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残念なAndroidの作り方

残念なAndroidの作り方

吉岡 綾乃

Business Media 誠で編集長をしています。本ブログ&Twitterでは、Webメディアや紙メディア、ネットビジネス、携帯電話、非接触ICなどについての話題が中心になる予定。


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 先日、「誠 スマートフォンチャンネル」がスタートしました。さらにわんとぴ「Android」のキュレーターにもなってしまいまして(キュレーターは+D Mobile編集部が中心で、私は末席を汚しているに過ぎませんが)、だから......というわけではないのですが、Androidのことを考えている時間が、最近比較的長いです。


 実際、ここ最近のAndroid関連ニュースは非常に活発に動いており、追いかけるのはかなり大変。OSを提供しているのはGoogle一社だけとはいえ、ハードウェアメーカーは複数(しかも世界中に)、アプリを作って配布するのはほとんど自由、というAndroidプラットフォームは、プレイヤーが多いだけに非常にエキサイティングです。新製品ニュースも面白いし、OSアップデートも楽しみ、続々登場するアプリもいろいろあってわくわくします。特にハードウェアの充実っぷりには目移り三昧で、久しぶりに自分の中の「ガジェット好き」の血が騒ぐのを感じてみたり。iPhoneを使っていたころも楽しかったですが、なにしろプレイヤーはアップルだけ、アプリもアップルの審査を通らないと出てこない、という事情があって、ここまでは興奮しなかったんですよね。

 そんな最近の私ですが、実は、仲が良い友人に「次、Androidにしたいんだけどどう思う?」と聞かれると、素直に背中を押してあげられないのです。特に最近多いのが「INFOBAR(INFOBAR A01)に機種変しようと思って」というauユーザーの相談。なんと答えようか毎度迷うのですが、迷った末に「うーん......悪いこといわないから、もう1シーズン見送っては?」と答えては「どうして?」と不思議そうな顔をされています。買う気まんまんの人の場合は、あからさまにムッとすることも......。

 上にも書きましたが、Android端末を作っているメーカーはさまざま。OSが同じでも、実際の使い勝手では非常に差があるのもまたAndroidの大きな特徴。どれを選んでも、ユーザーが快適に使える最低ラインを満たしているのであればいいのですが、現実は違います。短期間で急速に立ち上がったAndroid市場だけに、メーカー各社もまだ作り込みに慣れておらず、長期間使った普通の(マニアではない)ユーザーの声のフィードバックも届いていない印象があります。それだけに商品による差があり、最初に使った商品によっては「Androidって使いにくいね」ということになりかねない。それだけに「Android、いいよ!機種変しなよ!」と無条件にまだ勧められない......そう思っているのです。


●Androidケータイの「素性の良さ」とは?

 現状選べる中で、Androidを快適に使うにはどうしたらいいのでしょうか。大きく分ければ方針は2つ。1つは「使い始めの時点で、カスタマイズを頑張ること」そしてもう1つは「素性のいい端末を買うこと」です。まず、カスタマイズを頑張る、というのは基本的な環境を自分で作ること。以前この記事に書いたような定番アプリ・ウィジェットをインストールすることはもちろん、機種によっては、プリインストールされているホームアプリを外して軽量化することで格段に快適に使えるようになることもあります。


 問題は「素性のいい端末を買う」ほう。素性のいい端末って何だ、と思われる方も多いと思います。カメラの画質がいいとか防水がいいとか幅は狭い方が片手で扱いやすいとかそういう個人的な好みは抜きにして、私が思うAndroid端末の素性の良さとは(1)動作が軽快なこと(2)ユーザーが使えるメモリ領域が潤沢で、アプリをたくさんインストールできること(3)バッテリーが持つこと この3つです。

 (1)動作の軽快さは端末のハードウェアスペックに依存しますが、いいチップを載せていても動作が遅くて使っているとイライラする機種もあります。あるいはタッチパネルの性質によって、スクロールや拡大・縮小がなめらかに行えないものもあります。ある程度は慣れ、またスペックがいい場合は上に書いたようにホームアプリを変更するなどでぐっと軽快になります。(2)ユーザーが使えるメモリ領域は、「Androidを使う楽しさ」に直結する部分です。人にオススメを聞いたり、調べたりして、自分が使いやすくなるまでいろんなアプリを試す人は多いでしょう。しかしそんなとき、プリインストールアプリがメモリを圧迫していて好きなアプリを入れられなかったり、そもそもの容量が少なかったりするとあっという間に「これ以上入れられないなら、もうこれでいいや......」ということになります。microSDに移動するとか、こまめにアンインストールするとか、ユーザーの努力である程度回避できる部分もあるのですが、これだって最初からたくさん容量があればしなくていい苦労です。

