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七草粥に想う

七草粥に想う

郷 好文

株式会社ことば代表“ことばのデザイナー”。Business Media 誠「うふふマーケティング」を連載中。生活者と商品の真ん中にある“やんごとなきこと”をえぐって、ことばのギフトを贈ります。

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今夜は七草粥の日。みなさんも七草粥を食べたことでしょう。

ぼくも頂きました。歯ごたえもなくて味も薄くて、ちょっと物足りないけれど、正月で疲れた胃腸にはそれが丁度良いとされている。今さらですが七草って何?と言えば、昔からこんな短歌調の覚え歌がある。

せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草

うまく言いやすいように出来ている。昔は野原や川縁で摘んだので(すずなはカブ、すずしろは大根なので畑で収穫し葉を取っておくということもある)、歩きながら摘み忘れないように、言い回しができたのだと思う。

それが今は"春の七草セット"としてパックで売っているし、草を植えた植木鉢もある。さらにフリーズドライのレトルトセット、缶詰まである。ご飯と草で煮ればできるのにと思うのですが、そこは商売だし、ご飯さえ炊かない家もあるので仕方ない。

ずずっと粥をすすりながら、商品開発の根底にあるのは「習慣と便利と組み合わせ」なのだと思った。

その地に住む人びとの習慣を観察する。商売になりそうだとピンとくる。素材を生産し収穫して流通させる。やがてセット品や加工商品へとエスカレート。一巡したら素材や味の組み合わせを変える。飽和しリセットさせて習慣に立ち返る。それがニーズやシーズを追い求める商品開発のサイクルの正体だ。

ヒットした新製品を「新しい」と感じると、我々は新機軸だの創造性溢れるだの、革新的と賞賛するけれど、所詮は昔からあるものの「組み合わせが腑に落ちて斬新である」くらいなのだ。本当に新しいモノは滅多にない。

だから素直に「お客さまが喜ぶ七草を組み合わせよう、それはきっと消費者のごく身の回りにあるものの組み合わせだ」と自分の商売を考えたい。七草のように理が合い、消費されやすいものを考えつくのは、そんな心持ちの時だろう。