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「ロンドンオリンピック なでしこジャパンの引き分け指示」と「高校野球 松井秀喜の5連続四球」
あなたの知らないスポーツ、そっと教えます
「ロンドンオリンピック なでしこジャパンの引き分け指示」と「高校野球 松井秀喜の5連続四球」
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ロンドンオリンピックが閉幕して早2週間が経とうとしています。毎日のようにメダル獲得のニュースに沸き、先週の銀座でのパレードも50万人の人が詰めかけるという大変大きな盛り上がりでした。そしてオリンピック期間中も行われていた高校野球。こちらも桐光学園の松井選手の奪三振記録で盛り上がり、最後は大阪桐蔭が前評判通りの強さを見せつけて優勝と、こちらも話題が豊富な大会でした。
オリンピックも閉幕し、高校野球を見ていたときにふと思ったことがあります。それはロンドンオリンピックでなでしこジャパンのが決勝トーナメントで移動もなく有利な組合せになるよう佐々木監督が予選の最終戦で引き分け指示をしたことと、1992年夏の甲子園で当時高校野球の話題を独占していた星稜高校の松井秀喜選手に対して対戦相手の明徳義塾が行った四球指示(この時はキャッチャーがはじめから立ち上がっていなかったので故意四球、所謂敬遠にはならないそうでう)って似たような現象だと。
まず1992年夏の高校野球のお話。30代以降の方はご存知の方が多いと思いますが、これは明徳義塾が松井選手が打席に立った5打席すべてに四球を指示し、結果として星稜高校は敗退してしまいました。明徳義塾の監督は試合後、
松井への全打席敬遠は私が指示した。生徒達には『オレが全て責任取るから心配するな』と伝えた。本当はためらったのだが、こちらも高知県代表として初戦で負けるわけにはいきませんから。負けるための作戦を立てる監督は誰もいない、私は全てを読んだ。( wikipediaから引用)
というコメントを残しています。
そしてロンドンオリンピックのなでしこジャパンの南アフリカ戦後の会見では、佐々木監督が
スウェーデン対カナダの試合は派手な経過で、我々が戦っている中では(スウェーデン対カナダが)2-0でも2-1でも普通にやらせていた。岩渕の足の状態もあったので、(川澄を)早めに投入したが、川澄には『向こうが2-1なのでどうなるか分からない。申し訳ないけど、カットインしての素晴らしいシュートはやめてくれ』と指示した。(スウェーデン対カナダが)2-2になった瞬間は『全員でポゼッションしてくれ』と。宮間は次もあるし、疲労を考慮した。阪口と田中中心でボールを動かしてほしいと伝えた。(後半ロスタイムの)大儀見の投入は、くさびのところでボールを取られてカウンターを受けるとまずい。それに、何かあって点を取られたときに点を取り返す役目があると大儀見には伝えた。引き分け狙いという選手にはつらい思いをさせたかもしれない。過去にない指示どおりにやってくれた。(ゲキサカの記事から引用)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120801-01104667-gekisaka-socc
とコメントしています。
明徳義塾は「この試合を勝つため」、なでしこジャパンは「次の試合で勝つため」と事情は違いますが、それぞれが勝ちにこだわった指示をしています。
この結果、明徳義塾は次の試合で敗れ、なでしこジャパンは順調に勝ち進み銀メダルを獲得。そして明徳義塾は全国からバッシングを受け、なでしこは拍手喝采を受けることになります。ただおそらく明徳義塾が勝ち進み準優勝、あるいは優勝したとしてもバッシングを受けていたことでしょう。準優勝という結果を出し、「引き分け指示」の話題もあっさりとかき消されてしまいましたが、もし、なでしこが次戦で敗退していたら、佐々木監督もやり玉に上がっていたかもしれません。
なでしこジャパンの場合は、バドミントンの中国と韓国の選手が無気力試合を行ったのがほぼ同時だったため、引き分け狙いの指示が無気力試合と結びついたのと、川澄選手への「申し訳ないけど、カットインしての素晴らしいシュートはやめてくれ」という指示が、「引き分け狙いってどうなの?」と疑問を抱く人が多くなった原因だと思います。
明徳義塾の場合は、相手が松井秀喜だったからここまでことが大きくなってしまったのでしょう。もし、あまり有名でない選手へ5連続四球をしていたら、ニュースにはなるでしょうが、全国から非難を浴びることはなかったと思います。
そして一番大きな原因は、「オリンピック」と「高校野球」の試合だったからではないでしょうか。これがサッカーワールドカップであったり、ワールドベースボールクラシックであれば、ある程度仕方がない、戦略のうちといった意見ももっと増えてくるはずです。特に決勝トーナメントを有利に戦うために、引き分け狙いで行くなんて話はよくあることです。
オリンピックも高校野球も観戦している多くの人たちは、フェアで正々堂々とした試合を望んでいると思います。それは観戦している我々がイメージとしてオリンピックや高校野球に望んていることでもありますが、オリンピック憲章、日本学生野球憲章にも フェアプレーについて書かれています。
オリンピック憲章 オリンピズムの根本原則
4. スポーツを行うことは人権の一つである。すべての個人はいかなる種類の差別もなく、オリンピック精神によりスポーツを行う機会を与えられなければならず、それには、友情、連帯そしてフェアプレーの精神に基づく相互理解が求められる。
pdfが開きます(http://www.joc.or.jp/olympism/charter/pdf/olympiccharter2011.pdf)
日本学生野球憲章から抜粋
学生たることの自覚を基礎とし、学生たることを忘れてはわれらの学生野球は成り立ち得ない。勤勉と規律とはつねにわれらと共にあり、怠惰と放縦とに対しては不断に警戒されなければならない。元来野球はスポーツとしてそれ自身意昧と価値とを持つであろう。しかし学生野球としてはそれに止まらず試合を通じてフェアの精神を体得する事、幸運にも驕らず悲運にも屈せぬ明朗強靭な情意を涵養する事、いかなる艱難をも凌ぎうる強靭な身体を鍛練する事、これこそ実にわれらの野球を導く理念でなければならない
今回のなでしこと20年前の明徳義塾、それぞれルールには違反していませんが、なにかもやもやしているのはオリンピックと高校野球にはプロスポーツとは違った感動を求めているからなのかもしれません。
そしてロンドンパラリンピックもいよいよ29日に開幕します。また多くの日本代表が様々な勇姿を見せてくれるものと思います。ぜひオリンピックに負けないくらいの声援でパラリンピックも盛り上げていきましょう!
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