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【フリーランス考4】 ニュースコンサルティングって・・・何?
アラキングのビジネス書
【フリーランス考4】 ニュースコンサルティングって・・・何?
ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。業界をまたいで中小企業経営者のサポートを行う「究極のフリーランス」。2012年より、ビジネス書の執筆ならびに雑誌の連載をスタート。
当ブログ「アラキングのビジネス書」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/arakinc/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
前回まで3回に渡って"フリーランスの実態"をかいつまんで書いてきた。フリーランスになることは簡単、誰でも、いつでもなれる。難しいのは何らかのスキルを持って独立した後、業務をコンスタントに継続・受託するチカラである。仕事がなければ終わりというシビアな世界、それゆえに自分自身の営業力・プロモーション力・ビジネスセンスが問われる・・・。
誠ブログに執筆するようになってから「荒木News Consultingって何ですか?」というお問い合わせをチラホラ頂くようになった。フリーランスでビジネスコンサルティングをしている人はあまりおらず、しかも『ニュースコンサルティング』とは聞き慣れないコトバ、その実態が不明である。
そこで今回は私の営業を兼ねて、その辺のお話を・・・。
コンサルティングという業務にまつわる誤解
ちまたには数多のコンサルタントが存在しているが、そもそもコンサルタントとは偏見と誤解に満ちた職業である。企業の外部の人間でありながらいろいろと口を出し(アドバイス)、高額な報酬を得ている人種。そして何をしているのか分からない。一部においては評判がよろしくないのが事実である。
私もこうした意見を頻繁に耳にしており、特にコンサルを雇っている企業で働く一般社員から、聞く。彼らからすれば「現場も分かっていないのに、自分たちの意見を無視し、経営層とつながって社内改革や重要案件を決定していく」、つまりは自分たちの頭越しで動いていく"不穏な業務"が、コンサルタントが敵対視される一因である。
コンサルティングとは何なのか? 一言でいえば【外部の目を持って、内部の人材や資産を最適に活用し、企業の力を最大限に高める業務】である。そんなの外部に頼る必要はない! という意見もあるところだが、現実的には必要なケースがかなり多い。
コンサルタントがなぜ必要なのか? ひとつは【社内に任せられる人材がいない】ケースで、これが一番大きな理由である。
組織が大きくなっていく過程では、必ず"業務のムダや歪み"といった問題が顕在化してくる。このような状況に直面した場合、営業・技術・経理・販促といった社内の各専門職では、大局的な視点で業務なり組織を見直すことは大変難しい。そこで問題を是正するための専門職のニーズ=コンサルタントが生まれる。
本来、この部分は経営者あるいは経営企画室といったところが対応するのがスジである。しかし経営者は会社の舵取りに専念したい、企画室では手が回らない、あるいは意識が向かないということも多々ある。企画室に類する部署自体がない企業も多い。
もうひとつは内部では見つけられない諸問題を解決するには【スキルを持った外部の知恵が効果的】という事情がある。どっぷり業界につかれば"見えるモノが見えてこない"ことは起こりがち、木を見て森を見ず的な状況に陥ってしまう。こうした風潮・意識が社内を覆ってしまえば、組織は活性化されず本来の実力を発揮できない。
大局的な視野を持った人材=コンサルタント的な視点を持つ社員が組織内にいる場合でも、彼の置かれたポジションによっては意見がトップまで伝わらないなんてことも日常茶飯事。そこでやはりコンサルタントの出番となる。
本来、組織がきちんと回っていればコンサルタントという職業は不要である。組織に何かが足りないと認識している場合にのみ、出番が回ってくる。ちなみに通常、コンサルタントはあくまでも"ご意見番"に過ぎず、黒衣的な存在である。経営層に積極的にいろいろな提案はするものの、それが絶対的な評価とも判断ともならない。
News Consultingって何?
「ニュースコンサルティング」・・・、これは私の完全なる造語である。通常コンサルタントは業界を絞り、または得意分野において専門性を高める。流通コンサルタント、ITコンサルタント、営業コンサルタント・・・、企業の人材が足りない分野・強化したい分野の数だけ、コンサルタントは無数に存在することになる。
さて私はニュースコンサルタントという道を選んだ、というか勝手に作り出した。ニュースとは、新聞である。ビジネスマンが毎日読んでいるであろう、あの新聞のこと。 その名の通り<新聞をベースにしたアドバイス>を業務とする。誰もが読んでいる新聞、そんなものを使ってどうアドバイスするというのか?
