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「続・半沢直樹」は映画なのか?TVなのか?
»2013年9月25日
公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」
「続・半沢直樹」は映画なのか?TVなのか?
ベルギービールをこよなく愛する公認会計士。座右の銘は「できるときに、できることを、できるだけ」。
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こんにちは。今回もお読みいただきありがとうございます。
前回の「倍返しのリアル」に引き続き、今回も半沢直樹ネタでまいります。
最終回の瞬間最高視聴率が50%超え、まさに今年を代表するドラマとなった「半沢直樹」。ラストシーンは予期せぬ結末だったこともあり、当然のことながら「続きが見たい」という視聴者の思いも高まっていると思います。
ここ数日のニュースを見ると、早くも続編のオファーがあるだとか、色々な報道が出ていますが、続編をどのような形で視聴者に届けるのか。いくつかオプションがあるようです。
- 映画化する
- ドラマ化する
簡単に言えばこの2通りですが、ドラマ化の場合は「特番ドラマ」か「連続ドラマ」という形でさらに細分化されていきます。
今回は、上映(放映)時間がほぼ同等になるであろう「映画」と「特番ドラマ」の2つを比較して、TBSがより儲かるためにどちらのメディアを選択すべきか、簡単に分析をしてみたいと思います。
その前提として、まずは「映画」と「ドラマ」の儲けの構造を勉強していきましょう。
- 映画は「入場料」を関係者が分配するビジネス
文章にすると複雑なので、簡単に図解してみました。
映画の場合、収入の元となるのは、観客の「入場料」ほぼこれだけです(グッズやパンフレット収入は今回は割愛します)。
そしてこの入場料を、映画館を運営している会社、映画を頒布する配給会社、映画を創る制作会社やプロダクションがとっていきます。今回の場合、TBSは「制作会社」として名を連ねることになります。
沢山の観客を動員できれば、当然入場料も沢山得られますし、ロングランのヒットになれば莫大な利益を得ることが出来る可能性があります。
しかし一方で、映画と言うのは制作⇒配給⇒上映というプロセスが終わるまでは、一切の収入が入ってこないビジネスでもあり、上手くいかなければTBSは大赤字をこうむる可能性があるわけです。
- ドラマは「広告料」を関係者が分配するビジネス
一方のドラマはどうでしょうか。ドラマの収入の元となるのはご存知の通り「スポンサー収入」ですが、実はこのスポンサー収入には、2つのタイプがあります。
①タイム広告
「日曜日の21時~」という時間枠で広告を出す権利をスポンサーが買い取る方式です。
半沢直樹は「日曜劇場」という日曜日21時からの枠での放送でしたが、この枠は昔から東芝などのスポンサーが広告を出しています。
詳細なことは調べられませんでしたが、ドラマの制作費は、多くの場合このタイム広告から得られる収入の範囲内でまかなうことになっているようです。
②スポット広告
上記とは異なり、「(時間枠を問わず)一定の視聴者の目に留まるまで、広告を出し続けてほしい」というのがスポット広告です。テレビCMではタイム広告枠のスポンサーのCM以外に、適宜このスポットのスポンサーのCMが流れます。
テレビ局から見れば「一定の視聴者の目に留まるまで」何度でもCMを打つ必要があるため、高視聴率の番組を作ることができれば、より効率的に広告料を得ることができます。
テレビ番組は「タイム広告」という形であらかじめ時間枠を買い取ってもらい、その中で制作が行われるものです。したがって、映画の制作とは異なり、ある程度の収入を想定した上でドラマの制作ができるという利点があります。さらに、高視聴率をたたき出せばスポット広告を効率的に消化でき、更なる広告料を得ることができます。
それでも、欠点がないわけではありません。タイム広告枠を消化した残りの部分でスポット広告を展開するため、広告料の伸びしろにはおのずと限界がありますから、映画ほどの収入は見込めないかもしれません。
また、日曜日の9時~という枠は他局でも特番を組みやすい時間枠です。例えば年末特番シーズンで「TBSで半沢、フジテレビですべらない話」と言うことになった場合、半沢を録画して「すべらない話」を観る、という人もたくさんいるのでは?と思います。
そういった他局との争いに勝たなければならないと言う点で、テレビには映画にはない特有の厳しさがあります。映画の場合は競合する作品がある場合でも「両方観る!」という選択肢がありますが、リアルタイムでの視聴率が広告料を左右するテレビの場合は、その理屈は通用しないわけです。
- 結論として、まーやんは「ドラマ」を推します
映画とドラマを比べたとき、ハイリスク・ハイリターンの映画と、ミドルリスク・ミドルリターンのドラマ。一言で言うとそういう整理が出来るかと思います。
半沢直樹の場合、既に今回のドラマで十分過ぎるほどの知名度を得ています。しかも次回作の原作にあたる「ロスジェネの逆襲」はすでに出版されており、売れ行きも絶好調ですから、映画化・ドラマ化した場合の話題性に事欠くことはありません。結局のところリスクを気にせずに思い切った制作ができるため、映画になったときもかなり面白い作品になるだろうと思います。
他局の成功例としては、フジテレビの「踊る!大捜査線」シリーズは、映画化で大成功を収めたわけですが、警察モノのドラマの場合は空撮や爆発など、ダイナミックな撮影で観客を楽しませてくれました。
しかし、派手なアクションや特撮の必要のない経済モノのストーリーの場合、制作費に比例して面白さが増す、という話にはなりにくいのではないか?というイメージを私自身は抱いています。もちろん制作費を抑えて、利益率の高い作品にするという手もありますが、映画にかかる費用は制作費だけでなく、上記の通り配給や上映にもコストがかかっていくので、あまりスリムな運営もできない・・・と言う事情を考えると、旨みは多くありません。
もちろん、ココでは分析し切れなかった数々の事情を踏まえて、最適な媒体で続編を出すことになるはずなので、私の結論が絶対ではありません。ですが今ある情報を使う限りでは、映画にシフトする優位性はあまり見出せないかなぁ、と思っています。
ともあれ、あんなに面白かった「半沢直樹」。続編でも主人公たちの更なる奮闘を、楽しく観たいものですね。