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小さな唐揚げ屋の自分軸
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先日、我が家の近所に唐揚げ屋ができた。
名前は「からあげチャンピオン」。
実は、僕は唐揚げが得意料理で、「唐揚げでは行徳一」と僭称(誰も言ってくれないが、勝手に自分で名乗ること)していた。
なので、心穏やかではなく、いつか「敵情視察」(笑)をせねばと思っていた。
ところが、あいにくダイエット中。ダイエットの方法がレコーディングダイエットなので、カロリーの高い唐揚げは、あまり普段から食べたくないものの一つだ。
ということでなかなか機会がなかったのだが、先週ようやく「敵情視察」に訪れることができた。
その結果、なぜか「からあげチャンピオン」を応援する羽目になってしまったのだった。
● 九州唐揚げ軍団の前哨基地?
行徳の食べ物屋は、専業主婦たちで賑わっているマクドナルドやファミレスなどを除き、平日の昼間は基本的に空いている。
僕が訪れた時のからあげチャンピオンもそうだった。僕以外誰もいなかった。
店員も見当たらず、ならばとその間にいろいろと調査を実施した。
こそこそと写真を撮っていたので、写りがイマイチですみません。
分かったのは、最近唐揚げでのしてきている中津仕込み(中津は福沢諭吉の出身地でもある)だということ。それから、どうも高い油を使っているということ。だが値段は安い。デパ地下の唐揚げが100gで400円ぐらい、こちらは250円といえば、価格感は分かるだろう。
店はこじんまりとしていて、テイクアウトだけ(ただし、小さな椅子が4脚ほどあるので、そこで食べても構わないようだ)。奥に厨房があり、それを含めても4坪ぐらいの広さだと思われる。
九州唐揚げ軍団のとりあえずの前哨基地といったところか? これは手強いかも――などと勝手な想像を膨らませようとしていたら、不審な人物に気づいたのだろう。奥から店長か従業員かよく分からないが、30代と思われる(20代だったら本当にごめんなさい)のどちらかというと美人に含まれる女性が現れたのだった。
● 秘密も営業状況も勝手に語ってくれた
さてはスパイ行為がバレたかと緊張したが、女性は極めて自然な愛想笑い(言葉がやや矛盾しているが感じとしては正しい)を浮かべながらやってくる。
開口一番、「どうやってこの店を知りましたか?」。店舗としては、極めて正しいヒアリング行為である。
「真ん前に釣具屋があるでしょう。あそこによく行くので通りかかっただけ。目についた理由は、僕も唐揚げが得意で、"からあげチャンピオン"などと名乗られたら黙っていられなくて」
「え~。料理が得意な方に来られると緊張します。私、あまり得意じゃないので」。(じゃあ、店出すなよ)と思ったのだが、しかし、それでも"チャンピオン"を名乗れるからには秘密があるはずだ。僕は、さらに興味をもった。
それを察したのかどうか、女性はさらに続ける。「高い油を使っているんですよ(上の写真を見ると、業務用15.88リットルで12,800円とある)。なので、赤字ギリギリなんです」
いきなり営業状況まで語られてしまった。そんなに人懐こくていいのだろうか? ただ、心の中に踏み込まれたのは事実だ。
聞きもしないのに、唐揚げの秘密まで語ってくれた。
それは、フライヤーにあるのだという。トランス脂肪酸ゼロの油がくどくない味の秘密なのだが、それだけではカラッと揚がらない。
店で使っているDr.Fryというフライヤーを使うと、素人でもカラッと揚がるうえ、燃費もいいのだという。なので、この値段で提供できるのだそうだ。
フライヤーの写真も撮りたいと言ったら、さすがにそれは断られた。
● さすがは元営業の店長
女性の名前は、伊達みず恵さん。聞けば店長であり、バルインターナショナル株式会社という会社の代表取締役社長でもあるという。
元々は、トランス脂肪酸ゼロの油の営業をしていたのだという。なるほど、料理は素人だが、営業は素人ではない感じがしていた。
人の心にスッと入ってくる話術や、「極めて自然な愛想笑い」(前述)は、営業経験の賜物だろう。
この写真も撮り直しなしの一発撮りと聞けば、彼女の実力は分かるだろうと思う(笑)。
ただ、店舗経営に関しては、経験が少なく、苦労しているのだという。
● 決して美人だから応援しているのではない(笑)
とりあえず、「ももから」と「むねから」を100gずつ頼んで(ただし、重さは会計時に量る。1つのサイズが大きめなので大幅にオーバーすることもある。注意してほしい)、待つこと4分。揚げたての唐揚げが出てきた。
唐揚げが冷めるのが気になったが、面白そうなので取材を敢行した。なんとなく自分軸に関係しそうな気がしたのである。
森川:なぜ、こんなところに店を出したの?
伊達:葛西に住んでるんですけど、知人の不動産屋になるべく近くということで探してもらったら、ここに空き物件があったからなんです。
森川:(ここ、前の店もはやってなかったんだよな。マーケティング大丈夫かな。)そうなんだ。で、なんで唐揚げ屋なの?
