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12月24日 物心一如~二元論で考えるからダメなのでは(#580)
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ここに来て、松下幸之助さんの言うことに対して批判的なトーンの記事が多いことに気づかれている方も多いのではないでしょうか。
さすがに毎朝毎朝、松下さんの言葉――しかもベストセレクションのはず――を読んでいると、松下さんの思想の素晴らしい部分も、逆に限界も見えてきます。
素晴らしい部分(素直な心の実践など)はあまり真似されず、限界(成功至上主義など)に関しては安易なコメントをする人で世の中満ちあふれている、気がします。
もちろん以上は、私個人の感想ですから、違う主張があるならそれでいい。ただ、善し悪しは別として、では、そこまで突っ込んで考えていましたか?というのは問いたい。
まあ、そんな気分なのです。
さて、本日の松下さんは、心の豊かさと物資的な豊かさの両方が満たされてはじめて真の幸せがもたらされる、と言っています。
そんなんあたりまえやんけ、という人もおられるでしょうが、私は、このような考え方こそ、日本人がなんとなく幸せでない(※)原因ではないかと思うのです。
※幸福度に関しては、震災後自分は幸福だという人が増えました。特に子供たちの間でそうなのは嬉しいことです。しかし、将来に対する不安感に基づく不幸感は、まだまだ根強いと思われます。
心の豊かさについてはひとまずおくとします。
我々の先輩世代は、終戦後の焼け野原の日本を復興させ、物質的な豊かさを達成すれば、幸せがあると信じて、それこそ馬車馬のように働いてこられました。
そして、ちょうど団塊世代と言われる人たちが一斉に定年退職を迎える頃、日本における物質的豊かさはピークを迎えました。
その結果得られたものは、世界で70位から80位ぐらいの幸福度ランキングの順位でした。当時世界2位の経済大国だったというのに、ちなみに物質文明の極致、世界一の経済大国であるアメリカ合衆国は日本よりさらに下位ランキングでした。
これは、日本人やアメリカ人のやる気をそぐための陰謀かなにかか?
そうなのかもしれません。ただ、そうだったとしても、このランクは日本人の実感にあったものでした。
心の豊かさがないから、それは間違いありません。
しかし、私はもっと違う問題提起をしたい。それは、心と物という二元論がおかしいからではないか。
ちなみに哲学の世界では、物心二元論というのはすでに主流ではありません。たぶん間違いだろうというのが主流だと思われます。
ならば何が正しいかというと結論は出ていない。ただ物心二元論で考えると不都合が多いということのようです。
哲学の難しい議論には立ち入らないで(私の理解もこの程度ですし)、我々の常識の範囲で考えてみましょう。
二元論がダメなら、多元論か一元論ということになります。
多元論は、物と心などという単純な見方はやめて、もっと多くの要素に分解して考えようということです。幸せなら幸せの尺度として10ないし20ぐらいを用意して、それぞれで測定し、足りないところを埋めていこうという考え。
これは、視野が広くなり、こういうところは不幸かも知れないけれど、こちらでは幸せだから、いいんじゃないのというプラス思考に結びつく可能性もあります。
なので多元論で多様な幸福というのもいいと思うのですが、一方で一元論も捨てがたい。
心を磨けば、物資的な幸せもついてくる。心と物は切り離せない――きわめて日本人的というか、日本にしかないと思われる思想です。松下さんの好きな「商道」につながる考え方です。
たとえば、「剣禅一如」という言葉があります。江戸時代初期に出てきた考え方です。これは、元々は殺人の技術である剣術なのに、それを究めれば、禅の悟りを得られるという考え方です。
「商道」も似たようなもので、支配階級である武士の倫理でいえば卑しいことである金儲けなのに、それを究めれば世のため人のために貢献することになるという考え方です。
江戸時代の大規模な治水工事や交通インフラの整備は、ほとんどが大商人の手によって行われました。また、世界にさきがけて為替や先物取引が日本で発生したのも、商人が自発的に約束を守るという世界的には考えられないことを、日本の商人がやっていたからなのです。
タイトルを見れば「物心一如」とあるので、松下さんが本当に言いたかったのは、物心二元論ではなく、一元論のほうではないかと思います。ただ、言っている内容は、分かりやすいようにしたかったのか、二元論にほかならないように思います。
今日の一言)物と心は切り離せないことを前提にして、幸せの尺度は多様化するのが、幸福度を高める秘訣。
本年の一日一言は、『松下幸之助 成功の金言365』を毎日1ページずつ読んで、自問自答するという趣向です。
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