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ベクレルとシーベルト:放射能汚染に対する知識の大切さ

ベクレルとシーベルト:放射能汚染に対する知識の大切さ

鈴木 啓一

フリーランスのライター、IT先端技術コンサルタント。モバイルやクラウドを駆使するスマートワーク研究をライフワークとしている。

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ベクレル。シーベルト。

昨年3月の原発事故からとてもよく耳にする言葉になったが、皆さんはどのくらいこの言葉の意味や、数字の大きさを理解されているだろうか?

放射能は目に見えないので、弱いのに必要以上に怖がったり、逆に危険なのに全く気づかなかったりする。しっかり数字で危険の度合いを知ることが大事だ。その危険の度合いを表す単位が、放射線の場合シーベルトで、放射能の場合ベクレルだ。

そもそも、放射線と放射能の区別はどうだろう。放射線は、放射性元素の原子核の崩壊に伴い発生する電磁波もしくは粒子の流れであり、光に似た一種のエネルギーと考えると理解しやすい。これを浴びると人間の細胞に影響がある。これを被曝という。DNAが破壊され、細胞分裂の際に癌が発生する確率が増えるのだ。放射能はこの放射線を出す物質(放射性物質)の能力をいう。

放射能の量を表す単位:ベクレル(Bq)は、1秒間に放射性元素が崩壊する数と定義されていて、たとえば、現在国が示す一般食品の安全基準は 100Bq/kgである。この場合、食品1kgあたり、放射性元素が存在しても1秒間に崩壊する元素が100個以下なら安全としているわけだ。実はこれ結構厳しい基準だ。

放射能は、原発事故とは関係なくもともと自然界に存在している。たとえば、カリウムの放射性同位元素「カリウム40」は、天然カリウムの0.0117%という割合で存在している。我々がいつも生活する地面にある一定のカリウムが存在するし、カリウムを多く含んだ食品、バナナやニンジンなどはごく微量ながら放射線を出しているわけだ。

シーベルト(Sv)は、放射性物質から出てくる放射線の量を表す。日常生活でも放射線を浴びてしまう機会は思ったよりもある。日常生活における放射線の被曝量をわかりやすく示した図を見つけたので掲載しておく。

example_01.jpeg

これによると、我々は年間で世界平均で2,400μSv(=2.4mSv)の自然放射線を浴びているとしている。また、頻繁に航空機に乗るひとは放射線被曝量が大きいことを示している。たとえばニューヨークへの1往復だけで200μSvだ。毎月ニューヨーク出張をしているビジネスマンは、普通の人の倍、被曝している計算だ。年間の自然放射線による被曝量の平均値など、これらの数字はちょっと覚えておくと良いかもしれない。

もちろん、この被曝量が健康にどんな影響を与えるのかが気になるところだ。
こちらも、とてもわかりやすい図を見つけたのでご覧いただこう。

kenkou-eikyou_1.gif

この図は特に高い放射線量の場合を示しているが、すぐに命に関わる影響が出るのはこのように数Sv以上の量を被曝してしまった場合だ。1999年9月のJCOの臨界事故での死傷者の例が載っている。250mSvでは白血球の一時的減少があるとされている。年間線量の世界平均値の100倍だ。

では、癌の発生確率は放射線によってどのくらい影響を受けるのだろうか。この疑問についてもとてもわかりやすい図を見つけた。
graph_02.jpeg

これによると、年間100mSvの被曝がある場合、癌によって死亡する人が0.5%増加するということであり、逆に放射線とは関係ない別の原因で癌になる人の割合の方が圧倒的に大きいことがわかる。ちょっと目から鱗の情報だ。

こうした数字の感覚を持っていると、今の環境が放射線量がどのくらいで、安心して住めるのかどうかがわかってくる。非常に大切な数字だ。

実はもっと怖いのは、体内に放射性物質を取り込んでしまった場合の影響だ。これを内部被曝という。これについてはまた改めて書きたい。

放射能汚染な目に見えないだけに、計測データの数字がとても大事で、計測はいわば皆さんの目の役割をしているわけだ。

このところ筆者は、本業の関係で放射能汚染とその測定関連のことに関わっている。放射性物質を取り扱える資格「第3種放射線取扱主任者」の講習を受けたり、私には今までなじみのなかったいくつもの展示会(JASISRADIEX食品開発展など)に出かけて、放射線や放射能の計測ソリューションをいろいろ見てきた。そんななかで、放射能汚染に対し、さまざまな努力があちこちで行われていることを知った。放射能汚染に対する知識の大切さを改めて感じている。