 (1)(2)以上にユーザーにはどうにもならないのが(3)バッテリーのもち の部分。普通のケータイに比べ、全画面が液晶の(ものが多い)Android携帯はバッテリー消費が速いです。しかもAndroidには、一度立ち上げたアプリを確実に終了させないと、バックグラウンドで数分おきにアプリごとに通信を行う、という特徴があります。基本的にアプリを1つずつ立ち上げて、ほかのアプリを立ち上げるときには前に使っていたアプリを終了させなくてはならないiPhoneに比べると「知らない間にバッテリーが減っていた」がありがちなのがAndroid。省電力のノウハウもまだメーカーに蓄積されていませんから、一般ケータイに比べると使える時間は短いです。しょっちゅう通信しながら使うと、1日......下手すると半日もたないのが現実です。


●デザイン重視のスマートフォンこそ、基本的な使い勝手に気を配ってほしい

 最近身の回りで注目度No.1のINFOBAR A01、残念ながら私は実機を触ったことがないのですが、実際に操作している動画を見ると、動きはかなりサクサクそう。ユーザーが使えるメモリ(アプリ)領域は約1.1GBということなので、多分こちらも当分大丈夫(最新モデルの中ではハイエンドではないですが)。気になるのはバッテリーのもちです。auのスマートフォンで、INFOBAR A01と同じくシャープが作っている「IS03」という端末があるのですが、これが使い勝手などの評判がよい半面「バッテリーのもちが悪すぎる」とよく言われる端末。INFOBAR A1のバッテリ容量はIS03と同じ1020mAhですから、多少改善しているとしても、おそらくINFOBARも「バッテリーのもちが悪すぎる」端末だろうと思われます。

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 私の周りだけでも10人くらい「INFOBARにしようかな」と言っている人がいるくらいですから、INFOBARに機種変してAndroid初体験となるauユーザーはたくさんいるだろうと思います。「INFOBAR、いい端末だと思うけど、多分ものすごくバッテリーのもちは悪いよ?」と言うと、多くの人が「今のケータイも電池ももち悪いし、多分慣れると思うから大丈夫」「外付けバッテリー買うからいいよ」と答えるのです。ここまでデザインに惚れ込んで買いたくなってもらえる携帯電話というのもすごいですが、ユーザーがどんなに頑張っても、バッテリーのもちは悪くなることはあれ、良くなることはありません。バッテリーが切れた携帯電話がどれだけ"使えない"ものかは、皆さん一度は経験があるでしょう。そもそも、デザインがいいからと選んだ携帯に、不格好な外付けバッテリーを付けて使うのは本末転倒じゃないでしょうか?

 幸いなことに、私が初めて触ったAndroid端末は非常に「素性のいい」端末で、「ああ、Androidってこんなに楽しいんだ」と私は思うことができました。しかし最初に出会った商品に悪い印象を抱いてしまうと、なかなかその印象は変えられないものです。不幸にも、最初出会ったのがイマイチな端末だったとしたら、その人は「ああ、Androidって使いにくいんだ」と思ってしまうことでしょう。

 Android端末の「素性」の部分は、使ってみないと実感として分からないもの。私自身、複数の機種を使ってみて「端末によって、こんなに違うのか!」と驚きました。それだけに、ユーザーが何も言わなくてもメーカー側でなんとかして欲しい部分なのです。どんなにデザインがステキでも、そういう部分がイマイチな"残念な端末"では満足度は下がってしまいます。残念な体験がAndroidとの出会いになってほしくない。期待しているだけに、INFOBARでAndroidデビューという人を見る度、素直に背中を押せない私です......。


【2011/06/08 追記】「IS03がバッテリーもたないからINFOBARももたない、というのは乱暴な議論ではないか」という声を何人かからいただきました。ケータイWatchに参考になる記事が上がっていたのでリンクしておきます→「夏モデルのスマートフォン、バッテリー容量をチェック
これを見ると、グローバルモデルは1500mAh前後が普通であること、INFOBAR A1がauで一番少ないこと(IS 11SHも大差ないけど)が分かると思います。ソフトバンクの007SHもすごいですね。820mAhって...


※このブログは、2011年6月7日に配信したメールマガジン「ビジネス通信 誠」を転載したものです。メルマガは週2回配信、誠&Biz.ID編集長がそれぞれ本誌に載らないコラムを執筆しています。新規登録はこちらから