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フリーライターは食えるのか?

フリーライターは食えるのか?

森川 滋之

ITブレークスルー代表、ビジネスライター

当ブログ「ビジネスライターという仕事」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


0f2890d83857f2d3e50d317c4ef807c2_s.jpgいきなり、ストレートすぎるタイトルで申し訳ありません。

後述するように、フリーライター同士で報酬額の情報交換などすることはまずないので、あくまで個人的な体験に基づく考察です。そう大きく間違ってはいないと思うのですが・・・

『ゴーストライター』なんてドラマ(あれは小説家の話のようですが)が制作されるぐらいなので、ライターへの関心もあるのではと勝手に考えています。

適当にキーボードを打ってお金になるなら、自分もやってみたいという人も多いんじゃないでしょうか?

そんなに甘くないと言いたいところですが、意外と甘いかもしれません。

まあ、その辺は、読んだ上でご自身で判断いただくとして、まずは雑誌やWebでの執筆料の相場という、香ばしいお話から参りましょう。

◆あくまで個人的な相場感だが

この辺は本当に媒体によってもピンキリだし、そもそもライターの横のつながりなどあまりなく、そのうえいくら貰ってるなんて情報交換などするわけもないので、僕個人の過去の報酬から、だいたいの相場を割り出しています(個人情報さらしてるわけです)。また、僕はIT系の媒体に主に書いているので、平均単価でいえば(たぶん)高いほうだと思われます(僕が高いんじゃなくて、IT系が高いという意味です。くれぐれもお間違えなく)。

以下、僕が素直に編集者のいうことを信じた上での相場感です(「うちは一番高くてこんなもんですよ」とどの会社の編集者も言うのです)。売れっ子ならこの10倍以上もらっている人もいるかもしれません。ただ、10分の1ということはないでしょう。

また小説家のことは分かりません。あくまでフリーライターの単価です。

まず雑誌。雑誌の場合はページ単価となります。IT系の場合だと、1ページ8000円~15000円ぐらいでしょうか。

これに対して、Webは1本あたりの単価となります。これもIT系の場合だと1本8000円~15000円ぐらいです(おお、雑誌のページ単価と一緒だったのか! いま気づきました)。20000円を超える仕事もありますが、これはIT系じゃありません(しかも、取材が自腹です)。

1本あたりと言われてもあいまいですね。僕の場合、この価格帯で提示されたら、内容にもよりますが、文字数でいえば3000~6000字ぐらい書きます。僕は、ダラダラ書くほうなので、文字単価は安くなりがちです。

Webの場合、文字単価でオファーされることもあります(この場合、文字数の上限は決まっています)。過去実績では5~10円といったところです。なお、推敲というのは文字を削るためにやるものですが、この場合だけは文字を増やすためにやります。

ところで、僕は文芸誌に書いたことがないので分からないのですが、文芸誌は今でも原稿用紙1枚あたりいくらなんて計算をしているのでしょうか?

◆クラウドソーシングはきつ過ぎる

月どれぐらい書けば、今の収入を超えるのかなどと計算している人がほとんどだと思うのですが、その手を休めて、もう少しおつきあいください。

というか、会社員なんか辞めるもんじゃないですよ。なんせ社会保険料を会社が半分負担してくれる――僕はそれだけでも再就職したくなるぐらい、国民健康保険や国民年金はきついです。払わない人だらけなのも仕方ないけれど、払っている人の負担が増えるので、また払わない人が増える・・・負のスパイラル中です。しかも、厚生年金に比べると国民年金なんか半分ぐらいしかもらえないんですよ。あと、どんなに収入が少なくても地方税は負けてくれません(T T)。

世の中の仕組みをきちっと知ってから、独立しましょうね(こんなことも知らずに独立した者が言うのだから本当です)。

さて、結構貰ってるなという感じでしょうか? それともこんなもんかという感じでしょうか?

僕の考えでは、普通(?)の出版社というのは割と良心的だと思います。ライターと持ちつ持たれつ感というのは確実にありますね。

これが広告代理店や情報誌系の出版社は結構きついケースが多いです。こちらはライターはあくまで外注業者です。クラウドソーシングサイトに行くとライター募集が多数掲載されていますが、文字単価1円を切るような仕事がたくさんあります。これらの募集をしているのが、この手の会社です。

文字単価1円としたら、年に150万字書いても150万円(計算が簡単で助かります)にしかなりません。150万字といえば、A5版の単行本15冊分ぐらいです。本15冊書いて150万円? やるもんじゃありません。

◆本を書いて生活するなんて

そうそう本の執筆料というのもありました。ゴーストライター(SEO対策ワードをちりばめてみました)なんかもありますが、これはなかなかおいしい仕事でして、1冊40万円~90万円ぐらいになります(ゴーストライターについては改めて書きます。僕としては「ブックライター」と言いたい)。

なお、自著の場合は、印税の前払いという名目で執筆料が貰えます。これは初版5000部ぐらいのビジネス本なら、だいたい40万円~60万円というところです(売れっ子はもっともらえるでしょう。初版部数によるところが大きいので)。

話を戻すと、本15冊も書けば(まあ年に15冊も書かせてもらえる人はそうそういませんが)最低でも年600万円の執筆料が入ってきます・・・あれ、そんなもんなの?

