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その自己投資にいくらつぎこむか?予算思考と投資思考の話

その自己投資にいくらつぎこむか?予算思考と投資思考の話

眞山 徳人

ベルギービールをこよなく愛する公認会計士。座右の銘は「できるときに、できることを、できるだけ」。

当ブログ「公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/mahyan-cpa/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは、今回もお読みいただきありがとうございます。

突然ですが、お金にまつわる、自分のエピソードを共有したいと思います。


私が寝間着として使っているウェアは、上下合わせて2万4千円ほどかかりました。

言ってみれば2万4千円のパジャマ。これだけを聞くと、「まーやんってやつはどんだけ贅沢なんだ!?」と勘違いをされてしまうかも知れません。しかし、私にとってこの寝間着は贅沢でもなんでもなく、むしろ非常に良い買い物、非常に良い「自己投資」だったと思っています。

一方、私は「新聞」を購読していません。新聞の購読料は3,500円程度ですが、正直「出す気になれない金額」なのです。


2万4千円のパジャマが買えて、月3,500円の日経を購読しない。なぜ、私はこんな判断をしてしまうのか。今日は「自分のためのお金」の使い方を考えたいと思います。


このブログを読んでいる方の多くはビジネスマンで、日々自分自身を高めることに余念が無い方だと思います。

  • メタボを防止するためのジム通い
  • 昇進するための英会話学校
  • ビジネス関係の書籍
  • 時事に追いつくための新聞、雑誌
  • 朝活や異業種交流会への参加

皆さん、どれも少しは興味を持ったり、あるいは取り組んでみたことがあったりしたことでしょう。最近は色々な自己研鑽の場がありますが、上に挙げた例はいずれも「お金のかかる」自己研鑽の例です。

これらにお金をかけるとき、あるいはお金をかけることを断念するとき、皆さんはどんな判断をしているでしょうか?

たとえば、ジム通いであれば「月額8000円か。それくらいなら出せそうだ」
ビジネス書なら「おっ、新刊でてる・・・給料日後だし、買ってみるか」

こういうことが多いんだと思います。つまり、「自分の手持ち資金や給与と比較して、出せる範囲で自己研鑽をする」ほとんどの人が無意識にそういう判断をしている。

この発想は「予算思考」と呼ばれるものです。


予算思考=「いくら出せるか?」という観点から支出を判断する考え方


たとえば、家賃に関しては「手取り給与の3分の1が適正水準」と言われていますし、そういう観点で部屋探しをしている人は多いでしょう。予算思考の考え方は、家賃や新聞、美容院や床屋、通信費など、毎月かかる支出に当てはめて考える時には非常に良い思考の仕方になります。

予算思考を上手に使っている人は、節約ができる人だと思います。たとえば「携帯を契約したら、固定電話はもう要らないや」という発想も予算思考に近いです。ほかにも「ウィルコムのPHSは通話料が安いから」とか、「髪を切るのに4,000円も払いたくない。俺は10分で1000円の床屋でいいや」とか、必要経費を節約するためにも予算思考は役に立ちます。

実は私が新聞をとらないのも似た理由です。テレビやインターネットでこれだけ無料で得られる情報があるなかで、新聞3,500円払う理由はいったいどこにあるのか?自分にはそれが見当たらなかった。あるとき試しに購読せずに半年ほど過ごして、やっぱり不都合がなかった。じゃあもう購読しなくていいや、となったわけです。

※ちなみに、私の考えが絶対だとは思いません。日経をとる理由はほかにも沢山あるはずです。たとえば新社会人などは、ビジネスで使われる用語に慣れる、とか、日々どんな情報にアンテナを張るべきかという視点を得るために、日経などの新聞を読むことは有益だと思います。


しかし、この考え方を自己投資など、必需品以外の支出に当てはめる場合には注意が必要です。

実は私、学生時代に英会話スクールの勧誘に乗って入会してしまったことがあります。恥ずかしながら、営業の誘い文句に乗ってローンまで組んでしまいました(まさに若気の至りです)。実は当時、塾講師のバイトをしていて、お小遣いにしては少し多目の収入があったこともあり、「毎月○千円なら、出せる」と思って入学したのです。予算思考に基づけば、「収入の範囲で支出した」のですから、あながち間違いではありません。

あの時習った英会話は、新婚旅行のときにホテルのフロントに苦情を言ったり、外国人に道を聞かれたり、ごくごくまれに英語のビジネスメールに対応したり・・・それなりに活かしている瞬間はあります。しかし、毎月毎月バイトをしてまで支払ったお金に見合う成果か?と聞かれると、自信を持って「いいえ」と言えます。

理由は単純です。よく考えれば、海外ホテルのフロントに苦情を言ったときは日本人スタッフに言えばよかったし、道案内のときは結局「すみません、この辺詳しくないんです」と英語で言っただけだから彼の役にはたっていなかった。英文メールも辞書があれば何とかなったはず。英会話の経験は、「必要なかった」わけです。


一方で、それでも高額の料金を払って英会話やTOEICの勉強をしている人がいます。たとえば「TOEICスコア730点が課長職昇進の条件」となっている企業が最近は増えているのですが、この要件を満たすべく、毎夜頑張っているビジネスパーソンの中には、お金をはたいて学校に通っている人が多いと思います。

この場合は私とは違って、英会話の習得が年収アップに直結しているわけです。課長職になって年収が100万円増えるなら、英会話学校に50万円払っても半年で回収できますから、この50万円はムダではありませんよね。

この「元を取る」という発想が、「投資思考」です。


投資思考=「将来いくら戻ってくるか?」という観点から支出を判断する考え方


私が身につけている2万4千円の寝間着は、実は「リカバリウェア」と呼ばれる休息時専用のウェアです。疲労の回復に高い効果があり、アスリートなども愛用している人が多いもの。それまで私はひどい腰痛と肩こりに悩まされていて、月に数回、カイロプラクティックに通っていました。その店は良心的な価格設定だったのですが、それでも施術料で、多い月で1万円のお金が飛んでいくのは、つらいものがあります。

友人が使っているのを聞いて、「ああ、これは確かに効果があるんだろうな」と思って、思い切って購入を決意しました。リカバリウェアを着るようになってまだ1ヶ月も経っていませんが、慢性的な腰痛がなくなり、カイロにいく必要はなくなりました。あと2ヶ月も着続ければ、りっぱにカイロ代の「元が取れる」計算になります。

2万4千円は、自分の健康維持のために払っていた投資額として、カイロに支払う施術料を超えるパフォーマンスを見せているわけです。パジャマとしては高すぎるように見えた支出も、実はとても有意義だったというのは、そういう理由からです。

  • 会費を払ってはいるが、ジムにはいっていない
  • 毎月交流会に5,000円くらい払っていて名刺も沢山交換したが、今になってみると、ほとんど顔なんか覚えてない
  • 先週買ったビジネス書・・・これ何が書いてあったっけ?

これが国家予算の話なら「ムダを削減せよ!増税はその後だ!」と誰もが叫ぶのですが、自分のことになるとなぜか「収入>支出」という理由だけで、これらの無駄な費用が当たり前のように見過ごされてしまいがちです。

その一方で「営業マンの話し方セミナー、受けたら成約率上がるかも。・・・でも3時間で2万円も取るのか・・・ムリだな」と、表面上の金額だけで大事な機会を逃す人も、たくさんいるだろうと思います(すべての高額セミナーを肯定しているわけではありません、念のため)。

そのお金、本当に元が取れるのか?そういう観点から日々の支出を考えてみることも、大事ではないかと思います。