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スキャナの進化に過ぎた時間を思う(出張にs1100を持っていく)

スキャナの進化に過ぎた時間を思う(出張にs1100を持っていく)

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

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まだ世の中がWindows98やMeだったころ、本の表面をなでるとスキャンできる、ハンディ型のデバイス、という魅力的な製品があった。当時の仕事も出張が多く、これは欲しいと思い手に入れた。富士通のRapidscan「RS-C40U」である。

そして、その後、富士通のスキャナーはどんどん進化し、スキャンが楽しい、という領域にまでなった。それはまるで、かつて自動車が移動の手段であったのが、スピードを楽しんだり、エンジンの吹き上がる音を楽しむかのような感覚さえあった。書棚にたまる捨てにくい雑誌。ざくりと、背表紙を落としたら、卓上型のスキャンスナップに乗せると、がーっ、がーっ、がーっ、とリズミカルで慣れると気持ち良さもあるような駆動音を立てる。(スキャンスナップのs1500)

一方、冒頭のRapidscanは、実は買って半年ほど使ってお蔵入り。表面を手でなぞる関係で画像がゆがみ、正確さは犠牲になるし、一度に拾える面積が小さくハガキ程度だったので、結合処理などが面倒になってやめてしまったのだ。しかし何度も引越しを経て何度も手放そうかと思ったものの、製品コンセプトが気に入ってずっと所有していた。

そんな世代交代の中で、震災を機に新しいスキャンスナップを手に入れた。S1500とS1300は震災後の復興でスキャナを必要とする人にしばらく貸してしまって手元にある紙資料を取り込めくなった。そこで一番小さくなったS1100を手に入れて使ってみることに。

スキャナを手に入れると、本棚を電子化したくなるが、あらかた終わると、大量のスキャン性能を所有している必要性は薄くなる。日々発生する紙資料を少量吸い込めればいい。という経緯で改めて手に入れるならばs1100がいいだろうと。

手に入れてみると、かなり小さい。ゴマのすりこぎ棒ぐらい、という感じ。手に入れた直後には、長期出張に出なくてはならず、しばらくレビューをあきらめるかと思ったが、出張のリュックにちょっとの余裕があったので入れてみた。邪魔ならば、出先から送り返してもいいかとおもい。



スキャンしたかった紙も5枚ほどあったので、さっそく新幹線の中で使ってみた。(東北新幹線、はやて。仙台から東京への列車)

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空いているので、テーブルを2つつかう。一つはノートPC。1つはスキャナ。

動画でとってみた図(注意:音が出ます)


ノートPCのバッテリだけで動く。5枚ぐらいなら何の苦も無く終了。新幹線は比較的静か。その静かな走行音と同程度の音で駆動する。たぶん、前後の席には音は届いていない模様。

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取り込んだ紙面のクオリティーは、最上位機種のスキャンスナップとそん色ない。


この数日後、今度は旅先でディスカッションをメモしたカードをスキャンしてみた(東海道・山陽新幹線。京都から博多への列車)

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今度は、読み込むものが小さいので、ノートPCのキーボードの上に、スキャナをのせて、テーブル1つで作業をしてみた。

本体が軽く振動もさほどないので、ノートPCの上に置くことにはさほど抵抗がない。

動画でとってみた。(注意:音が出ます)
 

カードのような書類サイズでないサイズ、厚みのあるメモカードでも、まったく問題ない。(ちなみにこの単語カードは、ニーモシネの単語カードで書き味が非常に良い。万年筆を使う人が使うメモカードとしては最高かもしれない)

この作業なら、テーブル1つでも全く問題ない。(ただ、A4のスキャンだとちょっときついかも、作業面積的に)

なお、三人掛けでA席で行っているが、C席にも人はいた。その人が迷惑することはなかった(ように思われる)。


今、このブログを書いているのは博多のホテルである。ホテルの机は狭く、今、しがかりの作業が一杯。ちょっとスキャンをしようということで、ベットの上にノートPCとスキャナを持ってきてやってみた。その結果、あらたに分かったことがあったので書きたい。

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気付きから書くと「書類送り先がごちゃごちゃしているときには、『背面のガイド』を使うといい。」ということ。

はじめは、A4の用紙を普段と同じ感覚で、手差ししていった。すると二枚目をいれると、スキャナが、がががと、正常ではない音を出した。一枚目がシーツに引っかかって二枚目の紙の頭を押してしまっていた。

その後も、なんどか、送り出した紙が邪魔をしてしまうことがあった。毎回送り出した紙が邪魔していないかを見てどかせばいいが、つい気が付くのが一瞬遅れてしまう。

そこで、両面をスキャンするための「ツバメ返しみたいな背面のガイド」を立てた。

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本来は両面スキャンをするためのもの。しかし、これを使うと、後ろがごちゃごちゃしていても原稿は詰まることがないので、こういう時にも便利なんだと気が付く。

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ペロン、と手前側に排出される。手前側は手差しするから必ず空間があるので、ジャムることはない。


・・・

この出張はまだ間まだ続くが、たぶん、このスキャナは途中で自宅に送り返したりしないだろう。

スキャンしたものは、卓上型で行ったものとそん色ない。作業時間はごくわずかである。電源も要らない。昔、Rapidscanが届くまでに期待に胸を膨らませていた時の理想が、これは現実になっている。あれから10年、スキャナの進化に過ぎた時間を懐かしく振り返っていた。


・・・

多分、このぐらいまで来ると、次の10年がたった時、ノートPCとかタブレットには、将来スキャナが搭載されるのではないだろうか。ノートPCのモニター上部の上にA4の紙を入れるところがあり、それを「ぐーーん」と読み取ると、そのまま電子化された紙面がモニター上に現れる。リアルとデジタルをシームレスにつなぐ結節点に、スキャナがなるのではないだろうか。


石井力重