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格安SIM 購入報告(その2) ~格安SIMのメリット・デメリット
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格安SIM 購入報告(その2) ~格安SIMのメリット・デメリット
フリーランスのライター、IT先端技術コンサルタント。モバイルやクラウドを駆使するスマートワーク研究をライフワークとしている。
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携帯電話の2年縛りの契約が更新月をむかえるのを機会に、最近話題の「格安SIM」に乗り換えた。今回はその報告2回目である。
●前回の振り返り
1回めの記事では、auのiPhone 5sの見積もりとの比較で、格安SIMがいかに費用を節約できるのかをご紹介した。
7月の段階での見積だが、auショップで、iPhone 4SをiPhone 5sに機種変更すると、2年間で 203,232円の費用がかかる。(ただし、通話はほとんどしないとして、計算に入れていない。)
これに対し、SIMロックフリーのiPhone 5sと格安SIM 「IIJ みおふぉん」の組み合わせであれば、2年間で 112,512円となり、約45%も安くなる計算となった。
写真 IIJ 「みおふぉん」のビックカメラ版 「BIC SIM」
さらに、iPhoneをAndroidスマートフォン HUAWEIのAscend G6に変更し試算すると、同じく2年間で 74,512円と、最初の見積の約1/3になったのである。
写真 HUAWEI Ascend G6
●格安SIMのメリット
格安SIMのメリットは料金だけではない。あらためて格安SIMについて考えてみよう。
そもそも、SIMカードは、携帯電話会社との契約情報が書き込まれた小さなカードで、携帯電話機の中に装着して利用する。携帯電話機は起動時にSIMカードの内容を読み込み、利用者が契約中の携帯電話会社の電波を拾ってネットワークに接続する仕組みだ。
ガラパゴスと言われた日本の携帯電話でも、3G時代からNTTドコモやソフトバンクの携帯電話機はSIMカードに対応するようになり、LTE時代になりauも含め、前事業者がSIMカード対応になったが、ご存じのように、自社の携帯電話に装着するSIMカードは、自社の電話機でしか利用できないようにロックがかかっているのが一般的だ。これが「SIMロック」である。
SIMロックをすることで、SIMロックフリーの場合と比べ、携帯電話本体を安く提供できるというのが、携帯電話会社の言い分である。しかし、格安SIMを提供する各社の努力により、大手携帯電話会社のサービス料金よりも低価格の料金プランが登場しており、話題となっているのだ。
大手携帯電話会社に代わって、独自の料金プランでSIMカードを販売する事業者を「MVNO(Mobile Virtual Network Operator,仮想移動体通信事業者)」と呼ぶ。大手携帯電話会社はMNO(Mobile Network Operator,移動体通信事業者)とも呼ばれ、携帯電話用の無線通信ネットワークインフラを持っている。一方、MVNOは、MNOのインフラを借りて独自の料金体系でサービスを提供する会社である。現状では、NTTドコモのインフラを借りて運営するMVNOが多く、「IIJみおふぉん」もその一例である。
写真 SIMカード
IIJみおふぉんのSIMカード。(上段左)
NTTドコモのロゴが入ったクレジットカードサイズの
基板(下段)から、SIMの部分を切り取って、
端末に装着して使う。
SIMカードには3種類の大きさがあり、
今回はAscend G6の仕様に合わせ
「マイクロSIM」を選択。
マイクロSDカード(上段右)と並べてみたので
大きさを比較してほしい。
格安SIMの利用には、もちろん、SIMロックフリーの携帯電話機が必要だ。前回記事で紹介したように、AppleストアがiPhoneのSIMロックフリー版、そして、Google Nexusシリーズや、HUAWEI Ascend G6など、国内で手に入る機種も徐々に増えてきている。
また、NTTドコモユーザなら機種にもよるが、ドコモショップで依頼すれば、手数料3000円でSIMロックを解除してくれる。契約プランによっては解約を含めて検討してみても良いかもしれない。
link: SIMロック解除の手続き(NTTドコモ)
https://www.nttdocomo.co.jp/support/procedure/simcard/unlock_dcm/
海外で販売されている機種が日本で使えるかどうか調べる多少の知識が必要にはなるが、SIMロックフリーのスマートフォンを、簡単な手続きで購入(もしくは個人輸入)できるインターネットショップもいくつかあり、これらを利用するのもお薦めである。
link: 電脳中心買物隊 in 香港
http://www.kaimonotai.com/
link: Expansys.jp
http://www.expansys.jp/
それでは、料金以外の格安SIMのメリットをいくつか書きだしてみよう。
格安SIMのメリット 1. SIMロックフリーの端末との自由な組み合わせが可能。
端末を買い換えた(買い足した)からといって、SIMカードの契約には全く影響がない。差し替えるだけでそのまま利用可能だ。SIMカード1契約なのに、その日の気分に応じて持ち歩く端末を変えるなどという使い方も可能だ。
