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セクハラ野次問題、どうしてこんなにモヤモヤするのか考えてみた

セクハラ野次問題、どうしてこんなにモヤモヤするのか考えてみた

吉岡 綾乃

Business Media 誠で編集長をしています。本ブログ&Twitterでは、Webメディアや紙メディア、ネットビジネス、携帯電話、非接触ICなどについての話題が中心になる予定。


6月18日の東京都議会で、晩婚化・少子化などの問題について塩村文夏都議(35)が質問に立った際、男性都議が「自分が早く産めばいい」「産めないのか」「早く結婚したほうがいいいんじゃないか」などと野次を受けた、という話。23日になって鈴木章浩都議(51)が「自分だった」と認めたというニュースが流れていますが(ただし「子どもを産めないのか」と言ったのは自分じゃない、とのこと)、先週耳にしたときからどうにもモヤモヤするなあと思って、Twitterでこんなことをつぶやきました。

これはリンクしている朝日新聞の記事を見てつぶやいたもの。野次を受けた塩村都議は「ミスヤングマガジン」など複数のミスコンで優勝・入賞していたという輝かしい経歴の持ち主で、昔は、人気番組『恋のから騒ぎ』に出ておりMVPも取ったという有名人。上記ツイートの通り、「ちょっと泣くと男はいくらでも金をくれた」などと豪語していた......という話をFacebookで見かけて「もやもや中」と書いたのでした。

これに対し、TwitterやFacebookなどで「『そんな服きてるから痴漢されるんだ』ってやつですね」「その理屈だと、風俗嬢はレイプされても自己責任というロジックと同じではないですか?」「言われた相手による区別」というコメントをいただき、「いや、そんなこと言ったつもりはないんだけど......とさらにもやもやは深まるばかり。さらに「『恋のから騒ぎ』はバラエティ番組ですよ? テレビのバラエティにはシナリオがあります。そこでの発言を信じるんですか」といったコメントも。

いや、彼女の過去とか、バラエティ番組でどんなキャラだったかは別に気にしていないんです(YouTubeの動画を見て「キョーレツな人だなあ」とは思いましたが)。どんなキャラの人だって、結婚したいのにできなかったり、子どもが欲しいのにできなかったら悲しい。それは関係ないことです。それなら何がこんなに引っかかるんだろう?と考えて思い至ったのは、記事の「塩村氏は涙ながらに質問を続けた。」というくだり。

●女だからこそ、仕事で泣いちゃダメでしょう

私は社会人になってもう17年(!)ですが、若いころから自分に戒めていたことがあります。それは「仕事で(人前で)泣かない」ということ。泣くなんてみっともないし、何より「仕事で泣くような女は一人前扱いしてもらえない」と思っていたから。

女子高育ちの上に、若いころから職場では良くも悪くも女子扱いをあまりされずに育ってきましたが、そんな私でも「男の人は女の涙に弱い」ということくらいは知ってます。仕事をしていれば悔しいことや悲しいこともあるけれど、相手の前で泣いたらダメ。どうしても涙が出るときはトイレで泣く......というのは徹底してきました。たとえ相手が女扱いしてない私であろうとも、それでも多分同僚の男性の前で泣き出したら相手はオロオロするでしょう。もしも泣いたら事態は動くかもしれないけど、それは男性が譲歩したり同情したりしてくれているだけで、問題は何も解決していない。だからこそ「女は仕事で泣いちゃダメ」なのです。

で、今回の塩村議員の件。私が一番もやもやしていたのはおそらく「なぜ彼女は毅然として野次に対応しなかったのか?」という点です。その野次の何が悪いのか、どこが失礼なのか、彼女は自分の言葉ではっきり指摘すべきだった。なぜなら、差別する側ははっきり指摘してもらわないと、何が問題なのか分からないからです。もちろん、質問時間は限られているのでそう長々と野次の相手はしていられないでしょうが、冷静に「その発言は女性に対する差別です、何が問題か分かりますか?」くらい指摘しても良かったのではないでしょうか。

しかし実際には「野次を飛ばされた彼女は涙ながらに質問を続けた」わけです。構図としては「オジサンが若い女性を泣かせた」ことになります。さらに若いころ"彼女は昔『恋のから騒ぎ』で「ちょっと泣くと男はいくらでも金をくれた」と語ってた"わけで、別に悲しくなくても演技で涙を流すことができると自分でも認めている。その上、彼女はミスコンで優勝するほどの美人です。自分の涙がどれくらい強力な武器になるか、よく分かっていたことでしょう。でも、美人ならなおさら、涙を武器に使っちゃいけない.。

●何が問題だったのか、野次を飛ばした本人が分かっていない

なぜ、美人は涙を武器にしてはいけないのか。

案の定、この件は「セクハラ野次問題」として大騒ぎになりました。最初「自分じゃない」と言っていた自民党の鈴木章浩都議は「野次は自分でした、ごめんなさい」と謝罪会見を開きましたが、会見内容を見る限りでは何が問題だったのかは全く分かっていないようす。そりゃそうです。彼が謝ったのは「大騒ぎになったことを申し訳ないと思ったから」であって、自分の発言したことがセクハラおよび性差別に当たる、不適切なことを言ってしまったと思って謝ったわけではないのですから。

そして、なぜ大騒ぎになったのかといえば理由はだいたい2つあって、1つは「女性差別に当たる発言が議会でなされたから」、そしてもう1つは「若い女性議員をセクハラ野次で泣かせる(という、男としてやってはいけない)ことをしてしまったから」です。多くの女性が前者を問題にしているのに対して、おそらく多くの(年配の)男性は後者を問題にしている。それは鈴木都議も同じです。自分の発言内容ではなく、「女性を泣かせた」結果「大騒ぎになった」ことを詫びるために会見をしたのです。

メディアも世論も目下鈴木氏を総攻撃中で、大多数は塩村氏の味方。結局事態は「鈴木都議のつるし上げ」になってしまいました。こんな大騒ぎになったのに、発言した鈴木氏本人はいまだに何が問題なのか分かっていない。この騒ぎはなんのための騒ぎなのでしょう......と思ってしまうのです。問題点が完全にすり替わってしまい、事態はなんも解決していない。「やっぱり女は仕事で泣いちゃダメだ、ましてや美人はもっとダメだ」と改めて思うのです。

ただ......そう思う半面「彼女が毅然と野次に対応していたら、多分ニュースにもならなかったろうな」とも思うとモヤモヤするのです。「美人が泣いた、だからこれだけ話題になったんだよな」それが分かっているだけにモヤモヤします。性差別の問題は男女が対等に話し合うべき問題なのに、男性が(泣いた)女性に譲歩した、のではなにも解決しない......そう思うと、すごくやるせない気持ちになります。

これは、6/20につぶやいたツイート。私が「新聞記者が頑張って野次の主を特定すべきでは?」と書いたのは、別に野次を飛ばした議員を総攻撃したかったためではありません。

今回、鈴木議員に票を入れた人は「うわー」と思ったのではないでしょうか。「次は入れないぞ」と多分思ったはず。トラブルや不祥事を起こす政治家はたくさんいます。でも、選挙になると忘れてしまう。こういう情報をネットにためていくことが大事だと考えています。選挙のとき、投票の判断基準とする情報として。。。