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店を開けてはいけない恐怖の物件

店を開けてはいけない恐怖の物件

川乃 もりや

とあるところで、とあるコンビニのオーナーをしている、「川乃 もりや」です。事情により、匿名です。とあるコンビニの元社員が仕事や感じたことを、時にはコンビニの内情のあれこれをブログにしちゃいます。みなさんお付き合い下さい。

当ブログ「とあるコンビニオーナーの経営談議」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/kawarimonoya/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 店舗開発の専門家では無いので軽はずみなことは言えないが、100店以上のオープンを見てきた為、勘みたいなモノは持っている。「この店は売れそうだ」とか「これってヤバくない?」とかだ。
 「勘」と言ったが、第六感と言うわけでもない。周りの環境などを見ると経験則で判断をしているといった感じだ。しかし、最初にも書いた通り専門的に店舗開発の業務を行なったことはないので、根拠があるわけでは無い。

 そんな筆者の経験で、絶対に手を出してはいけない物件の法則を持っているのでご紹介しておこう。ちなみに都心では経験が全く無いので参考にはならないでしょう。ベットタウン、地方都市では比較的参考になると思います。

◯駅前はヤメておけ
 駅前と言えば人も集まり一見よさそうにだが、コンビニでは問題がある。まず、客単価が安い。安いということは客数が多くなければ売上が稼げないということだ。都心ではこの客数が膨大な為、駅前でも商売が可能だが、地方都市などは駅前が廃れてきている場所もある。車社会の地方都市において、駅前だからと駐車場の無い都心型店舗など最悪と言わざるを得ない。
※同じ駅前でも出勤動線(駅に向かう左側)は、比較的単価が安くなるので、同じ駅からの道でも一番避けなければならない動線だ。

◯学校の近くはヤメておけ
 単価の安い立地としては、学校近くも挙げられる。学生はやはり資金力に乏しいので、どうしても客単価が安くなりがちだ。余程の住宅が隣接していない限り避けておいたほうがいいだろう。もう一つの理由として犯罪行為をある程度予見する必要がある。俗に言う「万引き」だ。残念ながら、この話は避けては通れない。全部の学校に当てはまらないと思いたいが、私の経験では単純な住宅立地と商品ロス率は学校近くの方が多くなる。

◯国道沿いはヤメておけ
 コレには条件が加わる。「片道2車線以上の道であること」「中央分離帯があること」特に中央分離帯が条件として加わる場合は避けた方がいいだろう。
 片道2車線あるということは通行量は多いが、それだけ車のスピードも早くなる。運転している人なら分かるだろうが、スピードに乗っている道から外れることはあまりしないだろう。また、片道2車線以上だと信号や交差点がのある場所でないと、反対車線から右折してくることは無い。最悪なのは中央分離帯である。事実上、片道分しか入店してこない。
 道路で注意すべき点は、交差点の位置というものがある。しかし、これは周りの住宅環境等が大きく影響するので、どこが一番とは言い切れない部分がある。通常は主要道路の受け(進行方向、交差点を渡ったところ)が良いとされているが、渋滞ゾーンなどでは手前の方が良い場合もある為、ココでは詳しい記述は避けておく(またの機会に)

◯何かが潰れた跡地はヤメておけ
 これは、コンビニだけでは無いと思われる。店が潰れるというのは様々な事情があるだろうが、チェーン店舗が潰れる理由はただ一つだ「利益にならない」。例えばコンビニで言えば、個のオーナーが辞めたとしても立地的に問題がなければ、後任のオーナーが付く。付くまでは直営形式で存続することは間違いない。利益が出ている立地で店を閉めるという行為はあり得ないのだ。

 先日、近所のファミレスが潰れた跡地に、チェーン展開しているラーメン屋がオープンした。「◯◯ラーメン屋が開いたのかぁ。今度行ってみよう」と、価格の安いラーメンチェーン店オープンに家族と喜んでいたのだが、幾度か通るうちに「早く行かないとヤバイな」と考え始めた。
 いつもガラガラなのだ。20台以上分はあろうかという駐車場にある車は、いつ見ても3、4台。筆者が通る時間は、昼の12時前後と夕方6時前後、あとは夜11時頃が多い。夜の11時に3、4台と言うならまだしも、昼間や夕方の飲食店ピーク時間帯にも関わらず混んでいない。ハッキリ言ってヤバイ。そこのチェーンがフランチャイズ形式なのかは分からないが、FC契約を組んでたらトラブルとなっていること間違い無しだ。

 では、その店舗の立地はどうなっているのか。
 大きな国道沿いで片道2車線だ。中央分離帯は無いが、上り下り共にいつも交通量は多い。実質、片道だけの商売となっている。しかも、飲食店のピーク時間はいつも渋滞している道だ。渋滞から道を外れるという行為は意外に慎重になるものだ。多くの人は「渋滞を抜けてから飯にしよう」と、考えるだろう。
 ピーク時間外は、逆にある程度スピードが出てしまう広い道の為に、知らない人は通り過ぎてしまうのだ。
 飲食店やコンビニは、常連さんも大切だが、多くの一見さんに支えられている。この一見さんを逃すと売上は大きく下がるのだ。

 何より、そのチェーンが考えなくてはならなかったのは「一度飲食店が潰れていた場所」ということだ。皆さんも見たことはないだろうか「あそこの場所ってコロコロ店の看板が変わるよね」そんな場所を。
 何かに取り憑かれているわけでは無い。
 手前100mに別のファミリーレストランが有る為、ラーメン屋はこう考えたのだろう。「ファミリーレストラン同士だから勝負に負けたんだろうね」と、しかし、そのラーメン屋の建った場所は、入り口が狭いのだ。書いた通り、交通量が多く、ある程度のスピードが出てしまう為に、車が曲がり切れない。
 では「入り口拡げたら?」と、思われるだろうが、色々と法律が絡んでおいそれとは拡げられない。過去のファミリーレストランもその為に潰れたと私は考えている。
 
 そんな飲食店から飲食店、コンビニからコンビニと看板を次から次へと変えていく物件が沢山ある。多くが交通量とロケーションに恵まれているのだ。そんな一見好物件の割りに賃料が安かったりしたら、どうなるだろう。
 これから、コンビニを始めようとしている方は、見た目の交通量やロケーションに騙されないで欲しい。それはひょっとしたら恐怖の物件かも知れないのだから。