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動画がきり拓くUXの新たなレイヤー

動画がきり拓くUXの新たなレイヤー

鹿島 泰介

長年のプロダクトデザインから離れ、インターネット最前線に飛び込んで10年が経過。ITの世界を多角的視点から取り組むデジタルマーケターの鹿島泰介が、デジタルマーケティングとUXの現在や未来について、予見力を駆使しブログを書きつづる。

当ブログ「鹿島泰介の「UXのトビラ2」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/tkashima/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


・動画っていったい何だ:その歴史

動画が、最近大きな注目を集めている。 動画はまずは映画としてスタート、その後昭和30年代にはテレビの時代、昭和50年代にはホームムービーが登場し、ぐっと私たちの生活に身近なものとなった。その後はデジカメ、スマートフォンと続き、構えることなく簡単に、それもイベントではなく生活に溶け込んだ動画がお互いに共有できるようになり、身近さからさらに進んで、すでに生活に馴染んでいる。

動画っていったい何だ:その歴史

特にインターネットの進化がその流れを加速し、ネットワーク上でEメールを通じて送受信するスタイルも出現。すでに幾つかのフォーマットは用途や再生メディアの条件をとおして、ある程度まで整理されてきた。

・伝わりやすさはデータ量をみれば明らか

以前提案力のところで、UX観点からその提案性の高さを示すステップを考えたことがあったが、おさらいすると以下の順序となる。提案自身は、顧客視点で伝わりにくければ、提案力のレベルは低いとも言える。その低い順から以下だ。 テキスト(5KB)→図表(100KB)→イラスト(300KB)→白黒写真(800KB)→カラー写真(1MB)→白黒ムービー(10-20MB)→カラームービー(50-120MB)→より高精細なカラームービー(1GB)→のような順序だ。単純にデータ量に換算するとより明確だ。テキストとカラームービーでは、同じ1分間だと10000-20000倍は伝わりやすいと言えるかもしれない。

伝わりやすさはデータ量をみれば明らか

・YouTubeにより加速する動画文化

この動画文化が決定的に開花したのは、やはりYouTubeに依るところが大きい。いわゆるソーシャルメディアの隆盛が、単なるインターネット上でのテキスト情報の共有から一歩踏み込み、動画までを取り込んだ、広く、深く、そしてより伝わる情報共有へと進化させた。この最大の特長は何と言っても、再生ツールを選ばないことだろう。どのようなフォーマットであれ、どのようなツールや再生アプリのバージョンであれ、インターネットに接続さえできれば動画が見られる。

昨今の動画ブームから、従来のBtoCだけでなく、BtoBもこのYouTubeに関心が高まっている。BtoCではテレビCMなどで顧客が動画に接する機会は多いが、BtoBの場合はお客さまと動画の接点は、これまでは皆無だったと言ってよい。時折イベントなどで見かけても、投資額の割には頭に残りにくいし、そもそも受注に直結するアクションを起こさせる意図が少ないイメージムービーも多いため、ROI(投資対効果)も低い。

YouTubeにより加速する動画文化

・BtoBでも動画が加速

ところが、最近はBtoBでも動画を多用するようになっており、その理由は以下のとおりである。

1.インターネットが、BtoB顧客の第一接点になっている。

2.そのインターネットとYouTubeの相性、これで見るための条件の多くがクリア。

3.動画が企業にとって手ごろに、具体的には価格、画質、処理、アップロードなど。

BtoBでも動画が加速

加えて、BtoB企業が最近は軒並み、テレビCMに興味を持ちはじめているそうだ。特に深夜の衛星放送では、CM単価が30秒で数十万円レベル、しかも多くのビジネスパーソンが視聴している可能性が高いとすれば、そこにも動画の拡大チャンスが準備されている。

・十年単位で今の動画文化が形成された

このトレンドを追い風に、動画は圧倒的な存在感を持ってBtoB市場のマーケティングに溶け込みはじめているが、そのコンセプトや魅力はいったいどこにあるのか。物事が広く一般に普及するには、必ず幾つかのステップを経過する。PCの本格的普及が1980年代半ば、インターネットが90年代半ば、そしてYouTubeが2004年スタートでこれを契機にインターネット動画が広まった。では2010年代半ばは何が起きるのか?これは、誰もが簡単に予測がつくインターネットテレビの本格的スタートだろう。これまでもっとも影響力の高いメディアであるテレビは、これからの十年どのような進化を遂げて行くのか、個人的には大変興味深い。

十年単位で今の動画文化が形成された

・動画のコンセプトについて考える

この十年単位で起こる動画革新の道、UX起点でコンセプトを論じると以下が私は重要なポイントと思っている。

1.スピードのチカラ:とにかく早くて、速い、制作も早く、伝わるのも早く、情報が駆け回るのも速い

2.シナリオのチカラ:伝わりやすい、メッセージを組み込みやすいので、心に届きやすい

3.ビジュアルのチカラ:表現の自由度が大きい、たとえテキストでも動けば違う

4.コミュニケーションのチカラ:相互の意思疎通が、結果として感情移入を引き起こす

動画のコンセプトについて考える

これに最も重要なことは、(1)(2)(3)(4) × クリエイティブのチカラだ。いずれのコンセプトでもクリエイティブの力で良くも悪くもなる。アイデアといえば単純だが、いかに見る人の心を開き、打ち解け、共感を呼び、さらに感動へのルートが引けるかは、全てクリエイティブに掛かっていると言っても過言ではない。

これまで、いくつかの動画制作に私自身も携わって来たが、今後もより多くのお客さまに制作した動画を楽しんでもらいたい。本コラムで述べたコンセプトを今後も練磨し、透徹させたい。 来たるインターネットテレビの時代は、BtoBやBtoCなどの枠を超えたあらゆるビジネスが、動画を起点に考える時代になると私は予測している。

関連サイト

YouTube - 日立システムズ 公式ブランドチャンネル

次回は予定を変更し、UXに最近関わりが深まったエスノグラフィー(観察工学)について考えてみたい。 

※文章中に記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。

 

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