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原子力論考(70)もはや「不安」しか批判の材料に出来なくなっていることについて

原子力論考(70)もはや「不安」しか批判の材料に出来なくなっていることについて

開米 瑞浩

社会人の文書化能力の向上をテーマとして企業研修を行っています。複雑な情報からカギとなる構造を見抜いてわかりやすく表現するプロフェッショナル。

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 9月3日の毎日新聞社説ですが、

"社説:甲状腺検査 丁寧で科学的な説明を- 毎日jp(毎日新聞)"
http://mainichi.jp/opinion/news/20120903k0000m070113000c.html

要点を書くと

 (a) 今年3月末までに18歳以下の福島県民3万8000人に甲状腺検査を行った
 (b) その結果、3割強の人に結節や嚢胞が見つかり、186人が二次検査の対象となった
 (c) 大多数は問題がないと判断された
 (d) しかし県民は不安に思っている
 (e) 行政はより丁寧で科学的な説明をするべきである

 というものです。

 この社説から分かるのは、「検査結果は、異常な兆候を示していない」ということ。

 毎日新聞はこの社説を書くに当たって専門医のコメントを取ろうとしたはずです。もしそれで「これは異常だ」と答える専門医が一人でもいたら明確にそう書いたことでしょう。「検査結果は明らかに原発事故の影響を示している。重大な事態だ!!」・・・・と書いたはずなんですよ。
 ところが実際には「県民の不安」しか書いていません。
 これは、つまりそれぐらいしか書く材料がなかった、ということを意味しています。

 実際、「書いてあること」よりも「書かれていないこと」のほうに意味がある、というケースはよくあります。人は都合が悪いことにはダンマリ無視を決め込もうとするからです。受験では「書いてあること」を読み解く問題が主流ですが、ビジネス現場ではそれに加えて「何が書かれていないのか」を見抜く能力が重要なので、これから社会人になる学生さんには特にこれは意識しておいて欲しいですね。


 何にせよ、福島県民の甲状腺検査では異常なし。これ自体は1年も前から予想されていたとおり、順当な結果でした。そのことは、素直に喜んでおこうじゃないですか。

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