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30代エンジニアに訪れる転機
»2013年3月28日
そろそろ脳内ビジネスの話をしようか
30代エンジニアに訪れる転機
株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。
当ブログ「そろそろ脳内ビジネスの話をしようか」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/noubiz/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
■エンジニアに、30代で訪れる転機
学生時代からちょっとした興味で始めたプログラミングが面白くて、卒業後、なりゆきで開発会社に入社。
それがリアルな「誰かのニーズ」を満たせることに興奮を覚え、また勉強する。
新しいライブラリやメソッドを発見するたびに、今度はこれを使って何かできないかな?もっときれいに書けないかな?と思いを馳せたり、ちょっと大きめのサイト構築任されたらロードバランサーが入っててセッション周りではまって、「これ、インフラをもっと勉強しないと」と開眼し、自分でサーバ借りてLVS入れてみたり。。
20代はそういう感じで技術に接して良いし、むしろそうであるべきだと思います。行き当たりばったりで手当たり次第に勉強したらいいです。変なバランス感覚は、みなぎるパワーをセーブすることになりかねません。
・・・しかし、30代になってくると誰しも一つの転機が訪れます。
それは、このまま純粋な技術者と進んでいくべきか、別の能力を伸ばしていくか、の選択です。
純粋な技術者として生きていく方向というのも、私はまったくアリだと思います。ただ、その道はその道でかなり厳しいものがあります。
40、50でプログラマをやって「価値を出している」人というのは、業界を見回しても相当少ないです。それにはかなり卓越したギフト(天賦の才)がないと無理です。なぜなら、若い人は息をするように技術を吸収していきますからね。
5年間かけて実案件でもまれつつ改良を重ね、バグを潰して育ててきた技が、jQueryの1メソッドで実現してしまう世界です。建築の世界も似たようなところがあるでしょうが、プログラム屋の技術の進化はその100倍速いです。
30、40になって体力的にどうこう、理解力的にどうこうもありますが、一番シビアなのは長年の経験が突然覆されるところです。
■業務知識とお金のこと
いや、こういう後ろ向きな話ではなく、こと、仕事を「お客様に価値を提供して、その対価としてお金を頂くこと」と定義すれば、仕事を5年8年とやってくると、テクニカルな技を1つ覚えるより、お客さんの業界用語を一つ覚えた方が、よほど役に立つし、お客さんの笑顔を見ることができることに気づきます。
業務知識...
今までクソだと思っていたし、そんなものを知ってもつぶしが利かないと逃げていた業務知識への興味が芽生えてくるのが30代だと思います。
「プログラムはそこそこにして、ある業界の業務を真剣に覚えてよりよいシステムを提案していこうかな」なんて考えはじめたりします。
それとお金の話もあります。
20代は趣味の延長のような感じで仕事をやってきても、30代になってくるとお金のことも真剣に考えるようになります。
たとえば年収600万もらうには、どうしたらいいのか?
通常、サラリーマンエンジニアが会社の看板を借りて、会社の軒下で仕事をして、会社に細かい事務手続きを任せ、リスク無く給与をもらおうと思ったら、その3倍は稼がないといけないでしょう。
となると年間で1800万円です。
人月80万円とすると22.5人月。人月100万でも18人月。この規模を1人で12ヶ月でこなすのは無理というものです。
1人で出来る仕事には限界があります。
必然的に「チームでやればもっと売れるんじゃないか?」という発想が生まれてくると思います。
もしあなたが5人のチームを指揮するマネージャになれば、チームでは年間60人月の仕事ができます。
いや、開発は「手待ち時間」があるので、うまくマネジメントして空き時間を組み合わせれば、倍の120人月稼働できるでしょう。そうすれば、そのうちの18とか20人月分のフィーを管理職の自分がもらってもおかしくはありません。
つまり、一匹狼で「俺が俺が」で仕事を抱え込むのではなく、「部下を指導する」「部下を育てる」「情報のハブになる」「リソース配分をする」「雰囲気作りをする」、、、そういった仕事をしていくということです。
もちろん、そんな仕事をしていると、最前線の技術からは多少なりとも離れてしまいます。
1年もすると、如実に細かいことが分からなくなっていくことに気づき、恐怖を覚えるでしょう。
しかしそこでビビってプログラマに戻るのは賢い選択ではありません。そっちは「迷い」を持つようなレベルの人には行き止まっているからです。
そうではなく、信頼できる能力の高いプログラマを何人も自分の周りに抱えておくことが大事になってきます。
今まで、他人に頼らず生きていこうと技術者の道を選んできたのに、ここからは人に頼って生きていくということです。
これは一つのパラダイムシフトです。
もし管理職には興味が無く、マネージャにならなくとも、
「他人を信用し、仲間に頼ってチームとして仕事をする」
それが私を含め普通のレベルの技術者が取れる「食いっぱぐれのない」「社会にコミットできる」一つの堅い生き方だと思います。