誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

サッカー日本代表、新監督就任の広報戦略とは?

サッカー日本代表、新監督就任の広報戦略とは?

山森 貴司

早稲田大学商学部卒 元Jスポーツアナウンサー、元群馬テレビアナウンサー兼記者。テレビ番組プロデューサー、たばこ広報団体事務局長、エネルギー広報団体、不動産会社広報PRを経て、PR会社勤務

当ブログ「元局アナの「特ダネ?」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/takajikkyo/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


ザックジャパンはブラジルワールドカップにおいて、「日本らしいサッカー」を標榜しながら惨敗を喫した。そもそも「日本らしい」とはなんなのかを疑問視するサポーターの声も多くネット上に存在していた。

そして今週、ハビエル・アギーレ監督就任が発表されたというのがワールドカップ後の流れである。

あえて「アギレ」ではなく「アギーレ」と書かせていただいたのは、マスコミは呼びやすさで、間違いなく「アギーレジャパン」という確信があるからである。アギレではハギレが悪いからだ。(笑)

広報戦略と書いたが、まずここに狙いがあると思う。もともと3文字のジーコやオシムだとそのままジーコジャパン、オシムジャパンと呼ぶしかないが、4文字の方が呼びやすいのである。ザッケローニは長すぎたので、ザックジャパン。まあ、仕方ない。

 

ザッケローニ監督就任時より1か月以上早い就任となったアギーレ氏。ここにも周到な日本協会の準備が感じられる。前々回のオシムは、ジーコジャパン敗北後、その悪い余韻をわざと絶つために、当時の川渕キャプテンがオシムの名前を思わず記者会見で漏らすという、プロレス並みの子芝居を演じた。(プロレスファンの方、申し訳ない。私もプロレスファンなので許してください)

逆に前回は岡田ジャパンでベスト16に進出したため、あえて次期監督の名前を言うことなく、箝口令を引いていた。某スポーツ紙はぺケルマン氏で決定と早まったぐらいである。

そして今回。惨敗のイメージを払しょくするためなのか、アギーレ氏の名前はグループステージ敗北直後から聞こえてきた。決勝終了後は、完全にアギーレ氏に報道も一本化された。これは何か。そう、サッカー協会がリークしただけである。

 

リークといえば、トルシエジャパン時代、釜本強化委員長がトルシエ氏を更迭しようと、朝日新聞に更迭をリークしたことがある。その際は、ネット上でのトルシエ信者があまりにも多く、フジテレビが当時実施したアンケートではなんと97%の人がトルシエ支持に回り、アンケートが突如中止になったこともあった。ネットの力が、サッカー協会を動かさざるを得ず、結局留任、ベスト16になったのはご存じの通りだ。

トルシエ留任が決まった直後に行われたキリンカップで日本は優勝を飾り、「釜本ざまあみろ」と横断幕が掲げられたのがテレビ中継で流れ、留飲を下げたサポーターは少なくない。

 

アギーレ監督が就任することになり、まだどんなサッカーをするのかなど、わからないことは多い。しかし、サッカー協会が本気になって日本代表人気の下落を食い止めにかかっていることは確かである。

というのも、ザッケローニ前監督の時は、年内に4試合しか代表戦を組んでいないし、ビザが間に合わなかった関係で、9月の2試合は原博美監督代行が指揮をしている。

ところが、今回は、8月11日には就任会見を行うというのだから、今回はかなり周到な準備をしている。年内6試合、アギーレ監督の指揮下で試合が行われる。

それも、コロンビアにコテンパンにやられたのを払しょくするためか、いきなり南米の強豪ウルグアイ、ワールドカップに出場経験はないものの、このところ南米選手権などで好成績を収めているベネズエラの2連戦からのスタートだ。

10月には、シンガポールでブラジルとの親善試合があるという。

日本サッカー協会は、かなり必死と見える。

それもそうだ。日本代表こそアジアではほぼ無敵だが、Jリーグのチームが出場するアジアチャンピオンズリーグでは決勝トーナメント一回戦ですべてのJリーグチームが姿を消した。

 

Jリーグは「ある程度」の市民権を得たといってよいが、テレビの視聴率となると、二けたはまず取れない、視聴率を持っていないコンテンツなのである。

そのJリーグにしても、アンケートでは将来なりたい職業がサッカー選手になって既にしばらくたつが、肝心の観客は40代以上が多く、10代20代を動員できていない。

日本代表だけが、稼げるコンテンツなのである。

来年にはアジアナンバー1を決めるアジアカップがある。そこでどうしても優勝してもらわないと、サッカー協会が困るのだ。日本代表が強くあり続けないと、Jリーグも赤字のクラブが増えてしまう。今年からは3部に当たるJ3も始まった。つぶれては困るのである。

 

Jリーグも、プロ野球の広報体制共に知っている私が思うのは、Jリーグは人気があるという勘違いや驕りを捨てないと、必ずJリーグは衰退し、代表も弱体化する。

記者に対して傲慢な態度を取るチームもあるが、そういった姿勢は即刻改めるべきだと思う。また、それを報道するマスコミの記者たちも、選民思想を捨て、謙虚に報道する必要があるはずだ。

 

アギーレジャパン、今後4年間、大いに楽しませてもらいたい。