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組織トップの失言によるモチベーションの低下
誠ブログのかんりにんの気づき ― あんなこと、こんなこと。
組織トップの失言によるモチベーションの低下
誠ブログの管理人。サイトの運営に日々、試行錯誤を繰り返しながらも、ガンバるビジネス・パーソンを応援します!
今回は、いつものかんりにんブログではなく、最近思ったことを......。
私はプロフィールページにも書いているとおり、フィギュアスケートを観るのが大好き。小学生のころ親戚の家に遊びに行ったとき、テレビで試合が放送されていたのを覚えている。どこの選手か、どんな試合だったのかまでは覚えていないが、すごい速さでくるくると回るスピンやジャンプにすっかり魅了され、画面に釘付けになった。それから数えると、ファン歴はもう30年以上になる。
日本代表の選手だけでなく、そんな私にとっても五輪は特別。テレビで放送するグランプリシリーズや全日本選手権、世界選手権などでは見られない国の選手も参加しているからだ。五輪前の試合でも、どの選手がどういう演技構成で......などのチェックも欠かさなかった。それだけ、ソチ五輪の試合に期待していた。
冒頭から長々と書いたが、私がどれだけモチベーションが上がっていたかということを少しでも知ってもらうためなので、そこはご理解いただければと思う。
●そんなこと言っちゃっていいの!? 組織トップの失言が相次ぐ
ことの始まりは、2月18日、女子フィギュアスケート・ショートプログラム(SP)の試合開始前。国際オリンピック委員会(IOC)委員で、国際スケート連盟(ISU)の会長でもあるオッタビオ・チンクアンタ氏の発言が波紋を呼んだ。
「ヨナでなければ誰が金メダルを取るのか? 金メダルはヨナだと確信する。賭けるか?」
(中央日報日本語版 2014年02月18日14時27分)
競技を運営する組織の代表でもある氏の発言は、選手の闘志のみならず、ファンの観戦意欲をも喪失させた。特に、フィギュアスケートは採点競技。スキージャンプやスピードスケートのようにタイムや距離を測定するのではなく、審判が技のレベルや出来ばえ(GOE)によって点数を付ける。これでもし"特定の選手に有利な点"が出たとしたら、
「あぁ、やっぱり、審判に会長の"息"がかかってるんだ」
「やる前から結果出てるじゃん!」
「ソルトレイクシティの件があって採点方式変えても、結局、変わらないんだね」
などという目で見てしまう。いや、見えてしまうのだ。
そんな最低最悪のモチベーションで、4年越しで楽しみにしていた五輪のフィギュア観戦がスタートした。長い間、フィギュアを観続けてきた中でも、これほど冷ややかに観た試合はなかった。待ち望んでいた競技が始まったことの嬉しさよりも、とにかく残念な気持ちでいっぱいだった。
さらに追い打ちをかけるようなことが起こった。2月20日、2020年の東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森元首相は福岡市の講演でこう述べたという。
五輪が終わった今でもこの話題がメディアやネットをにぎわせている。これについては、講演での一部分だけがクローズアップされたことで「誤解を生んでいる」「真意が伝わらなかった」という見方もあるが、冬季、夏季問わず、五輪に携わる組織のトップにいる立場であれば、そもそも誤解されることのないように発言には十分注意すべきだと思う。「反省している」との報道もあるが、これが世間の反感を買い、氏への信頼を失う材料の1つになったことは否めないだろう。
●身近なことに置き換えて考えてみた
例えば、社内コンペで企画を出すとき、たまたま同じエレベータで居合わせた社長が、
「僕は、今回のコンペは○○君の企画が一番だと思うんだよね、どう?」
などと、経営層と話していたらどうだろう。企画書を出してこれからプレゼンしようというときに......だ。もしそれを聞いてしまったら「もう結果が出ていて○○君に決まっているなら、やるだけムダじゃないか」と思い、やる気も失せてしまう。
あるいは、同僚が出張先などで大きな失敗をしてしまったとする。そのときに
「あいつはホント、肝心なときにダメなんだよな~。アイツを行かせるんじゃなかった」
などと、軽々しく社員の前で言うような経営者だったらどうだろうか。とてもじゃないけど、私ならそんな上司は信頼も信用もできない。仕事へのモチベーションは下がりまくりだ。
社長や経営層だけではない。部長や課長でも、その部やチームを取り締まる立場の人も同じこと。部下のモチベーションを上げることも大事だが、それを下げることのないように発言や行動に気を配るのも、その人に与えられた大切な役割だと思う。
2月23日、ソチ冬季五輪は閉幕した。ソチと日本の時差は5時間で、競技によっては深夜の放送となり、寝不足と戦いながら応援した。今回の五輪で日本が獲得したメダルは合計8個。冬季五輪では長野に次いで2番目の多さとなった。
メダルを獲得した選手にはもちろんのこと、惜しくもそれに手が届かなかった選手にもおしみない賛辞を呈したい。特に、浅田真央選手の"歴史に残る"とも言える会心の演技によって、表彰台には乗れなかったが、たくさんの人がそれに感動し勇気を与えてもらえたと思う。
ありがとう。
ソチ冬季パラリンピックは3月7日に開幕する。ここでも日本人選手の活躍を期待せずにはいられない。