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楽天のセールで「77%OFF」が問題になっているので、ついでに「割引のマジック」を学んでおこう
»2013年11月12日
公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」
楽天のセールで「77%OFF」が問題になっているので、ついでに「割引のマジック」を学んでおこう
ベルギービールをこよなく愛する公認会計士。座右の銘は「できるときに、できることを、できるだけ」。
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こんにちは、今回もお読みいただき有難うございます。
プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスが史上初の日本一に輝きました。
田中将大投手をはじめ、選手たちの素晴らしいプレーに熱くなったファンも多いことでしょう。
また、野球の日本シリーズの場合、「巨人が優勝したら百貨店」「楽天が優勝したら楽天市場」がセールを行うことが眼に見えていたわけで、特段野球に興味がない方も、こういった恩恵にあずかろうと思っていたのではないでしょうか。
で、日本シリーズを楽天が制したことを受け、早速、楽天市場がセールを打ち出しました。
星野監督の背番号にあやかった「最大77%OFF」という驚きの割引率が消費者の注目を集めましたが、これに便乗して、通常の価格を吊り上げることで割引率を不当に引き上げる表示の仕方をする店舗が現れたことにより、楽天市場の仮想商店街はいささか混乱しているようです。
現在楽天はこういった店舗の閉鎖措置をはじめ、適正な仮想商店街の運営のための対応を迫られているわけですが、いっぽうの消費者も、「割引のマジック」を見抜くための知恵を持たないと、いつどんな損失をこうむるか分かったものではありません。
というわけで、今回は「割引のマジック」を見破るためのいくつかのポイントを整理したいと思います。
- ポイント① 割引率は「分子と分母」で決まる、という当たり前。
今回の楽天市場の不当表示問題は、この「分子と分母」の性質を逆手に取った非常に単純な手口で行われました。
楽天の事例は不正に該当する可能性が十分にあるのですが、実は日常の買い物シーンでも、似たようなマジックが意外と沢山あるのです。
例えば「スーツ半額セール」があります。
社会人の男性なら、安売チェーン店からDMハガキが来ることもあるだろうと思います。試しにお店に行ってみると、うん、確かにスーツが半額で売られているようです。
でも、通常でもその店舗が「2着目が0円」という体系で販売をしている場合には、実質的な価格に差はなかったりします。
もちろん、1着だけしか買いたくない人もいれば、価格の異なるスーツを買う場合(※)もあるでしょうから、まったく意味のない割引というわけではありません。しかし、「半額」という言葉のインパクトに比べれば、ずいぶんスケールダウンしたサービスにも思えてきます。
(※このような場合、価格の高いほうを1着目、安いほうを2着目として値引き処理をするのが普通なので、半額よりもちょっと高い)
- ポイント② 似ているけど違う「割引率」と「還元率」
「今なら25%割引」
「今なら25%ポイント還元」
一見すると、この2つは同じ割引率のように見えますが・・・実は違うのです。
25%割引というのは、1万円の商品を7,500円で買うことができるという意味です。これを計算式にすると、
{1-(10,000-7,500)/10,000}×100=25%
ということになります。
一方のポイント還元というのは、「1万円の商品を1万円で買うと、2,500円分のポイントがついてくる」という意味です。例えば、付与されたポイントで2,500円のお買い物をするときには、お金は必要ありません。
この場合、もともとの1万円の商品と合わせると、12,500円の商品を1万円で買ったことと同じになりますよね?
これを先ほどの計算式を用いて割引率として求めてみると、
{1-(12,500-10,000)/12,500}×100=20%
割引率は20%ということになるのです。
パーセンテージが小さい場合はあまり差はありませんが、ともかく「現金割引」と「ポイント還元」は、前者のほうがオトクであることは、覚えておいたほうが良いと思います。
- ポイント③ キャッシュバック、という「ウソ」
...いや、ウソというのは大げさかもしれません。
しかし、「割引」ではなくあえて「キャッシュバック」と書いてある場合、ほとんどが現金ではなく、ポイントやマイルでの還付になることが非常に多いので、注意が必要です。
現金とポイントの大きな違いは3つあります。
- 用途が制限されること
アマゾンのポイントであれば、アマゾンのサイトでしか使うことが出来ません。アマゾンでは確かに色々な買い物が出来るので、頻繁に利用する方にとっては十分価値のあるポイントだと思いますが、それでもスーパーで「タイムセール、卵大安売り!」に出くわしたたときに、アマゾンポイントではなす術がありません。 - 使用期限があること
マイルやポイントには2年程度の期限があることが一般的です。現金なら2年経っても名目的な価値が落ちることはありませんが、ポイントは期限が過ぎれば消えてなくなってしまいます。 - 最低使用単位があること
クレジットカードのポイントや航空会社のマイルなどは、ある程度溜まってからでないと航空券や商品に換えることができません。
例えば1000ポイントから換算可能なものであれば、2年以内に1000ポイントに到達しなかったり、使われないまま期限を過ぎればそのまま失効してしまいます。1000ポイントに到達したとしても、端数のポイント(1010ポイントなら、10ポイントの部分です)については常に失効の可能性が付きまといます。
1ポイント=1円」というような表記は、ポイントに対して現金と同等であるかのようなイメージを与えてしまう雰囲気がありますが、実際には色々な観点で現金の利便性にかなわない部分があるということです。
いかがでしたでしょうか?
冒頭にも似たことを書きましたが、楽天市場の割引率問題が私たちに提起したのは、「消費者が表面的な数字にとらわれず、じっくりとその実質を吟味すること」の大切さではないかと思っています。
賢い消費者が増えれば、世の中には全うな商取引を目指す店舗が増え、そうでない店舗が駆逐されていくはずです。私たち一人ひとりが、価格に対する正しい「見極め」ができるように、なりたいものですね。