誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

コンビニ本部が契約解除をおこなう時

コンビニ本部が契約解除をおこなう時

川乃 もりや

とあるところで、とあるコンビニのオーナーをしている、「川乃 もりや」です。事情により、匿名です。とあるコンビニの元社員が仕事や感じたことを、時にはコンビニの内情のあれこれをブログにしちゃいます。みなさんお付き合い下さい。

当ブログ「とあるコンビニオーナーの経営談議」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/kawarimonoya/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 某所のとあるコンビニチェーン店舗にスゴイ張り紙がしてあると、聞いた。コンビニ本部と加盟店側でトラブルになり、商品の供給、店舗システムの使用が止められたようだ。
 詳細は分からないが、本部側からによる契約解除がおこなわれたことは間違いない。

 本部と店舗の間に何があったかは想像するしかないが、筆者が本部社員だった時にあった契約解除について、本日は書いてみよう。

 まず、本部側からによる契約解除は、どのような時におこなわれるのでしょう。ざっくりと言えば"フランチャイズ契約"に反した場合なのだが、余程のことがない限り本部側も今回のような強行手段に出ることはない。そこで"余程"とはどんな内容だろう。

 筆者の経験上から一番最初に思い浮かべるのは、売上未送金問題だ。
 過去にも書いたことがあるが、売上を送金せずに懐へ入れてしまう経営者が時々いる。店舗の売上は、都度本部へ送金される。送金された売上は、商品代金や光熱費などの経理関係の支払いを一通りおこなった後、利益が経営者の口座へ振り込まれるのだ。当然、この時点で、ロイヤリティと言う名のピンハネがおこなわれる。
 売上送金をしない経営者の多くは、ロイヤリティが払いたくないとかではない。単に日々の生活に窮した人達がほとんどである。
 まず、一日の売上を送金せずに、借金の返済に回す。1、2日くらいなら、銀行送金のタイムラグで誤魔化せる場合が多い。しかし、多くの場合は1、2日で終わらない。なんせその時点で経営者の家計は自転車操業となっているからだ。クレジットカードの返済をクレジットカードで支払っているようなものだ。いずれ破綻することは目に見えている。
 そこで、本部の対応として、通常の解約を求める。1日2日の売上なら、残商品を売った金で回収が可能であるからだ。筆者も数店経験があるが、解約が決定した段階で、日々の精算業務をやらされたもんだ。なんせ放っておいたら売上が送金されないからね。
 この時点では、商品の供給が止まったりはしない。あくまでも通常の閉店といったところだろう。
 ところが、コチラのチェックをかい潜る強者もいる。銀行長期休暇を狙って売上を持って行ってしまう場合がある。ゴールデンウィークや年末年始だ。
 今は無いが、高速道路のプリペイドカードを大量に仕入て、それを換金することで金に変える強者もいた。その場合、定期的におこなわれる商品棚卸の結果が出るまで判明しないことが多い。筆者の経験では換金性の高い商品で一度に900万円の負債が発生したことがあった。
 このような緊急に経営者と店舗を切り離したい場合は、緊急閉店もあるが稀有な事例だ。

 数店舗未送金店舗を担当したことのある筆者だが、突然の契約解除をおこなった経験は無い。聞いた話では、経営者が借金をした相手が、店の商品を持っていく可能性が出てきた時に、緊急で閉店をし、商品確保した事例があると、先輩から聞いたことがあるくらいだ。店舗の商品を直営店舗で販売し金に変えるためだ。

 もう一つ契約解除が過激な方法でおこなわれる可能性があるのは、商品を勝手に仕入れて勝手に販売する場合だ。

 店舗独自の商品を売ることは可能だが、フランチャイズシステムに乗せず販売するのは禁止されている。例えば、薬の販売資格を経営者が持っているとする。薬を本部の仕入れシステムに入れずに勝手に仕入れて、勝手に販売するといった場合だ。法律的には何の問題もないが、ピンハネが出来ない本部からしてみれば、「ウチの看板で集客して商売してんのに分前寄こさねぇとは不届き千万」といったことだろう。
 建前上はチェーンとして信頼ある商品を取り扱いできなくなることを避けるためだ。変な商品を売った場合、同一チェーンの他店舗へ迷惑をかける可能性があるからね。

 あとは、経営者が犯罪者になった場合。これは、経営者所有の物件でない限り、店舗自体が無くのではなく、経営者が居なくなるパターンだ。地域での噂を避けるために、一定期間閉店する形を取る場合が多い。所属チェーンではなかったが、人身事故を起こした経営者の店が、半年そのまま放置され、その後再オープンした事例を目撃したことがある。

 最初に書いた店舗は裁判をするとのことなので、店舗としても余程の事由があると推測するが、本部側もシステム撤去、商品供給ストップまでおこなう以上、裁判での勝算があるのだろう。フランチャイズ契約書は良かれ悪かれ、隙のない契約書になっているものだ。

 コンビニなんて搾取されるだけでしょなんて言われているが、ある意味気楽な商売をすることも可能だ。本来ならすべて自分でやらなくてはならない作業を本部がやってくれるのだから、加盟者はもっと本部を使いっ走りにする方法を模索した方が良いと筆者は考える。