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「編集の価値」と「編集者の価値」

»2010年4月20日
Yet Another Computer World

「編集の価値」と「編集者の価値」

岑 康貴

しがない編集者です。@IT自分戦略研究所を担当しています。


こんにちは。@IT自分戦略研究所というメディアで編集者をやっている、岑康貴(みねこうき)といいます。

今では編集者をしていますが、実は数年前は「誠 Biz.ID」や「Business Media 誠」担当の広告営業でしたから、なんだか古巣に戻ってきたような気分です。

@IT自分戦略研究所は「ITエンジニア向けのキャリアアップ/スキルアップ情報サイト」ですが、このブログでは、ITやWeb、メディアの動向と、そこに関わる人間との関係について考察していきたいと思います。その中で、ITエンジニアに触れる部分も多々あると思います。

ちなみに、ブログタイトルにある「Computer World」とは、もちろんKraftwerkのアレです。

■ 編集の価値

さて、最初は僕のお仕事でもある「編集者」について。

皆さんは「編集」という言葉に、どんなイメージを持たれているでしょうか。なんとなく「恣意的な編集」とか「偏向報道」とかいったキーワードに代表される、ネガティブなイメージを持っている人が、最近は多いんじゃないかと思います。

実際、編集とは「情報の恣意的な加工」に他なりません。ユーザーが情報にアクセスしやすいように加工してあげるのが「編集」の機能です。

昔は情報を発信するのも、それにアクセスするのも大変でした。だから編集が価値を持っていたのです。メディアは、情報を整理して届けるというニーズを一身に背負っていたわけですね。

いうまでもなく現代はソーシャルメディア全盛期です。情報の「生成」と「発信」と「流通」は、もう旧来型マスメディアでなくても可能になりました。

情報の「生成」と「発信」と「流通」が個人レベルで可能になった現在、情報の「編集」は「恣意的な加工だ」という側面ばかりがクローズアップされがちです。そんなものいらないよ、という人が増えつつあるのは当然です。過激な人は「GoogleとかRSSリーダーとかあるから、間に入る編集なんていらないよ」と言います。ある意味では正しいです。

そもそも、編集の価値の1つに「情報の取捨選択」がありました。どの情報が「いまアクセスすべき重要な情報なのか」を選別してくれていたのです(編集というより、編成の持つ機能である、といった方が正確かもしれません)。でも現代は「自分の好む情報にアクセスするためのツール」が大量に開発されたので、わざわざ「偉いメディア様」に選別してもらわなくてもOKなわけです。素晴らしいですね。

しかし、現代でも編集の価値はなくなっていません。すべての人が検索やRSSリーダーを使いこなせるわけではないからです。また、情報が細分化され、リアルタイム性を増すほど、生のデータをそのまま扱うのは困難になります。Twitterに代表されるストリームメディアの情報をGoogleが整理しきれていない(といっても、最近は頑張っていますが)のは、そういうことです。

■ 編集者の価値

ソーシャルメディア全盛期に編集が価値を持つ、という最も分かりやすい例がTogetterです。

Togetterでは、有志が勝手にTwitter上の「さまざまな話題」をまとめ、選別し、デコレーションし、公開できます。これにより、流れの早いストリームメディア上での「話題」がパッケージ化され、ユーザーがアクセスしやすくなります。

ただし、ここで注意したいのが、ここにあるのは「編集の価値」であり、「編集者の価値」ではない、という点です。

Togetterによって――正確に言えば、それ以前から存在する「2ちゃんまとめブログ」も該当するでしょうが――「個人が編集する」という時代が到来しました。これまでのCGMは「個人が生成する」でしたが、編集も個人ができるようになりました。

コンテンツの作り手が(素人も含めて)増えれば、全体としては活性化されますが、それで飯を食っていたプロフェッショナルにとっては厳しい時代が訪れます。同じように、編集の担い手が(素人も含めて)増えれば、全体としては活性化されますが、それで飯を食っていたプロフェッショナルにとっては厳しい時代が訪れます。つまり僕が厳しくなります

それでは、旧来の「編集」の機能の大部分をシステムに奪われ、残った価値すらも個人が担い始めているなか、「プロの編集者」はどうすべきなのか――。まあ、そんなようなことを考えています。今後ともよろしくお願いします。