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上司への提案が通らない理由

上司への提案が通らない理由

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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それはその提案が、あなたのメリットにしかならないからか、上司や会社が現状で特に困っていないからのどちらかです。

99%の場合、これにあてはまります。

しかし、後者の『上司や会社が現状で特に困っていない』というパターンで、実は本人達は気づいていないが本当は今困っているはずであり、そして、自分は彼らのメリットになるもっとよい方法を知っている、という場合のみ、この先がある可能性があります。

例えばですが、あなたの部署で使っているファイルサーバーがもう古くて、いつ壊れてもおかしくないから買い換えよう、というような話が持ち上がっていて、旧来から付き合いのあるIT屋に見積を頼んだところ、ハードと設置作業とデータ移行で100万以上かかると言われているというウワサを小耳にしたとかいうシチュエーションを考えてみます。

これは、もし、クラウド型のストレージサービスを利用すれば、費用は大きく削減できますね。年間数万円という費用感で、しかも社内に置くよりセキュアで拡張性も高いです。

それをあなたが知っていたとして、その選択肢を部長に進言してみたとします。

まあ恐らくは、五月蠅そうな顔でにらまれて、「クラウド?なんだそれは、うまいのか?」となるでしょう。

それで大抵の場合、この段階で

(人がせっかくいいこと教えてあげようとしてるのに、なんだよその態度は...?)

と思って、二度と口に出さなくなってしまいます。

しかし私に言わせれば、ここで諦めるくらいなら初めから言わない方がマシです。単に、後からその部長がどこかでクラウドストレージの情報を仕入れた際に『私は言いましたよ』というエクスキューズを仕込んでいるだけのように感じます。

上司は、脳内ビジネス上で言うところの大事なお客様な訳です。自らの中に需要を抱えているのに、その存在に気がついていないだけです。

私は、もしあなたが今回のケースは、まさにこのような状況であると確信したら、手を変え品を変え、提案し続けるべきだと思います。

これは、言ってみれば営業です。部長に『五月蠅いな、その話はもう終わりだ』と言われてもまだ終わりではなく、自分の中で『ああ、本当にもう言っても無駄だな。これは失敗したな。』と思えるまで行くべきです。

営業ですから、同じ方法でゴリ押しするという意味ではないです。連日のように喧しく言い続けることとも違います。営業は嫌われたらおしまいなので。

別の人間経由で情報を入れさせるとか、他の案件の打ち合わせの際にサラリとこの件の話を織り交ぜるとか、資料だけでもお送りしておくとか、そういう工夫をすべきなのです。

『なぜ、自分にまったくメリットがないのに、わざわざ五月蠅がられることをする必要があるのか?かえって評価が下がるんじゃないの?』と思われるかも知れませんが、自分のメリットでないからよいのです。

それがうまく行けば、無償のサービスにお客様が喜び、そしてあなたの脳内のビジネスの価値を上げることになるからやるのです。

このあたりの考え方に釈然としない方はこちらをお読みいただきたく。

  • 脳内ビジネス の最近のブログ記事

http://blogs.bizmakoto.jp/noubiz/cat247/

特にこのあたり。


ちなみにこの提案が、自分の直接のメリットになってしまう場合、あるいは、ちょうど自分の興味のど真ん中であったりする場合、なかなか提案の意図が届きにくくなって、かえって厄介です。

その場合は、自分のメリットのために言っているのではないことを、これまた手を変え品を変え分かってもらう必要があります。

これが分かってもらえずに、『分かったよ、君がそうしたいなら、まあ今回は君のために導入してあげるよ』などと言われたら、その行為はかなり俗っぽく矮小化されてしまうのですが、まあ、それでもお客様のメリットになったのであれば、よしとしましょうか。本当によいアイディアであれば、いつか分かってもらえるかも知れません。

さらにちなみに、このような行為は、本業(自らがアサインされた業務)はきちっとやった後でやりましょう。