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【次世代PR試論】広告の仕様書を作る(2)
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前回から広告の仕様書であるオリエンシートの作り方を書いている。
大きく4つのステップ――現状の共有、商品軸を作るための材料の洗い出し、商品軸の言語化、オリエンシートの作成――で作ると書いた。この方法論は僕独自のものだ。
オリエンシートを書かない会社(求めない広告代理店)も多いし、ここまで時間を費やす会社も少ないと思う。
しかし、準備が十分でないと結局時間がかかってしまう。
なぜだろうか?
● 広告制作に時間がかかる理由
たとえば営業部門が新商品のプロモーションのためにマーケティング部門にプロモーション動画の制作を依頼したとする。
マーケティング部門はそれだけでは広告代理店に外注できないので、営業部門にヒアリングするだろう。
ヒアリング内容は、商品そのもの特徴や価値、その商品を販売する背景や理由、販売目標と販売戦略、販売ターゲットのプロフィールなどになるだろう。
マーケティング部門は、以上をまとめた資料を作成し、広告代理店にプロモーション動画の作成を外注する。
広告代理店は、まずは1週間ぐらいかけて絵コンテを作ってくるだろう。それを使って、マーケティング部門同席の上で営業部門にプレゼンをする。
準備不足だと、ここからが時間が掛かるのだ。あるマーケティング担当者から聞いた話では、絵コンテを6回ぐらい修正するケースもあるという。
ある程度まとまったと思って最終承認者の事業部長に見せたところ、一からやり直しになるというようなこともよくあるのだという。
事前に広告のコンセプトが関係者全員で共有されていないと、このようなことになりがちだ。
● SWOT分析の詳細
前置きが長くなった。前回の続きに入る。SWOT分析の詳細を説明するのだった。
前回も紹介したが、SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つを洗い出して、状況分析をする手法だ。
この4つを洗い出したあと、ぐっと睨みつけて、何らかの分析結果を導き出すというやり方もある。ただ、僕には無理だったので、クロスSWOT分析という手法を採用している。
クロスSWOT分析とは、2つの内部要因(強み・弱み)と2つの外部要因(機会、脅威)を組み合わせて分析する手法だ。文章で説明しても分かりづらいと思うので、下図に実際の事例を文字をぼかして掲載する。
クリックすると拡大図が出てくるので、字が小さくて見えないという方は、そちらを見ていただきたい。
縦に内部要因として強みと弱みを記入する欄、横に外部要因として機会と脅威を記入する欄がある。まずは、強み・弱み・機会・脅威を洗い出して、それぞれの欄に記入する。
次に、強みと機会がクロスする欄に、リソースを集中したり拡大したりすることを考えて記入する。
続けて、強みと脅威がクロスする欄に、脅威への対策を考えて記入する。
さらに、弱みと機会がクロスする欄に、弱みをなくすための改善案を考えて記入する。
最後に、弱みと脅威がクロスする欄に、リソースを撤退したり縮小したりすることを考えて記入する。
多くのクロスSWOT分析の手順説明では、クロスする欄にどういう観点で記入すべきかを書いていない。僕の手順説明では、そこが明確になっているのが特長だ。
● 重要成功要因がバイブルとなる
以上の洗い出しおよびクロスする欄への書き込みは、社内関係者全員で行うことが肝要である。
SWOT分析の仕上げは、左上の「重要成功要因」の欄を記入することだ。手順は以下の通り。
クロスする欄に書き込まれたものを、重要と思う順に並べ直す。枠ごとではなく全体で並べる。
そして、上位3位ぐらいまでで文章を作ってみる。不足と思えば、5位ぐらいまでなら付け加えてもいい。
重要成功要因は関係者全員で合意しなければならない。
なぜなら、今後の広告のレビューにおいては、重要成功要因がバイブルになるからだ。修正依頼は、重要成功要因に沿っているかどうかが採用のキーとなる。
たとえば重要成功要因に「企業の戦略を左右する商品なので、役員クラスへのトップアプローチをする」とあったとする。広告の中間レビューをしたところ、ある営業マンが、「担当者から徐々に役員にエスカレーションしていくのが普通だ。これだと、担当者クラスには分かりづらいので彼らに分かるようにしてほしい」と言ったとする。重要成功要因と照らし合わせれば当然却下となる。
重要成功要因がない、あるいは合意されていなければ、このような要求が出るたびに議論になり、場合によっては広告が修正されていく。結果として時間がかかる。
SWOT分析の重要性がお分かりになっただろうか?
次回は、商品軸の材料集めについて述べていきたい。