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格闘技における最強論の危うさとは?

格闘技における最強論の危うさとは?

山森 貴司

早稲田大学商学部卒 元Jスポーツアナウンサー、元群馬テレビアナウンサー兼記者。テレビ番組プロデューサー、たばこ広報団体事務局長、エネルギー広報団体、不動産会社広報PRを経て、PR会社勤務

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2/28、立ち技最強を決めると称する「巌流島」第一回大会が行われた。

正確には、検証ということで、第一回という冠はなかったのだが、格闘技に関してさまざまな思いが巡ったので、ここに書く次第である。

 

「何をもって、最強を論ずるか?」

 

この巌流島はかつてK-1を手がけた谷川氏が関わっている。今回は相撲、キック、コマンドサンボ、プロレス、カポエイラ、散打、アメフト、セネガル相撲の選手が出場した。

 

「総合格闘技系では惨敗を繰り返してきた、相撲が準優勝」

 

結果は、キックボクシングの選手が優勝したのだが、ここで、ルールを説明せねばなるまい。直径8メートルの円形リング、3分3ラウンド、場外に3回出せば一本、KOももちろん一本、グラウンドでの閉め技は認めないと言うことで、これは路上格闘になれば、相手が多い場合絞め技などをやっている暇はないとのことで作られたルールだそうだ。

 

結果、これまで総合格闘技の世界では惨敗を繰り返してきた相撲の選手が準優勝した。対して、セネガル相撲の選手は1RでKOされている。

ここをどう見るかである。

 

私は、これまでのK-1やUFCなどの競技を見てきて、結局は総合格闘技が強いのかと思ってきた。しかし、この巌流島を見て気づいたのは、あくまで「総合格闘技のルール」でやるから強いのであって、実戦で必ずしも強いかどうかは別の話だと言うことだ。

 

「結局、路上格闘での実戦性か?」

 

確かに総合格闘技は強い。しかし、そこには金網かリングが必ずあっての話である。まして路上格闘で1対1が標準とは言い切れない。以前総合格闘技のチャンピオンであったS選手が路上で襲われて大怪我を負ったとの話もある。自分が技をかけないと言うことではなく、純粋にやられたのである。

私はどの格闘技が一番強いのかさっぱりわからなくなった。

 

「巌流島」で、印象に残ったのは、相撲の元十両星風選手と元ボクシング日本チャンピオンの渡辺選手だった。

星風選手は相手を何十回も投げ飛ばし、場外にも出したのだが、相撲と違い一緒に落ちればすべて「同体」とみなされ、ポイントがつかない。これが路上となれば、下はコンクリート、一発でKOではあるまいか。結局星風選手は決勝ではスタミナが切れてしまい、キックの選手にパウンドでKOされてしまった。

対して、トーナメントではなくスペシャルマッチに登場した渡辺選手は、相手の少林寺拳法の選手に対して、ほとんどパンチを出さず、トリッキーな動きで相手を翻弄し、場外ポイント3つで一本勝ちした。相手の首をつかみプロレス技のフロントネックチャンスリーで場外に投げたシーンは観戦したファンも盛り上がったことだろう。

 

公開検証と銘打っている以上、ルールや進行に拙さがあったのは否めない。場外のマットには隙間があり、選手の足がはまってあわや足が折れてしまうと言うアクシデントもあったと言う。

しかし、路上ファイトでの世界最強を決めるという試みは、非常に興味を引くものである。

 

実際トーナメントは相手を完全にしとめるためのコマンドサンボの選手がキックの選手に敗れてしまうなど、まったく予想がつかないものであった。

 

「もちは餅屋」

 

ルールの改善はともかくとして、私が至った結論は、ノールールという総合格闘技であっても、結局はルールに則って勝負しているのであり、そこに異種の格闘技である空手や柔道があがっても、もちは餅屋なのでかなうわけがないのである。

 

かつて大学のときに、空手サークルの見学に行ったら、先輩が興味深い話をしていた。

彼は剣道3段だったのだが、暴漢に襲われてなすすべもなくぼろぼろにやられたから、空手をはじめたと言うのである。

しかし、こういう意見もある。週刊誌一冊あれば、それを丸めた時点で凶器となり、相手の目を突いて先頭不能にすることなどお茶の子さいさいだというのだ。

 

また、私は半年だけ、試合がない「合気道」を習っていたことがあるが、あるサイトで12年合気道をやり続けている有段者が、空手の有段者に挑んだとき、数秒でやられてしまったという。

これでは、「最強の護身術」と謳われている合気道の立つ瀬がない。

 

「それでも、最強を決めたいか?」

 

結局、最強論は各競技のルール上で始めて成り立つ話であって、それが究極の現場である路上格闘の優越を決めるものではないということだ。

 

私の中でも、まだこの「巌流島」が最高の格闘技だとはとても思わないし、大晦日にスペシャルで地上波でやれるクオリティではない。これからさまざまなルール改正が必要だろう。しかし、格闘技における最強論に関して、課題を投げかけたのは事実だし、

ぜひ、見逃した人はCSフジテレビで、その実際をご覧いただきたい。