今回はこのタイトル、行ってみましょう。
【コンサルタントは「正解」を知らない】
「考え方ではなくて、やり方を教えて欲しかった」
「結局、何の書類を電子化したら良いかの話はなかった」
セミナーのアンケートで、このようなご意見を頂戴することがあります。私のセミナーで十分なご満足をいただけなかった、ということになってしまいます。私のお伝えの仕方が悪かったのだと悔やまれてなりませんが、とにかく次に生かすしかありません。この後も何度か会うコンサルティングであればまだ挽回の余地はあるのですが、セミナーである以上、この後修正することは非常に困難です。
私は「こうしてください」「これが正しい方法です」というのはあまり言わないというのが、こうしたご意見を頂く理由かと思います。いつもその理由を伝えようとするのですが、短い時間ではなかなか難しいのが現状です。
「書類量が少ない方がすぐに探せます。」とは言い切れますが、
「この書類はいらないので捨てて下さい」とは言えません。スペースを借り、人を割いてでも、捨てずに管理した方がいいものもあります。
そして、この判断ができるのは、唯一お客様本人だけなのです。
その情報にどれだけ価値があるか、私には分かりません。「使っていないのではありませんか」と聞くことはしますが、「捨てて下さい」とは言えません。
私が一番恐れるのは、「理由はよくわからないけど、ファイリングコンサルタントがこうやっていたから自分もしてます」みたいな状態になることです。これは自分不在です。真似しているだけで、理解していません。
理解するまでの過渡期として真似しているというのは構いませんが、わけもわからず同じことをしているというのは、効果が出ているのか、その効果は最大化されているのか、甚だ疑問です。
【理解することは自分を持つこと】
10のオフィスがあれば、正しいファイリングも10種類あります。そしてそのオフィス(の仕事の仕方)について最も理解しているのは、そのオフィスで働いている方々であり、コンサルタントではありません。
ですから、自分たちに最も適したファイリングを見つけ、育て上げていくには、「自分たちはこうなんだ、だからこうするんだ」という意志を持つことが不可欠です。その中で正解を導き出すためには、方法を聞けばいいのではなく、そこに至る考え方を身に付ける必要があります。それには、自分たちのワークフローを本当に理解することも必要なのです。
そこをショートカットして、「ファイリングコンサルタントがしている、目からウロコの整理術25」みたいな短絡的なことは、自分不在の人を生み出す可能性があります。これを完成品として取り込むだけでは本質的な改善にはなりません。仕事は常に変化します。自らも改善し、変化に対応しなければなりません。変化に柔軟に追従できるのは、方法ではなく考え方です。
自分の仕事を知り、それに対して最も最適な方法を導き出す考え方を持っていれば、どんな変化があっても変幻自在、自分で最適解を見つけていけるようになるでしょう。
私が「こうして下さい。これが正しい方法です。」と言わない理由はそこにあります。
「契約書に適したファイルは何ですか」
「キングファイルです」
「じゃ、それ使います」
これじゃぁ愛着もない。お客様にとっての本当に正解だったのかどうかも定かでない。何かうまくいかないことがあってもお客様自身で解決できない。
コンサルタントとして、
本質的な解決策を提供したとは言えません。
検索スピードの向上、書類量の削減、セキュリティの確保、情報の共有化、オフィス環境の向上...。
同じファイリングでも、お客様によって目的はそれぞれです。色々突き詰めていくと、紙ファイリングがアナログである以上、何もかもを満足させることはできないということに気づきます。
何を採って、何を捨てるか。
ここが、こだわりの見せ所です。お客様は仕事について熟知しています。私はファイリングのノウハウを持っています。お互いに高いものを求めていろんな意見やアイデアを出し合う質の高い時間。そこには確かに「自分」が存在しています。その結果、複数の条件を高い次元で満たす、すごい方法を見つけた時は本当に楽しい。
そして、そういうプロセスの中でお客様の中にファイリングの「考え方」が確立していきます。言ってみれば、こうしたプロセスから生まれた方法こそが「正しいやり方」でなのではないでしょうか。自分たちが確立した考え方から導き出された方法だからこそ、愛着があり、守ろうという気になる。次に新たな問題が起きても、自分たちで解決できる。
この一線を越えた方は、ファイリングは(他のいろんなことにも言えると思いますが)テクニックではなく考え方だ、良いか悪いかの最終判断ができる「自分」が必要だ、という気概というか自立心というか、そういう心構えができています。
この段階になれば、私の持っているたくさんの事例やノウハウをお伝えしたとき、お客様の求める効果を最大化させるための触媒としてお使いいただけると思います。これがテクニックやノウハウの最も理想的な使われ方だと、私は思います。