そう、本を書いて生活するなんて、夢のまた夢なんですよ。100万部のベストセラーを出せれば、印税だけで億単位になりますが(翌年の税金を考えるとくらくらします)、それこそ宝くじを買い続けるほうが堅実と思えるような確率です(自分の才能×編集者の才能×運ですからね)。

◆で、フリーライターは食えるのか?

さて、さきほどみなさんの計算を中断してしまったので、僕が代わりに計算してみましょう。

「食える」というのも人によって事情が違うので、一概に年収いくらが食えるというレベルなのかは難しいところです。

ですが、正社員の平均年収が442万円という統計もいちおうあるようなので、そこを目指すことにしましょう。

これが取っ払い(いきなり業界用語ですみません。源泉徴収後という意味です)なのかどうかはわかりませんが、先ほどからの報酬の話は税引き前だったので、それでいきましょう。

雑誌1ページ・Web記事1本で1万円としましょう(計算しやすくしておかないと、すぐ間違えるので)。

442万円といえば、月で割れば36万8333.333・・・円、えーい37万円です。

フリーライターにボーナスなどないので、毎月雑誌なら37ページ、Web記事なら37本書かないと、正社員の平均年収に届きません。

たとえば、月刊誌2誌に4ページずつ、週刊誌2誌に2ページずつで、トータル24ページ、つまり24万円です。まだ、足りないのでWeb記事を13本。うわー、大変な仕事量だ。

雑誌1ページだと、1200字というところでしょうか(ほかに画像もありますので)。Webは3500字としておきましょう(この記事で3700字超えてます)。とすると、74300字です。だいたい新書1冊分ですね。毎月、新書1冊分書いて、ようやく正社員の平均年収です。

フリーライターの仕事は、執筆だけではありません。取材もありますし、場合によってはカメラマンをやることもあります。その上確定申告も自分でやらないといけない(ちなみに面倒くさいと青色申告をしないフリーランスが多いようですが、それは結構損だと思います)。

単価が上がればもっと楽になるのではと思うかもしれませんが、その分取材が大変になったりとか、もっと高度なことを書くために勉強する費用がかさんだりとかするので、それほど楽にはなりません。

ただ、大変な仕事量ではありますが、不可能な量ではありません。よっぽど好きなら、やれる量でしょう。

それ以前にこれだけの仕事をもらうほうが大変です。実際にフリーライターで食えている人を見ると、まずはこれだけの仕事を取って、そのうち本を出して、その印税がそこそこ収入になったり、本がきっかけでマスメディアに出られるようになった人ぐらいです。

ということで、フリーライターで食べていけてる人って、かなり才能のある人だと思います。

◆ライター専業の1つの可能性

しかしながら、もうちょっと食えそうな仕事はあるんです。いわゆるフリーライターとは違う能力が必要だけど、15年以上会社員が務まった人(あるいは務める自信のある人)なら持っているような能力です。

その仕事というのが、ビジネスライターなのです。

これは、広い意味ではフリーライターの一種ですが、法外な量を書かなくても執筆料だけで食べていけそうな可能性のある職種です。コピーライターと紛らわしいのですが、必要とされるスキルや成果物はかなり違います。

現時点では、同じような仕事をしている人はいると思うのですが、「職種」として認知されているものではありませんし、一言で説明するのも難しいと感じています。ただ、僕としては、「職種」として認知されたい(「ビジネスライターをやっています」といえば、仕事の説明になるようにしたい)と考えていますので、今後引き続き、いろいろな角度で「ビジネスライター」とはどういうものかを書いていきたいと思っています。

もちろん、ライターの可能性はこれ以外にいくつもあるでしょう。それらを否定するつもりは全くなく、「僕はこういうところに可能性を見つけました」ということを書きたいだけです。それがヒントになる方もおられるでしょうから。

◆ところで誠ブログは?

ところで誠ブログはいくらくれるのか?

以前、「たばこの火を布団の上に落として焦げ穴を作ってしまった程度の炎上」を経験したことがあるのですが、そのときに「金貰って、この程度かよ」という辛辣なコメントを頂戴しました。

僕はひっくり返りました。「誠ブログに書いて、金を貰えると思う人がいるんだ・・・」と。

そんなものただですよ。それどころか、たまに誠や誠Biz.IDに転載されることもありますが、それさえもただです。しかも、事後報告だったりします(笑)。ちなみに、誠や誠Biz.IDは執筆料が貰える媒体ではあります(アイティメディアさんから依頼があれば)。

とはいえ、アイティメディアさんは良心的な会社だと思います。特に支払いが早い!(いちおうフォローになってますか?)

で、僕は先ほどのコメントに対して、「無料なんですけど」と書いたら、「ただなら何書いてもいいのかよ」と怒られました。おっしゃる通りなんですが、それなら「金貰って」などと書かず、単に「くだらないこと書くな」でよかったのではないかと、今でも思う次第です。

<注>オレンジ色で書いた部分は、公開翌日の2015年1月21日に追記したものです。この部分がないため、意図がよく伝わらなかったと反省して、追記しました。

追記

▼ビジネスライター森川滋之オフィシャルサイト

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