『新聞の定点観測』という発想
"新聞は情報の宝の山"というのは周知の通り、ネットが発達した現在においても新聞はビジネスのネタとしている経営者は多い。しかし多忙な毎日のなか、読んでもせいぜい1紙あるいは2~3紙というのが現状である。クオリティペーパーである朝日と日経、加えて業界紙1紙というのが、一般的な購読パターンである。
新聞各紙は差別化をはかるためオリジナルな記事に注力したいのはやまやまだが、絶対的に必要な情報はやはり記事にしなければならない。例えばトヨタなどの大企業関連ニュースを載せないわけにはいかず、同様に政治情勢や大事件に関しては各紙とも扱う。誰もが知りたい情報を優先すると、日々の紙面には大きな差異が現れにくいのは当然。
そこで変えられることといえば、同じ情報に関する"扱い方"。
例えば先日のトヨタのリコール問題。重大なニュースゆえに各紙とも取り上げるが、その紙面の大きさ、焦点の当て方などによっては<同じ事実でもまったく異なった印象>を読者に与える。
トヨタに好意的な意見で論陣を張る新聞があれば、逆もあり、新聞社の"さじ加減"が読者のイメージ形成に大きな影響を及ぼすのだ。トヨタのおひざ元にある中日新聞が発行するブロック紙「東京新聞」が、意外や意外、トヨタに厳しい論調であったことなどは興味深い。
さて重大ニュースは程度の差こそあれ、各紙が取り上げる共通項となり新聞のベースを構成する。その一方で"各紙がバラバラに掲載する記事"がある。朝日には載っているが読売はまったく触れていないといった情報の類である。ここが各紙の特徴ともなり、ビジネスのアイディアが隠れているとこが多い。
さて、本題。新聞2~3紙で判断していたならどういうことになるだろうか?
新聞社には思想的なクセ、書き方のクセがあるので、ずっと同じ新聞を読み続けていればその新聞社のクセもが自分の価値判断に影響を与えてしまう可能性は否めない。知らないけど貴重な他紙の情報を読み落としてしまうこともある。
そこでニーズがある、あるいは必要と考えるのがニュース(新聞)を正確に読み解く職業=ニュースコンサルティングなのだ。
荒木News Consultingでは全国紙、経済紙、専門紙、地方紙など8紙ほどを読み込んでおり、これは15年間にも及ぶ。そこで得たのが誰も知らない各紙の特徴を掴んでいること。読み比べることで情報の信憑性、影響力の流布、精度などが判断しやすくなり、また貴重な情報を逃さないスキルも蓄積した。
同時に各紙を分析することで「有望なマーケットの早期発見」や「議題設定の効果」などを分析し、これから流行しそうなライフスタイルや、売れそうな商品あるいはその売り方、注目しておくべき消費行動などが予測可能となる。これをもとに経営者やマーケ関係者にアドバイスしている。メリットは?
正確に読み解くとはどういうこと?