食用油の営業をしていたのは、前述した。ここからがやや複雑なので、地の文で書く。
唐揚げが冷めるのを気にしながらの取材だったので、その場では要領を得なかったのだが、あとでネットで調べて、なんとなくつながりがわかった。
この行徳店は一号店なのだが、以前にも"からあげチャンピオン"というチェーンはあった。創業者は、九州各地を渡り歩いて修業を重ね、今の味を創りだし、都内を中心に多店舗経営をしていたのだが、多忙の末に倒れてしまい、一度は閉店する。その後、この油とDr.Fryに出会い、再起を決意。ようやく行徳店を含む2店を開業。今はフランチャイズのオーナーとして、店舗指導をしているとのことのようだ(帰ってきた「からあげチャンピオン」Facebookページより筆者が要約)。
食用油の営業をしていた伊達さんは、オーナーの理念に共感し、フランチャイズの店長になったとのこと。
なお、この経緯には、あの桑原正守氏(「あの」などと書いたが実はネットで調べて有名人だと知った)が絡んでいるらしい。桑原氏のからあげチャンピオンのブログサイトもあるのだが、この記事を書いている2013年12月10日現在、まだ記事が一つもないからだ。
なので、ここからは想像なのだが、たぶん創業者も伊達さんも、桑原氏の起業セミナーか、その周辺で知り合ったのだろう。
桑原氏自体がどんな人かはよく分からない。ご自身のサイトだけ見ていると与○翼系に見えなくもないけれど、実業家であるのは間違いなさそうだし、いちおう「桑原正守 評判」でググってみたが、そんなに悪い評判はないようだ(多少はあるが、ビジネスをしていて良い評判ばかりだと、何か圧力をかけているのではと逆に心配になる)。
彼のオフィシャルサイトを見て、ご自身で判断いただきたい。たぶん、前回紹介したサトカメの佐藤専務のような、「熱くて、その熱さがあふれちゃって、セミナーもやっちゃってる経営者」なのだろう(両方から十把一絡げにするなと怒られそうだが)。
伊達さんは、「アメリカではすでに食用油のトランス脂肪酸が規制されています。TPPなどの関係で日本でも規制されるでしょう。今までの油を作っている会社や使っている料理店はこのままでは滅亡します」と語る。
それで、おいしい唐揚げを売ることで、トランス脂肪酸ゼロの油とDr.Fryの両方を普及させようという狙いなのらしい。
これは、極めて有効なやり方だ。トランス脂肪酸ゼロの油と低コストで高機能のフライヤーと言われてもまったくイメージが湧かない。しかし、「この美味しくて安全な唐揚げは、この油とフライヤーがないと作れないんですよ」と言われたら、興味が湧く。
その裏には、理念もある。安全な食用油と高機能なフライヤーで、日本の食文化を守るというのがそれである。
まさに、自分軸だ。
決して、美人だから応援しているわけではない。自分軸があるからこその応援だ。
「じゃあ、しょぼくれたおやじだったらお前ここまで書くのか?」などという、イフの話はやめましょう(笑)。
● どういう自分軸なのか?
「まさに、自分軸だ」と書いたが、どういう自分軸なのかピンとこない人もいるだろう。
※初めての方に簡単に説明すると、僕は「誰に・何を・なぜ」提供しているかを自分軸と呼んでいる。これらが明確だと、ビジネスも人生もブレないからだ。
これは、2つの自分軸が重なった、なかなか複雑な構造をしている。下図にまとめてみた。
カッコで囲っていない部分がからあげチャンピオンとしての自分軸、カッコで囲っているのがその深層にある自分軸だ。
細かい説明は、すでに書いたので繰り返さない。見事な二重構造になっていることが分かる。
だた、一つだけ、補足する。「それを使うことによるプライド」とあるが、要するに調理人の自己実現欲求のことを言っている。
本物の調理人にとっては、偽装などというのはあるまじき行為で、安心・安全で美味しい料理を提供し、それをお客が喜んでこそ自分も満足できる(はずだ)。それが調理人の自己実現であり、自己実現を支援する商品というのは付加価値が高まるのである。
自分軸においては、提供相手の自己実現にまで踏み込めているかが極めて重要なのである。
● 肝心の唐揚げは?
さて、肝心の唐揚げはどうだったろうか?
揚がってから、家に持ち帰って食べるまでに約20分。それなのに冷めていなかったし、衣もサクサクのママだった。これには驚いた。K○Cなどでは考えられないことである(もちろん僕の唐揚げでも)。
実際に食べてみると、衣は見た目通りサクサク。実にクリスピーだ。
サイズが大きめなため、100gずつ(都合200g)頼んだのが、全部で270gぐらいになった(ここはトラブルの元になるかもしれない)。それを一人で食べたのだが、まったく胸にもたれなかった。油がいいのが分かる。
それでいて、中の肉は柔らかい。店の宣伝ではジューシーとのことだが、それはちょっと表現が違う気がした。しかし、モモもムネもやわらかいのは確かであり、味付けもさっぱりして僕好みだった。
"素人"が揚げたとは思えない。フライヤーがよほど良いのだろう。あと、写真を撮らせてくれなかったからには、他にも仕掛けがあるに違いない。
正直に言うと、味とジューシーさは勝ったと思った(味は、好みの問題です)。
しかし、この衣のクリスピー感と揚げてから20分ぐらい冷めないというのは真似できない。
この食用油とフライヤーが欲しくなった。
ただ、業務用なので手が出ないのと、そもそもフライヤーを置く場所がない。
残念なことだ。
(注)これはステマでも、広告宣伝でもありません。実際に食べているし、一銭ももらっていないし、唐揚げもお金を払って買いました(値引きもなし)。店長との個人的付き合いもありません。自分軸のネタを提供してくれたので、お礼のつもりで一生懸命書きました。最初は地図を載せようかと思ったのですが、それだと本当に宣伝っぽくなるのでやめました。興味のある方は自分で調べて行ってください。五反田の不動前にもあるようです。