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専門家ではないからこそ、素人に通じる説明の方法がわかることがある
»2011年11月 8日
開米のリアリスト思考室
専門家ではないからこそ、素人に通じる説明の方法がわかることがある
社会人の文書化能力の向上をテーマとして企業研修を行っています。複雑な情報からカギとなる構造を見抜いてわかりやすく表現するプロフェッショナル。
当ブログ「開米のリアリスト思考室」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/kaimai_mizuhiro/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
今日は私の本業のほうの話題で、
という話をしてみましょう。
私が引き受けている企業研修テーマのひとつに、「難解な説明書持ち寄り改善ワークショップ」というものがあります。これは文字通り
というものです。わかりやすく書く練習になると同時に、実際に業務で使っていて不便を感じている「わかりにくい説明書」を改善できることから、2008年以来継続的に受注があるものなのですが、このワークショップをやっていていつも思うのがこのことなんですね。
■「専門家」になってしまうと、「素人には何が分からないか」が分からなくなる
「説明書」にもいろいろあって、指示通りにやれば済む単純な手順を説明しているだけのものもあれば、理論を理解して自分で応用できるようになることを目的とするものもあります。特に後者の「理論を踏まえた解説」系の説明書が「わかりにくくなってしまう」原因の1つが、「書き手である専門家氏と、読者である素人氏の知識ギャップが大きすぎる」こと。
要は、「専門家になってしまうと、素人には何が分からないかが分からなくなってしまう」というのが問題です。
どんな分野であれ、その世界の「専門家」と「素人」の知識レベルの差は莫大なものがあります(厳密には、知識+経験の差ですが)。
もちろん、「専門家」も初めは素人ですから一歩ずつ勉強を積み重ねてきて専門家になっているわけですが、残念ながら10年も前の「自分が素人時代」の勉強で何につまずいたか、こと細かに覚えていてそれに対応できる人はなかなかいません。そのため、素人が引っかかりそうなところに気を配った説明ができなくなってしまうんですね。
たとえば「専門家」氏が、「素人」氏に勉強してもらうための説明書を書くとしましょう。
仮に1日かけて勉強してもらうための説明書だとすると、
素人氏の現時点での理解度レベル 1
素人氏に到達して欲しい理解度レベル 2
書き手の専門家氏の理解度レベル 1000
ぐらいの差は当たり前にあるのが普通です。
これだけ差があると、理解度1000に達してしまった人には「1と2の間にどんな落とし穴があってどう説明すれば通じるのか」がなかなかわかりません。
それがわかるのは、「専門家ではない人」のほうなんです。
理解度1を2にするためには、いくつか超えなければいけないハードルがあります。
「1」と「2」の具体的なイメージを描くこと
「1」を「2」にするために必要な学習時間を見積もること
「1」と「2」の間にどんな「理解の難所」があるかを見きわめること
その難所をクリアするための適切な説明を考えること
実はこれらのハードルを「専門家」だけでクリアするのは難しいわけです。理由は前述の通り、「知識ギャップが大きすぎるから」です。
ではどうすればいいのか? 理想的なのは、
です。理解度レベル10では素人に毛が生えた程度ですが、だからこそ「1」の人がどこでつまずくか、1日でどのレベルまでなら到達できるかがわかります。
そんなわけで私は「難解な説明書持ち寄り改善ワークショップ」では「10」の人の役割を果たしています。それぞれの専門分野について熟知しているわけではありませんが、熟知している専門家が素人向けに話をするときには役に立つ、というそんな役回りなわけです。
もちろんこの役割は単に「理解度レベル10」ならできるというものではありませんが、少なくとも「1を2にするための説明方法を考える」上では、「10ぐらいの人間の出番がある」のでした。
専門家ではないからこそ、素人に通じる説明の方法がわかることがある
という話をしてみましょう。
私が引き受けている企業研修テーマのひとつに、「難解な説明書持ち寄り改善ワークショップ」というものがあります。これは文字通り
自社で使っているけれどわかりにくくて困っている、
という説明書を持ち寄ってみんなで改善案を考える
というものです。わかりやすく書く練習になると同時に、実際に業務で使っていて不便を感じている「わかりにくい説明書」を改善できることから、2008年以来継続的に受注があるものなのですが、このワークショップをやっていていつも思うのがこのことなんですね。
■「専門家」になってしまうと、「素人には何が分からないか」が分からなくなる
「説明書」にもいろいろあって、指示通りにやれば済む単純な手順を説明しているだけのものもあれば、理論を理解して自分で応用できるようになることを目的とするものもあります。特に後者の「理論を踏まえた解説」系の説明書が「わかりにくくなってしまう」原因の1つが、「書き手である専門家氏と、読者である素人氏の知識ギャップが大きすぎる」こと。
要は、「専門家になってしまうと、素人には何が分からないかが分からなくなってしまう」というのが問題です。
どんな分野であれ、その世界の「専門家」と「素人」の知識レベルの差は莫大なものがあります(厳密には、知識+経験の差ですが)。
もちろん、「専門家」も初めは素人ですから一歩ずつ勉強を積み重ねてきて専門家になっているわけですが、残念ながら10年も前の「自分が素人時代」の勉強で何につまずいたか、こと細かに覚えていてそれに対応できる人はなかなかいません。そのため、素人が引っかかりそうなところに気を配った説明ができなくなってしまうんですね。
たとえば「専門家」氏が、「素人」氏に勉強してもらうための説明書を書くとしましょう。
仮に1日かけて勉強してもらうための説明書だとすると、
素人氏の現時点での理解度レベル 1
素人氏に到達して欲しい理解度レベル 2
書き手の専門家氏の理解度レベル 1000
ぐらいの差は当たり前にあるのが普通です。
これだけ差があると、理解度1000に達してしまった人には「1と2の間にどんな落とし穴があってどう説明すれば通じるのか」がなかなかわかりません。
それがわかるのは、「専門家ではない人」のほうなんです。
理解度1を2にするためには、いくつか超えなければいけないハードルがあります。
「1」と「2」の具体的なイメージを描くこと
「1」を「2」にするために必要な学習時間を見積もること
「1」と「2」の間にどんな「理解の難所」があるかを見きわめること
その難所をクリアするための適切な説明を考えること
実はこれらのハードルを「専門家」だけでクリアするのは難しいわけです。理由は前述の通り、「知識ギャップが大きすぎるから」です。
ではどうすればいいのか? 理想的なのは、
理解度レベル「1000」の人と「10」の人がタッグを組んで、
1の人のための説明書を書くこと
です。理解度レベル10では素人に毛が生えた程度ですが、だからこそ「1」の人がどこでつまずくか、1日でどのレベルまでなら到達できるかがわかります。
そんなわけで私は「難解な説明書持ち寄り改善ワークショップ」では「10」の人の役割を果たしています。それぞれの専門分野について熟知しているわけではありませんが、熟知している専門家が素人向けに話をするときには役に立つ、というそんな役回りなわけです。
もちろんこの役割は単に「理解度レベル10」ならできるというものではありませんが、少なくとも「1を2にするための説明方法を考える」上では、「10ぐらいの人間の出番がある」のでした。