誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

知識を構造化しよう-抽象化力、磨いてますか?

知識を構造化しよう-抽象化力、磨いてますか?

開米 瑞浩

社会人の文書化能力の向上をテーマとして企業研修を行っています。複雑な情報からカギとなる構造を見抜いてわかりやすく表現するプロフェッショナル。

当ブログ「開米のリアリスト思考室」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/kaimai_mizuhiro/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 前回(「知識を構造化しよう-実際の場面をイメージしてみる)までで、知識を構造化するためにまずは「順番が適切かどうかを考える」ことが有効だと書きました。しかし、「順番」だけで終わりではありません。まだやれることはあります。その1つが「抽象化」です。

 「抽象的な話」は何かと嫌われますが、それは「抽象的=分かりにくい」という先入観があるからです。実際には、抽象化することによってわかりやすくなる場合は極めて多いので、「抽象化をする力」を磨いておくことは非常に重要です。

 ということでひとつの例を出しましょう。以下のAグループとBグループにそれぞれ名前をつけるとしたら、どんな名前をつけますか?

<Aグループ>
  ダックスフント
  イングリッシュ・グレイハウンド
  ダルメシアン

< Bグループ>
  スフィンクス
  マンクス
  アメリカンショートヘア

 Aグループの3つはどれも有名な犬種ですね。ですからAグループには「犬」と名前をつけてよさそうです。
 「抽象化」というのはこんなふうに、「複数の要素に共通する性質を見つけて分類し、分類に名前をつける」ことです。


 ただそれだけのことなのですが、これを意識的にやっているかいないかで、情報の伝わりやすさが格段に違ってくることがあります。
 実際、おなじみの「食中毒予防のポイント」の話を例にとって見てみましょう。するとたとえばこんな抽象化をすることができます。




 要は「チェックポイント」に並んでいる個別の項目を「食材調達」「調理」食事」「残り物保管」の4種類に分類したわけです。これが「抽象化」ですね。
 抽象化をしておくと、「先生」から生徒へたとえばこんな質問をすることができます。

    先生:調理をするときに気をつけなきゃいけないことは何?
    生徒:きちんと火を通すこと、それから・・・・
    先生:たとえば「まな板」は?
    生徒:あ、きれいに洗っておく
    先生:それは使った後? 使う前?
    生徒:使った後すぐ
    先生:じゃあ、使う前は?
    生徒:清潔であることを確認して使う、ですね
    先生:そう、そういうこと、OK!


 要は、「抽象化」しておくと、その「抽象的な言葉で質問して、具体的な内容を答えさせる」というワークができます。具体的な個別項目だけを教えて「これ全部覚えておけ!」とするよりも、抽象と具体の間を行ったり来たりして考えさせるほうがずっとよく記憶に残り、理解が進むので、「教える」ためには「抽象化」が非常に大事なんですね。

 なお、「抽象化」のメリットはもう2つあります。それは、

    抽象化をしようとすると、自分の知識不足に気がつきやすい
    抽象化をしようとすると、自分の意図を明確にすることを求められる


 の2点です。
 今回書かなかったBグループ、「スフィンクス」「マンクス」「アメリカンショートヘア」を例にして、次回この2点の話を続けます。

 (続く)

 
【宣伝】
誠Biz.ID 連載「研修に行ってこい!」 および、誠ブログ「ひといくNow! ~人材育成の今とこれから~」 でもおなじみの Six Stars Consulting (株) 様主催、私、開米瑞浩が講師で、「職場で教える力を高める」ことをテーマとするセミナーを開催します。

開催日時:6月22日10:00~17:00 会場:大手町((株)アイティメディア内会議室)
「職場で教える力を高める 専門知識、技術を若手社員に教えるコツ」
→詳細ご案内ページ http://www.six-stars.jp/seminar/skillup_specialty.html 

職場の技術継承に悩める先輩社員、人材育成担当の方、ぜひご来場ください。