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【次世代PR試論】広告の仕様書を作る(1)
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前回は、今後の広告の方向性を示すものとして、DoveのCFを取り上げた。
どうすればこのような広告を作ることができるようになるのだろうか?
長くなるので、何回かに分けて説明していく。
● オリエンシートとは?
Doveがどのように広告を作っているのかは、正直分からない。ただ、あれだけのCFなので、きちっとした仕様書があるに違いない。
広告代理店に広告制作を依頼するための仕様書をオリエンシート(オリエンテーションシート)と呼ぶ(僕は内製する場合でも作成をお勧めしている)。
僕自身は、広告業界にいた人間ではないので、実際のオリエンシートはあまり見たことがない。ただ、導入成功事例(あるいは「お客様の声」)という高い客観性を狙った広告を40本以上書いてきたので、企業が広告をどうやって発注しているのかはだいたい分かる。
一部のテレビCM慣れしている企業を除けば、ほとんどの会社で発注時にオリエンシートなど作成していないはずだ。
ネットで調べても、オリエンシートの作り方は確立されたものではないように思われる。
おそらく打ち合わせの議事録がオリエンシートの代わりになっているのであろう(実際、事例制作では取材の前に発注企業とライターで打ち合わせをして、それで制作する事例の方向性を決める)。
● オリエンシートを作成しようにもノウハウがない
先ほどオリエンシートの作り方は確立されていないと書いたが、フォーマットはほぼ確定している。その中身を書くためノウハウがないのだ。
こういったノウハウは、企業内で長い時間をかけて作っていくもののようだ。いわゆる暗黙知であり、そのため企業間で共有されるものでもない。
なので、企業のマーケ担当者が、効果的なプロモーションのためにオリエンシートを作ろうと思い立っても、多くの場合途方にくれることになる。
僕に相談してこられた方も、そのような方だった。
そこで、僕が開発した「自分軸」の方法論を援用して「商品軸」を作り、それをベースにオリエンシートを作成したらどうかという提案をした。提案は採用され、実際にオリエンシートの作成のためのワークショップを開催した。
以下、その概要を説明する。
● オリエンシート作成の手順
下図が僕の提案したオリエンシート作成の手順だ。
6ステップあるが、大きく4つのフェーズがある。現状の共有、商品軸を作るための材料の洗い出し、商品軸の言語化、オリエンシートの作成の4つである。
商品軸の言語化までは、マーケと営業が共同で作り、オリエンシートはマーケが単独で作った(もちろん営業のレビューは経る)。進め方はワークショップ形式で、僕はファシリテーターを務めた。
以下、順に説明していこう。
● SWOT分析は情報共有ツール
最初にSWOT分析を行う。目的は、社内関係者間での商品およびそれを取り巻く状況の共有である。
多くの会社で実際に目撃しているのだが、マーケと営業は意見が対立しがちだ。僕のような部外者の前でも平気で口論を始める。
営業は今すぐにでも売りにいきたい。マーケは費用対効果の高い広告を作りたい。どちらも究極の目的は商品を売ることにあるのだが、考え方やスピード感が違うため対立してしまうのだ。
多くの場合、どちらかが主導で広告作りに向かうのだが、どちらがイニシアティブを握っても後々しこりが残る。それ以前に、やはりそれではいい広告はできない。
最初にマーケと営業(時には開発が入ることもある)の間の温度差を埋めておく必要があるのだ。
僕のコンサル経験では、このようなときに一番力を発揮するツールは、SWOT分析である。
SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つを洗い出して、状況分析をする手法だ。SWOT分析の結果、次の打ち手が見えることも多く、その記述も含めてSWOT分析ということが多い。
強みと弱みは内部要因であり、機会と脅威は外部要因である。内部と外部の両方の要因をもれなく挙げることで状況を正確に把握できるのである。
ネットなどで調べるとSWOT分析は役に立たないという論調もあるのだが、よく見ているとそれはSWOT分析の正しいやり方を知らなかったり、使用目的を誤っていたりするだけのことが多いようだ。
どんなツールも目的を誤ると無意味なものになる。SWOT分析を、全員が現状を把握するための「情報共有ツール」と捉えると俄然力を発揮する。
僕が実際にコンサルした例でも、セッション開始早々に営業とマーケの口論が始まり険悪な空気になった。だが、SWOT分析が完了したときには、双方歩み寄り、建設的な意見が飛び交うようになった。
SWOT分析をバカにしてはいけない。
次回、引き続きSWOT分析を具体的に見ていくことにする。