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天気予報にはいくらの「価値」があるのか?

天気予報にはいくらの「価値」があるのか?

眞山 徳人

ベルギービールをこよなく愛する公認会計士。座右の銘は「できるときに、できることを、できるだけ」。

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こんにちは、今回もお読みいただきありがとうございます。


先日開催された隅田川花火大会は、残念ながらわずか30分足らずのうちに中止になってしまいました。原因は「豪雨」でした。

天気予報でも夕方以降は大気が不安定であるということでしたから、「それなら最初から順延すればよかったのに・・・」という声も聞かれます。

しかし、同時にこんなことも思うわけです。「でも最近の天気予報って、あまり的中率良くないよなぁ・・・」と。

最近の気象が非常に読みにくい状態になっているのも確かのようですが、たちの行動はたぶんに天候の影響を受けますから、天気予報がどれくらい信頼できるものか?というのは、生活の利便性や、経済活動全体にも大きな影響を及ぼすものだと思います。

私たちは普段、何の気なしに天気予報を見ます。そのときかかっている費用は、せいぜいインターネットの通信費、あるいはNHKの受信料くらいで、天気予報を見るときにコストを意識する必要はありません。しかし、天気予報がなければ、大変困ってしまうのも事実。


では、ちょっと考えてみましょう。

もし、無料で見られる天気予報がなかったとして、「月々いくらなら」天気予報にお金を払いますか?





まず、日常生活について考える前に、企業の例を考えましょう。

少しややこしいですが、以下のようなケースです。もちろん、天気予報が存在しない世界を想像してください。


T社は東京都豊島区にてテーマパークを運営しています。
このテーマパークでは、8月限定で300円のアイスクリームを販売することにしました。コスプレをした売り子さんがパーク内を歩きながら売る仕掛けです。
  • 来客数は平均で1日あたり2万人程度です。人気のコスプレをしてもらうので、アイスクリームはおそらく1万食は売れると思われます。
  • アイスクリームの原価率は20%、アイスクリームを売り歩く売り子さんの日当は全員で100万円とします。
この条件の場合、アイスクリームを売ることで300万円の売上が立ち、
300万円×20%+100万円=160万円の費用がかかるわけですから、一日あたりの利益は140万円ということになります。

アイスクリームを販売するという計画。確かに儲かりそうな話ですが、ここで条件を加えます。


  • 雨が降った場合には、来客数は1万人以下にまで落ち込み、雨の中アイスクリームを食べる人も珍しいので、せいぜい1000食しか売れません。
  • アイスクリームには賞味期限はありませんので、材料を廃棄する必要はありません。
  • ただし、売り子さんはあらかじめ前日までにシフトを組んでもらっているので、雨が降っても日当を払う必要があります。
の場合、雨が降ったときには
アイスクリームの売上は30万円にまで落ち込みます。
30万円×20%+100万円=106万円の費用がかかりますから、雨の日は76万円の損失をこうむるわけです。


さて、問題です。
このテーマパークに、とある占い師が「天気予知サービス」を売り込みにきました。「1日あたり10万円で翌日の天気を占いますよ」と。前日のうちに天気が分かれば、アイスクリームの販売を取りやめることができますから、76万円の損失は回避できます。

あなたがテーマパークの責任者なら、このサービスを買いますか?





正解はずばり、「買ったほうがお得!」です。





過去の気象統計を見ると、8月の平均降水日数は「8日」だそうです。
平年どおりに気象が推移した場合には、雨の日が8回あるわけですから、
損失合計が76万円×8日=608万円、ということになります。

天気予知サービスを買った場合は、この608万円は回避できます。
占いには毎日10万円がかかるので、10万円×31日=310万円の費用は必要ですが、
十分に元が取れる出費ですから、この占いサービスは買ったほうが有利です。



言うまでもなく、天気予報の価値は、この「占い師の価値」に似ています。
上記の例はあまりに単純化されていますが、実際の企業でも、こんなことがあります。


  • コンビニでは、予想最高気温しだいでアイスの発注量が変わります。
  • 猛暑か冷夏かによって、エアコンの売れ行きは大きく変わります。
    作りすぎれば在庫を抱え、作らなすぎれば儲けの機会を失います。
  • 花粉の飛散開始時期にあわせて、ドラッグストアはマスクの仕入れ量を調整します。




先ほどの例では、天気予報の価格は「1日10万円」つまり「月々300万円」程度でした。

いっぽうで、私たちが生活をする場合には、天気しだいで給料が激減するほどのインパクトはありませんよね。だとしたら、日々の暮らしの中で、天気予報がいくらの値打ちを持っているのでしょうか?


その答えは、次の質問への答えを考えると在る程度想像できます。
「天気予報がなかったら、日々の暮らしでどんな損失が考えられますか?」


  • 突然の雨になれば傘をコンビニで買う必要がある。
  • 同じく、洗濯物が台無しになるから、洗濯をやり直さないといけない。
    洗濯ならまだ良い。土砂降りになるとは知らず真っ白なワンピースを着てきてしまったら、きれいにするにはクリーニングに出すしかない。
  • 季節の変わり目は気温の変化も激しい。うっかり薄着をしたら風邪を引く。
  • 雪がこんなに早く降り始めるなら、スタッドレスタイヤにしておくべきだった。

ちょっと考えれば気づくことですが、地域や年齢、家族構成などによって色々な条件が変わってきますので、「天気予報は○○円の価値がある!」とはなかなか言い切れないものがあります。

がしかし、東京都の年間降水日数(約115日)から算定すれば、「コンビニ傘への出費」だけをみても年間5万円以上の出費を回避できるわけですから、天気予報にはかなりの値打ちがあると考えなければなりません。


天気予報の的中率が下がったとはいえ、私たちの生活に欠かせない大事な情報を教えてくれる気象予報士、そしてその情報をほぼ無料で享受できるインフラに、私たちはもう少しありがたみを持って接する必要があるのかも、しれません。