数の大きな会議。発言が達者なメンバーがどんどんブレストしていると
次第に発言しない人が端にいたりして、その人同士で別の話を
はじめることも、おこりえるが、それは良くない。
同時並行で、2つの会話が進むことは、やめよう。
いっときにする会話の数は1つにするのだ。と。
これ、思い出してみると、どこかで見たこと、ありませんか?
10人とか、割と大きな会議。
プロジェクト創出のための会議、ということで、
参画意識があいまいなまま集められたメンバーで、
ブレストをしている。
そのうち、発言の機会がなかなか回ってこない課長と部長が
ごにょごにょと、話し始める。
はじめはテーマに関係することをしゃべっていたようでもあるけれど、
「そういえば、この前の件ですが・・・」なんて、
別のことへ展開していたり・・・。
当人たちは、声を潜めてしゃべっているけれど、
アイデアをつむぎ出すような壊れやすい思考活動を
しているときには、それが結構、気に障る。
そんなことって、今まで経験ありますよね。
あるいは、意欲的なメンバーばかりで、ホットなブレストを
はじめたけれど、どんどん出したいメンバーがテーブルの中で
2つに割れて話を始める。そういうケースもあります。
IDEOの5つ目のブレストのルールは、そういう状況は作らないように、
ということを提示しています。
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ここで終わると、単に「ブレインストーミングのスタイル調査」だけで
終わりなのですが、読んでくださった方にしてみれば
「それは、わかった。
じゃあ、そこから、どういうコツを引き出せばいいんだ?」
となりますよね。
そこについても、周辺知識から、筆者なりの知見と実践に基づいて
お話します。
・・・
まず、「One Conversation at a Time」が守りにくい状況を作らない。
これが、大前提です。
人間が集まりすぎれば、ブレストは自然と、しにくくなります。
オズボーンはある文献の中ではブレストの人数を「5人~10人」と表現しています。
筆者のブレストの観察実験からいえば、日本人のコミュニケーション特性を加味すると
ブレストの最適人数は、もうすこし小さくて、「3人~6人」です。
8人とか10人が集められて、さあブレストですよ、といわれても、
ちょっときつい。
想像してみてください。テーブルに、自分のほかに9人がずらっといて、
自分の発言を聞いている。
自分のアイデアを的確に1分でさっと説明したとしても、次に発言できるのは
平均して9分後。
これで、ホットなアイデアだしができるか、といえば、実際のところ苦しいでしょう。
ブレストの人数に関して、4人の場でできる社会規範と、10人の場でのそれとは、
大分違う、ということを、ブレストに関するある文献では、いっています。
4人だと、目的達成に向けてサボることは、許されまじ。(みながワークに参画する)という
社会規範が生まれ
10人だと、議論に新しい要素を投入する無かれ。(新しい事、言うな)という
社会規範が生まれます。
「会議のサイズを、適切に設計する」
これが、ブレストの場を設定するリーダにとって重要です。
"とりあえず、これる人、きてよ。"と呼んでみたら意外と集まってしまって
15人とかになっちゃった。定時後の狭い会議室に、ギュウギュウに15人が入ったら
テーマの説明と自己紹介を軽くしたら、もう、飲みにいく時間だ~。
あー、じゃあ、続きは飲み会の席で・・・、なんてことになります。
では、こういうときは、どうするか。
きてくれたのに、6人以外は追い返すのか?
といえば、それはあまりにもったいないです。
(そもそも、人数を設定できない場面も、企業ではたくさんありますしね。)
この場合は、「少人数発案⇒後に、統合」方式が、良いでしょう。
たとえば、集まった人数が15人であれば、
「5人×3テーブル」ぐらいに分かれて、それぞれにブレストをします。
はじめのテーマ設定のところだけは、提案者がいないといけないので
共通してやって、後は、グループに分かれます。
そして15分とかの設定した時間がたったら、それぞれのグループで
出たアイデアを合わせて、ブレストの結果にします。
ダブるものがあるので、各チームが30ぐらいずつ出したとしても、
統合すると、合計60個にはならず、大体、40個とか45個ぐらいに、なるでしょう。
そんな対処方法があります。
しかし、ブレストのファシリテータ(進行役)がそんなにいない場合は
これはちょっとつらいです。
招集者がいるグループはいいとして、
ブレストのみ経験者ばかりで5人グループになったところは
戸惑って終わります。
そこで、そういうときには、
先に述べた【ブレストの発展形】を使うといいでしょう。
- 【ブレイン・ライティングを使う】
ブレインライティングならば、5人×3テーブル、
あるいは、7人テーブル、8人テーブル。で
実施するといいでしょう。
静かに、しかし、短時間で驚くほど大量のアイデアが生成されます。
(筆者の例です。
東北福祉大学の講堂で、200人での大規模なレインライティングをしたことがあります。
このときは、34グループにわけて、6人ずつになってもらい実施しました。
これだけ人数が多いと、紙の配布などに時間がかかりましたが
それでも、6人で実施するとの200人で実施するのには、本質的に、
そんなに大きな違いがなく、実施できます。)
- 【スピードストーミングを使う】
人数が多いならば、スピードストーミングもお勧めです。
メンバーがまだ、あまり面識の無い段階でも、かなりアイデアディスカッションが
進みます。最後にアイデアを紙かホワイトボードへ抽出するにはすこし工夫が必要です。
これについては、別途紙面を割きたいと思います。
「早く知りたい」という方は、筆者の最近のアイデアワークの報告のページをご覧ください。
後半で、アイデア・スケッチを書き出してもらっていますが、
たとえばこれが一つの(そして有力な)方法です。
このアイデア・スケッチは、加藤昌治さん(考具、の著者さん)が
ワークショップで行っている方法を、使わせてもらったものです。
以上です。
長くなってしまいました。
最後に少しまとめます。
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ブレスト・コツ
ブレストのサイズを適切に設計しよう。
最適人数は「3人~6人」
それを超える場合は、小集団発案・のち統合方式、を用いて
ブレストのサイズが常に一定範囲内になるようにする。
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補足:今日の記事は、
IDEOの方の説明(英語)が、(私の語学力の問題で)よく理解できなかったので
同行したメンバーの一人(道中、彼が通訳してくれた)に、
現場で翻訳してもらいました。
オリジナルの発言が、人の口を解して伝わっていることと、筆者の解釈が
入ってしまっていることで、いつもより、バイアスのかかっている可能性があります。
あらかじめご留意ください。