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「更新型」という毒饅頭?

»2011年5月21日
生保のトリセツ

「更新型」という毒饅頭?

しごとにん

10年余り生命保険業に所属し、一社専属の大手国内生保から乗合い代理店、保険ショップ運営を経験。現在は業界から距離を置き、俯瞰できる立場で個別相談や執筆活動を行っております。

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相変わらず大手国内生保や通信販売の医療保険(入院保険)など「更新型」が主流になっているようです。

「更新型」というのは、例えば10年更新であれば30歳で保険に加入した際の保険料が10年後の40歳で計算し直して、その年齢(ここでは40歳)相応の保険料になります。
つまり目先の保険料が、一生涯保険料が上がらない「終身型」よりかなり割安になります。

契約自体(主契約)が20年以上または終身であっても、該当する特約が10年更新であれば、特約部分の保険料は10年で1回リセットして計算し直します。
つまり30歳で加入した際の保険料が10年後の40歳時点で変更(上がる)し、そのまた10年後も同じように扱います。

事例として東京海上日動あんしん生命の医療保険を挙げました。
全く同じ商品での更新型(10年更新)と終身型(終身払い)の保険料の違いを表しています。
更新型は加入した年齢での保険料が据え置きで継続しますが、更新型は10年ごとに保険料がアップします。

こちらは単品の医療保険ですが、特約においても(他社を含む)ほぼ同じような保険料の推移になります。

医療(入院)保険 10年更新タイプと終身タイプ比較
東京海上日動あんしん生命 メディカルミニ 日額1万円(累計:80歳時点)
タイプ 10年更新 終身保障・終身払
男性 月保険料 支払累計 月保険料 支払累計
20歳 2,370 3,547,200 3,290 2,368,800
30歳 2,620 3,262,800 3,940 2,364,000
40歳 2,970 2,948,400 4,860 2,332,800
50歳 4,050 2,592,000 6,560 2,361,600
60歳 6,430 2,106,000 9,310 2,234,400
70歳 11,120 1,334,400 14,200 1,704,000
タイプ 10年更新 終身保障・終身払
女性 月保険料 支払累計 月保険料 支払累計
20歳 2,370 3,561,600 3,440 2,476,800
30歳 2,620 3,277,200 4,160 2,496,000
40歳 2,970 2,962,800 5,180 2,486,400
50歳 4,050 2,606,400 6,970 2,509,200
60歳 6,400 2,120,400 9,780 2,347,200
70歳 11,270 1,352,400 13,940 1,672,800
保険料は10年ごとに上がる 保険料は加入時から据置

30歳代から40歳代への更新についての保険料は、概ね2割ほどのアップなので、「まあ、こんなものか」という感じで、その先の10年後もその程度のアップであればなんとかなるかな、と思うかもしれません。

しかし、図で示したように40歳代から50歳代は4割弱、50歳代から60歳代は6割、60歳代から70歳代ではなんと7割のアップになります。
30歳代からみると70歳代は約4倍強のアップとなってしまいます。

それでも当初10年間だけの保険料なので終身型より割安になり、「こっちの方が安いや」と加入する方もいるでしょう。

販売する側としては「保険は進化しますので、終身型で入るより割安の10年更新で加入して、新しくていいものが出たら切り替えた方が合理的です」などと背中を押します。

一理あります。
考え方としては合理的かもしれません。

しかし生命保険として考えた場合、全く合理的でない側面があります。
お分かりになりますか?

当たり前過ぎて頭痛がしてしまうほどなのですが、生命保険の対象となるのは「経年とともに確実に劣化する私の肉体」です。
通常は60歳のときより30歳の方が健康なはずです。

30歳代から40歳代は無事に過ごしたとして、50歳代のときに斬新で新しい入院保険が出たからと言って健康状態により加入できないこともあり得るのです。
「経年とともに確実に劣化する私の肉体」が対象である以上、廉価の終身タイプの医療保険やその他の保険商品に切り替えるとことができず、これまでの保険を保険料アップに耐えながら継続するしかなくなってしまうことが想定されます。

10年更新については、間違いなく40歳代のときより保険料は大幅にアップし、更に60歳代、70歳代と医療保険が必要となりそうな時期にさらに保険料がアップするので負担が重くなり、継続するためにダウンサイジングを余儀なくされることや、最悪やめた方がいい、となるかもしれません。

さらに死ぬ思いで継続したとしても80歳で打ち止め(90歳のところもありますがそれなり
に保険料も高い)となり、そのあとは無保険となります。
日本人の平均寿命は男性でも80歳に近付き、女性は80歳代半ばとなっていますので、人生で一番入院する時期に、今まで数百万円も支払ってきた入院保険がパーになってしまいます。
終身タイプであれば、80歳以降の継続が可能です。

ただ、明らかに潤沢な老後資金が想定できるのであれば、一生涯の医療保険は不要で、加入していたとしても解約した方が賢明です。
しかし、ほとんどの方が老後資金に不安や不足を感じ、少子高齢化で将来の医療費の自己負担が増えること可能性が高いことを鑑みると、継続可能なコスト(保険料負担)で一生涯の医療保険を確保するのが堅実であると思います。

加入の際、保険料が安いからと言って10年更新の医療保険に加入することは「毒饅頭」を喰らってしまうようなもので、後々禍根を残すことになりかねません。

生命保険の相談や販売の現場では、大手国内生保お得意の「特約の10年更新の医療保険」について単品の終身型の医療保険への切り替えを希望する方が多いのですが、健康上の問題で保険の切り替えが不可の方の場合は、10年ごとに上がるまま維持するしかないケースもあります。
それでも医療(入院)保険は80歳で打ち止めとなってしまいます。

もちろん、この構造を理解して納得して加入するのはありですが、お勧めはできません。

医療保険については、年齢とともにニーズが上がっていくものなので10年ごとに保険料が上がるのが辛いのは当然といえば当然なのです。
しかし、年齢とともにニーズが下がっていく死亡保障については、10年ごとに保険料が上がっても、その分保障額を下げればいいので合理的という理屈があります。

それでは、大手国内生保や割安な通販などの10年更新の死亡保障は、本当に合理的なのでしょうか?

次回検証します。