まず新聞という媒体は【事実に基づく現実】を書いているということを知っておかねばならない。新聞に書いてあることすべてが本当であると思いがちだが、これはある意味間違った感覚である。正確に言うなら"新聞記者のフィルターを通して伝えられた情報"である。記者も人間であるから「事実に感情」が入るし「何らかの意図」が混入することもある。
「新聞で本当なのはラテ欄だけ」と言われるのは、こんな所以からだ。ラテ欄とはラジオ・テレビ欄、つまり番組表のことである。ラテ欄は正確な情報として間違いないけれども、記事は正確な情報に近いが完璧なわけではない、という意味である。
近年メディア・リテラシーというコトバを頻繁に耳にするようになった。子供の教育の一環として、メディアを読み解くための能力として注目を集めているが、実はオトナ、ビジネスマンに必須の能力とも言える。
簡単に各紙の特徴を述べてみると・・・
朝日・・・反体制的な雰囲気はあるが、国民の共感を得やすい書き方を特徴とする。情に訴求するような構成で情報に落とし込んでいくパターンも多い。生活面ではニッチな方面に特徴あり。
毎日・・・全国紙のなかではもっとも無味無臭なテースト。経済情報はリリースをそのまま載せているような感じで、あまり読むところがないが、連載記事は世間の注目を集めづらいテーマを積極的に取り上げ、硬派な面も。
読売・・・教育に関して情報が充実している。世間のトレンドに即応した連載が多い。パブ記事が分かりやすい部分も。
産経・・・右寄りで、朝毎読とは明らかに一線を画しており、一面トップがまったく違うなんてこともしばしば。人物に焦点をあてた記事が多く、読ませる内容も多い。カルチャーやファッションでは独特な視点を持っており参考になる記事がちらほら。
日経・・・経済情報の収集能力・分析に秀でており、ビジネスマン必読である。ベタ記事に意外な情報が隠されていることが多く、隅から隅まで読むべき。経済紙なのにサブカルにも強く、読み応えがある。
日経MJ・・・マーケティング関係者のみならずすべてのビジネスマンが読んでおいた方がよい面白い記事が多い。コラムが多いが、こちらはレベルがばらばら、参考になったりならなかったり。終面はトレンドの先読み的な意味を持っており、一見の価値あり。
東京・・・ブロック紙・地方紙という位置づけではあるが、日本の首都を発信源としている存在感は無視できない。経済情報は面白みに欠け充実度は劣るが、終面や連載記事が独特。たまにスクープあり。
新聞を詳しく読む方法
上記はおおまかな一例を挙げただけであり、各紙には多くのメリット・デメリットが隠されている。更に詳しく読み解くには下記のような手法もある・・・。
署名記事であれば○○新聞の○○編集委員の記事は視点がとても斬新であり、マーケティング関係者には必読とか、○○新聞で毎週カルチャー紹介を担当している○○氏は、トレンドの後追い記事が多くて参考にならないとか・・・。
各紙をひとつひとつ、仔細に眺めることで情報の受け取り方、ひいては事実性に対する意識は変わる。『ミクロの視点』である。同時に新聞社としてのスタンスやタイミングを"新聞業界として"眺めるのもひとつの方法としては有意義である。こちらは『マクロの視点』である。
メディアには【議題設定機能】というものがある。メディアが情報を流すことで世論を形成する作用を指す。社会的な生き物である現代人は、日々メディアの情報から多くのことを得ており、各メディアが民主党はもう終わりという論調になれば、知らぬ間に多くの人々が同意しやすくなるような状態を指す。
ここで各紙が同一の議題設定なら問題はない。みんなが同じような意見に収れんしやすい。ところが各紙は特徴を出すためたまに変化球を投げる。このとき、そのメディアのプレゼンスが重要となる。読者の少ない新聞や、価値が軽んじられている新聞の議題設定は、なかなかメジャー化しないということ。
反対に朝日・日経という2大クオリティペーパーが同じようなテーマの議題を設定した場合、影響力が大きくなるのは必然である。管理職や経営者など読者がエグゼクティブ層に多いと言われているからだ。
さて、この朝日と日経だが、不思議なことに「夕刊の議題設定」がときおりピッタリ一致する。このようなとき他紙はまったく取り上げていないが、影響力が大きくなることはもうお分かりでしょう。日経・朝日の組み合わせと、毎日・読売では意味合いが異なるのがミソである。
朝日と日経の息が合うのは、サブカルやライフスタイルにまつわる記事が多い。夕刊の特性としてややユルめな内容になるとはいえ、注目せずにはいられない。
ただし逆説的に言えば、やはり朝日・日経の議題ばかりに気を取られてしまうと、それも危険であるということだ。クオリティペーパーだけに、同じタイミング・同じテーマでの情報発信に関しては、何らかの意図を疑う必要がある。
ニュースコンサルティングを実践するには?