ただし実際には、現状まだまだ環境が整っておらず、海外で売られているスマートフォンでも、国内で利用できるはずの格安SIMカードが動作しない機種や、機能制限のある機種があるので、事前の調査確認が必要である。
格安SIMのメリット 2.いわゆる「2年縛り」のないSIMカードがあり、いつでも解約可能。もしくは、解約金の類があっても安価。
今回、筆者が購入したIIJのSIMカードでいえば、データ通信のみプランであればいつでも違約金の類なしに解約可能である。ただし、音声通話機能を含む場合、契約後1年間の間、利用開始からの月数に応じて「音声通話機能解除調定金」を支払うことになっている。「音声通話機能解除調定金」の算出方法は以下の通り:
(12ヵ月-利用開始月を0ヵ月とした利用月数)×1,080円
すなわち、利用開始月に即解約した場合では12960円、11ヶ月目の場合は1080円である。
大手携帯電話会社の契約解除料は、更新月以外、利用月数にかかわらず1万円前後となる場合が多いので、それに比べれば割安である。
格安SIMのメリット 3. 契約内容がシンプル。あとで解約しなければならないような、抱き合わせキャンペーンがない。
大手の携帯電話会社は、競争の激化から、数々の抱き合わせキャンペーンを企画し、キャッシュバックの条件などを規定している。必要のない抱き合わせオプションを条件に契約させられることもしばしばある。
確かにキャッシュバックキャンペーンは魅力的に見えるが、そもそも、それを利用しても格安SIMの方が安い場合が多いので、前回の試算を参考に賢く吟味したい。
また、格安SIMの方が契約がシンプルで、必要のないオプションの契約を強いられるようなことはない。
●格安SIMのデメリット
逆に、格安であるから、通信速度には制限があり、また機能が削られている部分がある。たとえばIIJ みおふぉんの場合、以下の通り:
格安SIMのデメリット 1. 通信速度の制限
IIJ みおふぉんのミニマムスタートプランでは、データ1GB/月まで下りmax 150Mbpsでの通信が可能だが、データ量がこれを超えると200kbpsに速度が制限される仕様だ。
ただし、データ1GB/月までの間では、max 150MBのLTE高速接続と200kbpsの低速接続を端末から自由に切り替えることができるし、Wi-Fiと併用することにより、1GBの制限でも多くの場合十分間に合うように思う。実際に、低速接続時でもFacebookやLINE、メール等を使う上では、遅くても特に待たされる印象はない。
格安SIMのデメリット 2. 留守番電話機能が利用できない場合がある。
IIJ みおふぉんの場合、音声通話ができるが、残念ながら留守番電話機能が削られていて利用できない。オプションかつ有料で良いので、対応を望みたいところだ。
(他社のIP電話システムと連携させることで、留守番電話機能を実現することは可能だ。筆者が設定している方法は後述する。)
格安SIMのデメリット 3. 「家族割り」などの通話料金割引サービスがない。
基本料金が安価なのでしかたないかもしれないが、さらなる通話料金の割引サービスはないので注意が必要だ。
ただこれも、IP-Phone SMART、050plus、LINE電話、楽天でんわなどのIP電話サービスと組み合わせることにより、工夫次第で通話料金を安価に抑えることができそうである。
また、電話をよくかけるひとは、スマートフォンやタブレット用はデータ通信のみの格安SIMとし、これとは別に電話専用の端末を契約するのも良いかもしれない。
格安SIMのデメリット 4. キャリアメールが使えない。
ほぼ日本のみのいわゆるガラパゴスなサービスであるが、大手携帯電話会社では、携帯電話の利用者向けに独自のメールサービスを提供している。長く日本独特の携帯電話向けメールサービスとして定着してきたので、これがないと困る場合もあるときいている。その場合は、そもそも、格安SIMカードの契約をおすすめすることはできないだろう。注意が必要だ。
ちなみに、筆者自身は、逆にキャリアメールをほとんど使ったことがなく、契約中の複数のプロバイダのメールも含め、すべてGmailに集約しているくらいなので、全く問題ない。
その他、大手携帯電話会社の提供するサービスが使えなくなるので、注意が必要だ。慎重に検討してほしい。
●ショップにて購入
さて、ここまでの情報を得て、実際にショップに出かけて端末の購入やSIMカードの契約手続きをすることにした。
まず、再び、auショップを訪れ、ナンバーポータビリティ(MNP)転出の手続きを行った。
次にいよいよ端末とSIMカードの購入である。今回は、ビックカメラ有楽町店に出かけることにした。
IIJ mioのSIMカードはインターネットでも購入できるが、届くまでに1週間前後時間がかかるという。それなら店頭での手続きの方が速い。ビックカメラは、IIJと提携して、同社のSIMカードを「BIC SIM」と称して力を入れて販売している。Ascend G6の購入もできる。特に有楽町店には専用のカウンター「BIC SIMカウンター」があり、SIMカードの購入から回線開通まで行える。
専用カウンターでは、ビックカメラの店員がiPadを使って手続きを進めてくれ、端末の購入とともに無事回線の開通手続きができた。必要な物はMNPの番号と、身分証明書(運転免許証など)だった。
