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開発屋が得意顔でやってしまったダメな提案

開発屋が得意顔でやってしまったダメな提案

島田 徹

株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。

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先日、あるECサイトを運営するお客様からこんな相談を受けました。ブランディング戦略がかなり成功しているお店です。

  • ウチでは、ある特定の商品(市場価格に比べて非常に高額な商品)をお買い上げ頂いたお客様に、年に一回特別なセール用のURLをメールでお知らせしている
  • そのURLから注文すると、定価の数十%オフで買えるのだが、システム的には何もチェックが入っていない
  • 従って、必死で名寄せをしない限り、注文していただいたお客様が、いったい何回目の購入かもわからない
  • また、どうやら購入する権利のないお客様もかなり購入されている模様だが、それもわからない
  • これは優良顧客のためのセールなので、そこはシステム的になんらかのチェック機能を施したい

  • (これは大きなリニューアル構想の一部です。これだけの仕事ではありません。)


この要件に対して、私は

  • 弊社の販売管理のパッケージシステムにメルマガ送信機能があります。
  • この機能をカスタマイズして、特定商品を購入した人を対象に一斉メールを送信できるようにしましょう。
  • そして、送信先を選択する際に、本文中にユニークな(1人1つの)クーポンコード付きのURLを発行すれば、誰がメルマガに反応したかも分かりますし、クーポンの使い回しも防止できますよ。

などと提案してしまいました。まあ、常套手段です。

お客様は「ふんふん、なるほどー!それ、いいね!」とおっしゃっていただきまして、私も「よしよし、よい提案ができた。」などとちょっと得意げになってしまったのですが、今になってよく考えればこれはかなりダメな提案だったのかも知れません。手法が古いと言うことではなく。。

つまり、その高価な商品を買われたお客様というのは、メールで「あなただけの特別の割引販売サイト」というのを知って、

「このURL、本当は教えちゃいけないのかもしれない。でも私の好きなお店の本当にお得な情報だから、是非友達に教えたい。」

こういう発想で、友人にこっそり教えている可能性が高いです。

それに対して、有効期限1回限りのクーポンコードを発行するなどとんでもないこと。何をバズマーケティングを根絶やしにするようなことをやっちゃってるのか、と。

もし、その割引販売が大赤字が出るほど安いというなら問題ではありますが、そうでないなら、自ら率先して広告塔になっていただいているありがたいファンの方々のインセンティブを奪うようなことをしちゃいけません。

クーポンを複数回使えるようにして、「友人に教えていただいてもいいですよ」なんて言うのもやめた方がよさそうです。それでは「ねえねえ、本当は秘密だけどいいこと教えてあげる。」のコソコソ感がないですし、いつも追跡されているという気持ち悪さがつきまといます。

実は、今回ご相談を頂いたそのお客様は今、奇跡的に超有効なマーケティングを実践しているのかもしれません。

開発屋は、「こういうことできる?」と聞かれるとすぐに鼻息粗く、「できます、できます。徹底的にやっちゃいましょう。」と言ってしまいますが、きっとマーケティング専門のコンサルタントはそうではないのでしょうね。

いったん立ち止まって、「その真の目的はなんでしょう?」「現状を変えると、デメリットが起きるのではないですか?」と考えるのだと思います。

餅は餅屋。

まあ今回は、たまたま私もふと気づいた次第ですが、所詮マーケティングは本職ではなく先が続きませんので、やはり開発屋はそういったプロのコンサルタントと一緒に行動させていただくのが一番よいのでしょうね。お客様にとっても。

 

ちなみにこちらのお客様は、夏頃までに検討されるということです。まだ先の長いお話ですので、折を見てお話ししてみたいと思います。