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【次世代PR試論】タンタンと書こう
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前回は、「日本語で文章を書くときに意識しておきたいこととは?」と題して、以下のことを書いた。
- 日本語は、英語のような「S(主語)+V(動詞)」という構造ではない
- 日本語は、「テーマの提示+その記述」という構造に向くような体系になっている
- 日本語がそのような構造であるため、日本人は「テーマ+記述」という流れでコミニュケーションをするのが自然な頭になっている
- 以上を意識して、日本語の文章を書くと伝わりやすくなる
今回は、上記を踏まえて、日本人に分かりやすい文章を書くためのコツについて考察する。
なお、前回も書いたように、新しい日本語文法を提唱するのが本稿の主旨ではない。ライターとして、日本語の文章を書くときに意識していることを書いているに過ぎない。ヒントを提供しているだけなので、そのあたり念頭において読んでいただければ幸いである。
● 日本語の文章の入れ子構造
日本語の文章は、基本的に下図に示すような入れ子構造になっている。
これが書籍などであれば、章や節などがあり、さらに深い入れ子構造になるが、ここでは"文"も含めて3層で考えよう。ぜいぜい原稿用紙数枚ぐらいまでの文章のイメージだ。
このような入れ子構造は、英語の文章でも一緒だという意見もあるだろう。
大きくいえばその通りなのだが、文のレベルになると違う。
英語の文の基本構造はあくまで「S+V」であり、関心事はテーマとその記述ではない。「誰が(何が)何をした」というところが最大の関心事であり、その一連の並びで、テーマについて記述していく。
つまり、英語の文章の場合は、文のレベルを上図のように四角で囲むことにはならない(図では、四角で囲んでいるものは同じ構造であることを示している)。
● 下手くそな翻訳が分かりづらい理由
図で示した構造は日本語が本来持っている構造であり、これに則して書くと分かりやすくなるというものだ。これ以外の構造で書くこともできるのだが、普通は分かりにくくなる
その分かりにくさは、下手くそな英語の翻訳を思い浮かべれば分かる。巧みな翻訳者は、日本語の構造を経験的に知っているので、自然な日本語に変換することができる。
一方、下手な翻訳者は、英語の構造を引きずるため、ネイティブの日本人であれば、頭の中でもう一度日本語から日本語に翻訳しないと理解できないような日本語にする。自然な日本語への変換が出来ていないのだ。
自然な日本語に変換するためには、逐語訳ではダメで、構造の変換が必要なのだ。
こういう事実を持って、僕は日本語と英語は構造が違うというのである。
● タンタンと書こう
さて、日本語の文は短いほうがいいとされる。
理由は大きく2つある。
1つは、「テーマ+記述」という構造なので、テーマの後に長々と続けると、テーマとの関係がよく分からなくなるからである。
よくある悪い文の例として、述語がテーマを受けていないというものがある。
簡単な例を示そう。、
「◯◯なのは、××だからだ。」という係り結び的な対応関係がある。
これが、「お腹が空いているのは、朝ごはんを抜いたからだ。」というような短い文であれば、間違える人はいない。
ところが長くなると、何について話していたか分からなくなるのか、対応関係が壊れることがある。こんな具合だ。「お腹が空いているのは、朝寝坊したのだが、今日は僕が犬の散歩に行く日だったので、片道10分かかる公園まで散歩に行ったところ雨が降ってきた。・・・」
長々と綴っているうちに最初のテーマを忘れてしまったわけである。これはかなり極端だと思うかもしれないが、実際にはよく見かける。
このようなことは、文を短く書くように心がければ防げるものである。
もう1つは、「テーマ+記述」という構造から考えると、1文1テーマであるのがよいからだ。1文1テーマなら自然と短くなる。
先ほどのやや極端な悪い文例だと、テーマが2つあると思われる。「お腹が空いているのは」と「今日は」である。しかも、「お腹が空いているのは」に至っては解決していない。
こういう文は極めて分かりづらいが、1テーマであることを意識すれば、わかりやすくなる。
そこで僕が提唱しているのが、「タンタンと書く」ということである。
タンタンは、「短単」だ。短く、単独のテーマで1文を書くという意味である。
これを心がければ、できていない人と比べると飛躍的に分かりやすい文が書けるようになる。
ただ、「タンタンと書こう」と指導しても、出来ない人はなかなか出来ない。
そこで次回は、タンタンと書けるようになる訓練法を紹介したいと思う。