妻の分と合わせた、2台の手続きにかかった時間は書類の作成など手続きに約40分と、ショップ側の開通作業に約30分かかり、合計1時間ちょっとというところだった。
link: ビックカメラ BIC SIMのホームページ
http://www.biccamera.com/bicbic/jsp/w/service/bicsim/index.jsp
●SIMカードの設定は簡単
あとは自分でSIMカードをAscend G6に装着し、新しい端末の設定をするだけだ。急いで自宅に帰り、Ascend G6 2台の設定作業に入った。作業そのものは簡単。取扱説明書に従ってSIMカードを装着し、電源を立ち上げるとすぐにドコモの電波を拾って通話と通信が可能になった。
SIMカードの設定を自分で行う際には、一般に、データ通信にはAPNの設定が必要になる。しかし、今回はそれを行うまでもなく、あらかじめAscend G6に、IIJmioの設定が施されていたので、自動的に接続が行われた。結局は確認を行っただけだ。
APNの設定を確認する方法は、ビックカメラ窓口でも案内があったが、購入時にも確認してほしい。
写真 Ascend G6 APN確認の画面
次はアプリの設定だ。Ascend G6に、Gmailのアカウントを登録して、Google関連のアプリの設定をし、さらに、FacebookやLINEなど、普段使うアプリの設定をしていった。
みおふぉんはSMSにも対応しており、LINEアプリの設定時等に必要な「認証作業」も簡単にクリアできた。
Ascend G6内蔵のストレージ容量は、今どきのスマートフォンとしては8GBと小さいので、いつも使うアプリだけですぐにいっぱいになってしまった。やはり、ストレージ容量はもっとほしいところだ。そんなときは、マイクロSDカードを上手に組み合わせて使いたい。
つまり、インストールしたアプリのうちSDカードに移動できるものはできるだけ移動し、内蔵ストレージに余裕を作った。また、写真や音楽データは、SDカードに保存するように設定をした。
●留守番電話は、Fusion IP-Phone SMARTと連携させて、無料で実現
課題となっていた留守番電話の機能だが、筆者の場合、Fusion IP-Phone SMARTの無料の留守番電話機能と組み合わせることで解決した。つまり、みおふぉんの電話番号にかかってきた電話を、IP-Phone SMARTの電話番号に転送するだけだ。
IP-Phone SMARTは、Fusionが運営する、初期費用、基本料金、留守番電話機能がいずれも無料のIP電話サービスだ。スマートフォンのアプリが用意されていて、もちろんAndroid版もある。通話のみ、通話相手先に応じた料金が発生するが、通常の携帯電話より割安なのもメリットだ。050で始まる一部のIP電話には無料で電話をかけられる。詳しくは、Fusionのホームページを参照いただきたい。
link: Fusion IP-Phone SMARTのホームページ
http://ip-phone-smart.jp/
では実際の設定の流れを簡単に紹介しておこう。
まず、上記Fusion IP-Phoneのホームページで会員登録を行い、同サービスの電話番号を取得する。
次に、Ascend G6にFusion IP-Phone SMARTのアプリ「SMART Talk」をダウンロードし、インストールする(無料)。
<
写真 Fusion IP-Phone SMART用アプリ「SMART Talk」
さらに、同サービスのWebページで留守番電話の機能を設定する。留守番電話の録音内容をメールで自動送信する機能もあるので、活用しよう。
最後に、みおふぉんの転送電話のサービスの機能設定で、転送先にIP-Phone SMARTの自分の電話番号を指定する。呼び出し時間を適当な長さに設定し、最後に「転送電話サービスの開始」を行う。
以上で留守番電話の設定ができた。別の電話番号からAscend G6に試しにかけてみると、着信後しばらくしてIP-Phone SMARTの電話番号に転送され、留守番電話に記録する音声ガイダンスが聞こえてくる。メッセージを録音し電話を切ると、メールが届き、留守番電話の存在を確実に知ることができる。メールには録音された音声データが添付されており、その場で確認することも可能。しかも、これが無料で追加できるサービスだというのは驚きだ。
留守番電話の音声データがメールで届くのは、なかなか便利だ。大手の携帯電話会社でこのようなサービスを行っているところを知らないが、IP電話サービスでここまで出来るとは、すごく気に入ってしまった。
●格安SIMをぜひお薦めしたい
ここまで書いてきたように、格安SIMカードを実際に購入して使ってみたところ、大変メリットが大きいことがわかった。もう、私は、これまでのように大手携帯電話会社の窓口に契約をしに行くことはないかもしれない。2年縛りとも、キャッシュバックキャンペーンの甘い誘いともおさらばである。
これまで、SIMロックが解除されてもたいしたメリットはないんじゃないかという声もよく聞いた。しかし、ここまで価格メリットのあるSIMカードが流通してくると、そんな声も小さくなるんじゃないかと思う。そのくらい、格安SIMカードは魅力的だということがわかった。
もちろん、若干、調査や勉強が必要な部分もあるので、油断なく、端末やサービスの品定めをしてほしい。その上でではあるが、格安SIMを、読者の皆さんにも、ぜひお薦めしたい。