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シンプルな戦略が一番?~教訓はあるような、ないような・・・(一日一言 #89)

シンプルな戦略が一番?~教訓はあるような、ないような・・・(一日一言 #89)

森川 滋之

ITブレークスルー代表、ビジネスライター

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複雑に練りこんだ戦略よりも、一貫性があって分かりやすい(つまり誰にでもできる)戦略が勝ることがある。

●解説

ゲーム理論というのをご存知でしょうか?

複数の選択肢があるときに、最良の選択をするための理論と言えば良いでしょうか。

応用分野は極めて広く、ゲームはもちろんのこと、コンピュータのアルゴリズムや、はては企業戦略の立案にまで使われます。

ゲーム理論には面白い例題が多く、本日紹介する「囚人のジレンマ」は特に有名です。

囚人のジレンマとは、次のような話です。

あなたが二人組で銀行強盗をしたとします。

あえなく捕まってしまい、別々の取調室に入れられて、刑事から次のように言われます。

「二人とも黙秘するなら、証拠不十分で懲役1年というところだな。二人とも自白するなら5年というところだろう。しかし、お前が白状して、もう一人が黙秘すれば、お前は無罪放免だが、向こうは10年だ」

正義感の強い(?)あなたは、仲間を裏切るまいとしますが、刑事の次の一言でジレンマに陥ります。

「言い忘れたが、向こうにも同じ条件を伝えてあるからな。まあ、よく考えろ」

もちろん相棒と連絡する方法はありません。どうするのがベストかなかなか分からないと思います。

なお、一番「合理的」な判断は、二人とも白状して5年の刑をくらうことだと言われています。私はこのことを知ってから、「合理性」というのはあてにならないものだと思うようになりました。

確かに、相棒を信じて黙秘を続けるというのは、不合理かもしれません。ただ、人の道(銀行強盗をしておきながらナンなんですが)は、また別・・・。と感じる人も多いかもしれませんね。

 

さて、銀行強盗は不道徳だという人がいるようでして、次のような例題に変更されました。

「協調」と「裏切り」というカードを用意する。両方が「協調」を出したときは、両方とも3千円ずつもらえる。両方が「裏切り」を出したときは、両方とも1千円ずつもらえる。片方が「協調」でもう片方が「裏切り」の場合は、「裏切り」を出したほうだけ5千円がもらえる。

これを連続200回行うとしたら、どういう戦略が一番良いのか?

1984年、コンピュータのプログラム同士での、大会が開かれたことがあります。それぞれ5回勝負の総当たり戦をやり、その平均得点を争うゲームです。

優勝したのが、どんなプログラムか分かりますか?

最初は、「協調」を出し、以降は相手が前回出したカードを出していく、という単純なプログラムだったんだそうです。なおこのプログラムは、TFT(ティット・フォー・タット;しっぺ返し)と呼ばれています。

●裏解説

それでは、あまりにも単純だと、第2回大会が開かれました。目標はTFTを倒すことです。

中には、統計をとりながら、相手のパターンを推定し、それを上回る手を打ってくるという高度なものもありました。

さて、結果は?

2回目もTFTが優勝しました。

このTFTですが、4つの特徴があると言われています。

  1. 自分からは決して裏切らない「上品」さがある
  2. 相手が裏切れば、即座に裏切り返す「機敏」さがある
  3. 相手がやはり協調がよいと気がつけば、水に流して協調する「寛容」さがある
  4. 相手からみて「単純」な戦略であり、戦略を読んでくる相手は協調せざるを得ないと気づく

これが本当の教訓なのかは分かりませんが、なんとなくビジネス(つまり実社会)でも重要な成功要因のように思えませんか?

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追記

私が、本当にこれが教訓なのか分からないという理由は、コンピュータに「協調」と「裏切り」という言葉の意味が分からないだろうと思うからです。

TFTの4つの特徴も、「協調」カードと「裏切り」カードの報酬を入れ替えるだけで、「上品」が「下品」に、「寛容」が「不寛容」になるように思うのですが・・・。

つまり、「協調」と「裏切り」という言葉に意味づけしているのは、コンピュータのプログラムではなく、発案者と参加者なんですね。

ただ、単純さと機敏さは、それでも残る重要要素に思います。