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コンサルティング契約~前篇~
ITビジネス法務の現場から
コンサルティング契約~前篇~
弁護士。内田・鮫島法律事務所。アクセンチュア等でのシステム開発やコンサルティングの経験をもとにした、システム開発、IT、ネット、知的財産に関する法律問題が専門。
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こんにちは。弁護士の伊藤雅浩です。
今回は,「コンサルティング契約」の内容,解釈が争われた事件を題材に,「請負契約」と「準委任契約」について紹介したいと思います。
【請負契約と準委任契約】
システム開発の契約実務に携わった方であれば,システム開発において用いられる契約に,請負契約と準委任契約があることをご存知かと思います。
請負契約とは,
請負人が仕事を完成させ,注文者がそれに対して報酬を支払う
という契約です。請負人たるベンダは,契約の本質的義務として仕事の完成義務を負うことになります(民法632条)。目的物に瑕疵があった場合は,瑕疵担保責任を負います(同法634条以下。)。システム開発の場合,設計フェーズから結合テストフェーズあたりまでが,請負契約を用いられることが多いです。
準委任契約とは,
委託者が,(法律行為以外の)事務を委託する
という契約です(同法656条)。受託者たるベンダは,善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(同法644条)。受託者は,仕事完成義務がないため,瑕疵担保責任を負いません。要件定義や,総合テスト支援フェーズは,準委任契約で行われることが多いです。
この区別は,システムが完成しなかったときに,ユーザは契約を解除して損害賠償を求めることができるのか,ベンダは責任を負担しなければならないのか,といった場面で問題になります。また,必ずしもどちらか一方に限定されるのではなく,内容によっては両者の性質を併せ持つという契約もあります。
一般に「コンサルティング契約」と題して結ばれた契約は,後者の準委任契約だと考えられますが,契約の性質は,表題で決まるものではなく,契約書の内容,当事者の意思によって決まります。後篇では,コンサルティング契約という名称で締結された契約が,「請負契約」としての性質も有し,システムが完成しなかったことが契約違反であると判断された事例(東京地裁平成22年9月21日判決)を紹介します。
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