ビジネスマンが頼る新聞というメディア、本来なら各紙をきちんと読み比べ、議題設定を意識しながら、同時にビジネスにつながるようなユニークな記事を発見したいところである。しかし現実的には忙しくてそのような暇がない・・・。
スキルを持った"新聞職人"が業務に特化し、経営者を情報面でサポートするのがニュースコンサルティングという発想である。
日々処理しきれない情報を取り入れながら、これをどんどん忘れ去っていったのでは、意味がない。価値のある情報のみを蓄積・分析し、ビジネスに効果的なカタチに落とし込む作業が重要なのだ。これを私は【情報の知識化】と名付けている。情報の知識化のために、私は基本的に2つのことを行っている。
1)オリジナルニュースの提供
新聞各紙からクライアントが必要とする情報を厳選して抜粋し、冊子にして毎月2回提供する。この段階ですでに"過去の情報"ばかりだが、目的はあくまでも"情報の知識化"のためのツール、情報の整理と分析にある。
ここでポイントになるのが【新聞を再構築】する作業。新聞の記事は「政治」「経済」「暮らし」といったカテゴライズがされているが、これは"情報発信者都合の仕分け"である。私はこれを改め「消費者視点」「クライアント視点」によって記事を分類し直す。例えば「シニア記事」「就活記事」「20代女性記事」といった具合に。
カテゴライズを変えることで普段読んでいる記事に付加価値が生まれることになる。これをクライアントのニーズに応じて実践することにより、まったく新しいオーダーメードの新聞ができることになる。
もうひとつのポイントはあえて【不必要な情報】を入れること。新聞を読むとき、人は自分の業界や関心によって記事を選んでしまう傾向が強い。しかし他業界やまったく関係ないような事柄に、ビジネスチャンスが往々にして潜んでいる。このため経営者に読んでおいてもらいたいと私が考える情報、今は必要ないけど将来重要な情報などは、必ず入れる。
これにより経営者の感覚を刺激し、新たなビジネス発想を喚起させる。
2)マーケティングレポートの提供
オーダーメードのニュースと同時に提供するのが『アラキレポート』と呼ばれる新聞分析レポートである。議題設定の分析、注目記事の解説、消費行動の独自分析などを盛り込んで経営者に提供する。「オリジナルニュース」と「アラキレポート」の組み合わせ、使い道はクライアントによっていろいろである。
チェーン展開する小売り企業では、アラキレポートを全国の各店舗に届け、これをもとにMDを構築する。同時にオリジナルニュースを各店員に読ませることで、短時間でニッポンの現状を掴むことが可能となり、社員教育の一環として利用する。
とある中小企業では、経営者が新規ビジネスを発見するためのツールとして利用していた。そこで興味がある分野や閃きが生まれたら、私がさらにリサーチをかけ、具体的な企画書まで作成する。
このほか使い道はまだある。クライアントが営業をかけたいと考えた場合、○○新聞によれば○○社がこのような計画を発表しているから、重点的に狙ったらいかがですか? といったアドバイスができる。
新規ビジネスでこんなことを考えているのだが・・・という相談を受けたなら、○○新聞に先行事例が詳しく出ていたのでリサーチしましょうかとか、○○新聞が数年前から強化しているテーマで、この企画は○○氏という記者なので、ここにアポと取ってみたら? などなど。
コンサルティングの相談は無料なり
・・・簡単に言えば私が行っているのはこんなビジネスである。恐らくコンペティターはあまり存在しない。あまりにもニッチ過ぎるし、スキルを積むには独特の視点と経験が必要となる。コンサルタントというと派手なイメージがつきまとう職業だが、やっていることは非常に地味な作業の連続である。
これまで私は営業を一切してこなかった。「コンサル入りませんか~?」などと、ただでさえ怪しい職業、加えて信用のないフリーランスでは門前払いが関の山である。多くは付き合いのある経営者の人脈、運命の出会い、知人からの紹介のみで仕事を引き受けてきた。
ところが先日、当ブログを読んでコンサルティングの打診を頂いた。これから起業する予定であり、開業コンサルティングはできないのか? というオファーだった。実際お会いしてお話を伺い、私のできることをお話し、条件やビジネスセンスが合えば引き受けるというスタンスである。
何かと評判の悪いコンサルティング業界だが、具体的な業務を伴わない『コンサルティングのご相談』は無料でやっています。会社の現状を伺い、組織や事業に必要な考え方・戦略を簡単にお話する程度ですが・・・。
必要あらば「オリジナルニュース」「アラキレポート」をサービスのベースとしながら、新規ビジネスのプランニングなどマーケティング全般のコンサルティングも行います・・・という流れです。イメージと異なり、ギャランティーはそれほど高額ではありません。
ニュースコンサルティングに関心のある中小企業の経営者、アライアンスに関心のある企業など、お問い合わせはお気軽に下記アドレスまでどうぞ。
(荒木News Consulting 荒木亨二)
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