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20世紀に常識は常識でなくなったが、いまだに新しい常識は普及していない(一日一言 #90)

20世紀に常識は常識でなくなったが、いまだに新しい常識は普及していない(一日一言 #90)

森川 滋之

ITブレークスルー代表、ビジネスライター

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斜に構えることなく、しかし常識は疑う。

●解説

考えれば、20世紀はたくさんの「常識」が常識でなくなった世紀でした。

相対性理論なんて、まったくもって常識ではよく分かりません。時間は観測者の速度によって伸び縮みする?理屈は分かるのですが、やはり実感としては分かりません。

量子論などはもっとよく分かりません。電子をはじめとする素粒子は波だが、観測すると粒子になるんだそうです。そのおかげで位置と速度は確定しない――どころか、なんと同じ素粒子が同時に二箇所に存在しうる。これも実験結果を見ると納得せざるを得ないのですが、実感は伴わない。

宇宙がこんなんだから、数学なんかもよく分かりません。「無限」に「無限の階層」があるなんて言われても・・・。とほほです。ちなみに最小の無限は、ℵ0(アレフゼロ)と呼ばれ、これは自然数のことです。ただし、こういうことは19世紀から研究されています。

無限の話は、20世紀になってさらに研究され、最終的にはゲーデルの不完全性定理というものに落ち着きました。結論を誤解を恐れず分かりやすく言うと、無矛盾の数学は作れないということです。

理性の最高峰と言っても過言ではない数学において、どんな公理系を採用しても必ず矛盾が起こると言うことなんですね。まさに理性の危機です。

理性といえば、前回ご紹介した囚人のジレンマをはじめとするゲーム理論。ゲーム理論においては、人間が合理的にふるまおうとすればするほど、不幸な結末が起こる事例がいくつでもあります。

先日ご紹介した逆正弦定理なども同様で、素朴な確率論を信じると、勝ち負けはとんとんに落ち着くと思いきや、10人に1人ぐらいは、極端に勝ち続けたり、負け続けたりする人が出てくる。

社会科学においても、常識はずれな法則はたくさんあります。

以前ご紹介した『モチベーション3.0』に関わる心理学・社会学などの新しい常識は、20世紀初頭にはまったく想像もされていないものでした。

アロウの不可能性定理というものもあります。これも誤解を恐れずに言えば、民主的な意思決定などというのは幻想に過ぎず、選択のしかた次第で選択されるものが変わってしまうという法則です。

たとえば、ゴアとブッシュが争った2000年の大統領選挙。実際に行われている選挙人制度のうえでもかなり疑惑がある選挙でした。間違いなくいえるのは、国民の直接投票ならゴアが22万票も上回って勝利していたということです。

もちろん定められたルールでやるべきことなのではありますが、この結果を見てブッシュが真の大統領なのかという疑問を持った人は多数いたことでしょう。

経済学においても、以前は人間は合理的判断に基づいて行動するというモデルで経済活動を説明していましたが、現在ではそのようなモデルは現実的でないとされています。

その証拠かは分かりませんが、最近のノーベル経済学賞は経済学者でない人が獲得するケースが出てきました。2002年のノーベル経済学賞は、ダニエル・カーネマンというアメリカの心理学者が受賞しました。

●裏解説

さて、私自身以上のことをどれだけ理解しているかと聞かれると心許ないのです。かなりの高等数学を理解することが求められることがほとんどなものですから。

しかし、我々が「常識」と思っている多くのことが、学問の世界ではすでに非常識になっているという状況は理解できます。

高等数学を使わない例を出せば、日本史などでもそうです。

私は、大学の国史学科に籍を置いていましたが、当時(1980年代半ば)では、古文書に「百姓」(ひゃくせい、と読む)とあれば、それは農民のことでした。

ところが、90年代に入ってからの研究では、まさに字の通り「あらゆる姓」ということで、庶民全体を指すということが分かってきました。

もっと驚くべきことに、「水呑百姓」といえば「貧農」の代名詞だったのが、実は田畑を持たないだけで、商業的な活動で富を蓄えている人たちがいたことまで分かってきました(しかも、江戸時代の話です)。

歴史などと聞くと、多くの人は確定したものだと思っているかもしれません。しかしながら、現実はこのようなのです。

ですから(とまとめるのは飛躍があるのは承知のうえで)、あらゆる常識は疑うべきものだと思うのです。

営業やマーケティングに関してもそうでした。

未だに売り込むテクニックがあると思っている人は多いようで、それを教えて欲しいと言う人は後を絶ちません。

しかしながら、多くの営業やマーケのコンサルタントのいうことは、そのまったく逆のことです。

そして、そのようなことを口を揃えて言うようになったのは、この数年のことなのです。

あなたが常識だと思っていることを、まずすべて疑うことからはじめましょう。

もちろん全部が間違いなどというつもりはありません。ただ現状を打開したいのであれば、いったんいろんなことをカッコに入れて考えてみるべきではないかと思うのです。

その際に大切な態度は、所詮常識など通用しないと斜に構えるのではなく、まずはいろいろな意見があることを認めて、「常識はずれ」と思うことも素直に俎上に載せて考えてみるということではないでしょうか。

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